番犬の働きは
航空隊が帰投した頃、横須賀から四隻の駆逐艦が出撃。
紅梅、白梅、赤松、黒松の四隻からなる第六十八駆逐隊は野島崎を過ぎた辺りで赤松、黒松が南下。
分離後の艦隊は並走しつつそれぞれの目標へ向かった。
現場海域に到着する頃には夜になっていたが、充電の為浮上航行している潜水艦は水中の時よりも五月蝿かった為松型駆逐艦の二重奏に掻き消される事は無く、改良したばかりの電探にも捕捉されていた。
後はウェーク島沖やリンガエン湾の再現でしかない。
九mに満たない幅は兎も角、全長九〇m弱の船体より電探射撃時の遠近散布界の方が狭い。
砲炎に気づいてから急速潜航を終えるまで一分。
気付かれるきっかけになった初弾を含め修正を終えた三発目は過たず司令塔を穿った。
電探が再び敵艦を捉えてからしばらくして敵艦を視認。
相手は一時砲に取り付いたが、二隻だと知るや投降。
拿捕に成功した。
帰港する頃には既に日が昇り、港には潜水艦を一目見ようと人集りが出来ていた。
「敵さんはこっちより優秀な電探を持ってないようだね」
係留作業中の米潜を眺めながら平田中将は呟く。
「そのようです。
これから具体的な調査に入ります」
台湾沖のは爆雷で壊れていたので、
と伊藤庸二中佐が応じた。
彼はマストのレーダーアンテナに視線を注いでいたが、走ってきたのかやや息が荒い。
追い付いた部下達と共に内火艇に乗り込む伊藤を見送り、平田は踵を返した。