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通商護衛戦  作者: 雪風
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海上保安庁設立

 一九三四年四月、拓務省監督の下海上保安庁が設立された。


 前年の三陸大津波で拓務省の下部組織、南洋庁所管の島々も被害を受け、救援は本土が優先されていた事や軍事利用が禁じられていた為に高速で移動出来る適当な船がなく、島外からの迅速な救援活動に支障を来していたのである。


 本部は大湊に設置され、凶作と震災で疲弊した東北に所在自治体限定とはいえ軍縮以前の人々の賑わいが戻って来た。


 そんな海保の構成員は前年十月から行われた大角人事で左遷された人々が多数を占めていた。


 海軍にとっては救難活動や漁業監視によって戦闘訓練が妨げられる確率が減り、南洋諸島のサトウキビやオホーツク海沿岸漁業等遠隔地での収益を原資として小艦艇を海保に建造させれば、その分の予算を他に転用出来たのである。


 海上保安庁長官には佐藤皐蔵中将が就任。


 彼は前大戦時に地中海に派遣された第二特務艦隊司令長官を勤めていた。


 同氏の就任に英国とベルギーでは日本の対中政策が軟化するのではないかとの観測が流れたがそうはならず、米国は準軍事組織だと非難したが自身も財務省傘下の沿岸警備隊を保有している為ポーズに過ぎなかった。


「「海上保安庁長官就任おめでとうございます」」


 真新しい長官室内部に男達の祝福の言葉が響く。


「うむ、君達もよろしく頼む」


 破顔しつつ佐藤は部下達に視線を走らせ、最後尾で止めた。


 視線の先に居たのは小川浩、亮平兄弟である。


 兄弟は海保の職員という訳ではなく、東北帝国大学の研究員で、実家から浩の引っ越し先に移動中に車毎タイムスリップした彼等を佐藤が保護したのが一年前の事。


 兄弟の軍事関係の古書を筆頭とする所持品や知識から、佐藤は大戦勃発に備え通商護衛の為海保設立に動いたのである。


 だが設立寸前に起きた友鶴事件で海軍の新造予算は下りず、官民問わず全国の造船所で艦艇の改修が優先された為海保も予算は下りたものの新造が遅れた。


 影響はあったが海保では同事件で左遷された藤本喜久雄を技術部門の長として迎えていた。


「藤本も大変だったろう。


 向こう一、二年はフネを造れんし着任早々済まんが改修が終わるまでイタリアに行ってくれ。


 身体に気をつけてじっくり造艦技術を学んで来い」


 佐藤は半ば放心状態の藤本にそう命じた。


 この頃イタリアではナヴィガトーリ級駆逐艦がシフト配置を採用し、復原性改修工事を実施していたのである。

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