第1章 5話 黒い獣
砂丘から出てきたミグルは、アルたちを見つけるなり大声で叫んできた。
「おぉ、お前ら!無事だったか!いや〜心配したぜ。よくシマミミズ相手に無事だったな。」
片手でショットバイク、逆の手でサーベルサンドの死骸を引きながら合流してきたミグルにアンナが声を上げる。
「ちょっと!あんたが勝手にどんどん先進むからこんなことになったのよ!それなのに1人で飛ばされて肝心な時にいないなんて!何が戦闘は任せてよ!」
「いや〜すまんすまん。俺もさっさと片付けてこっちに合流するつもりだったんだが、一匹厄介なのがいてな。それに手こずっちまった。」
そう言いながら、引きずっていたサーベルサンドを前に出す。
「こいつは・・・」
「あの岩の上にいたやろーだな。他のと違って力もスピードも段違いの上に、高い知能まであるようだった。で、顔のとこ、よく見てみ。」
そう言われてアルとアンナが覗き込む。
「うわ、なにこれ。」
そのサーベルサンドの顔には、目の下から耳元にかけて鱗のようなものが生えていた。
「獣の中にたまに変異種ってのがいるが、それにしちゃ不自然だ。変異ってよりも、そうだな、別な生き物の一部が埋め込まれたように見える。」
ミグルの言う通り、目の前の獣はアルにもかなり異様にうつっていた。
あきらかに自然に生まれるようなものじゃない。
アルは加えて気になっていたもう一つのことを尋ねた。
「岩の上で見たときは、体が黒くもやがかって見えたんだよね。」
「あぁ、それならこいつ、生きてた時は黒い瘴気みたいなもんが体から溢れてたんだが、死んだら消えちまったんだ。それも気になるところだからな。こいつはブリガーデンまで持ってって調べてもらおうと思ってる。」
聞けば西にある魔術都市ブリガーデンには、獣の調査・研究を専門とする機関があるようで、ブランヘルブのギルドで討伐報告をした足で、ミグルはそのままブリガーデンに向かうつもりらしい。
「へぇ、意外とちゃんとしたところもあるのね。」
「俺はもうほとんど騎士みたいなもんだからな。こういう変な事象は調査報告する義務があるんだよ。そういやお前ら、シマミミズの証痕はとったのか?」
「まだよ、ちょうど今討伐を終えたばかりだもの。」
「証痕?」
初めて聞く言葉にアルはその意味を問いかける。
「ギルドの依頼では、討伐の証拠にその獣の一部を剥ぎ取って持って帰るのよ。ただなんでもいいわけじゃなくて、その獣の核となる部分を証跡って呼んでるわ。サーベルサンドだと、あの特徴的な牙がそうね。」
みればミグルはガラガラと大量の牙を腰に下げていた。
「あなた証痕を取る余裕あるならもっと早く来れたじゃなの?」
「これは攻撃の瞬間に取ったんだよ、別に倒し終わって一つ一つ剥ぎ取ったわけじゃねぇ。急いで来たってのにも嘘はねぇさ。」
「そんなことできるわけないじゃない!」
「嘘じゃねえってのに。まぁ結局俺が戦うところも見せてねぇし、仕方ねぇか。それはまたいずれな。さ、さっさとシマミミズ証痕をとっちまえよ。あれはいい値になるぞ。」
「え、そうなの!とってくる!」
そう言うとアンナはシマミミズの死骸に駆け寄っていった。
「あれ、お前がやったの?」
「いや、アンナだよ。俺にはあそこまでの魔法は使えないからね。」
「ふーん・・・ま、いいや。お前も騎士になるなら、いずれその力を測るときはくるだろうからな。」
「それはお互い様だろ?」
アルはそう言って笑いかけると、少ししてミグルも笑った。
「はっ、違いねぇ。お前も証痕取ってこいよ。あっちのサーベルサンドはお前がやったんだろ?証痕は自分で倒した獣から取るのがマナーだぜ。」
「そうなのか。わかった、そうするよ。」
そう言ってアルも倒したサーベルサンドの証痕を取りに向かうのだった。
ブランヘルブのギルドに戻ると、さっそく討伐報告を行った。その時ミグルはあの黒いサーベルサンドにも報告しており、死骸についてはミグルがブリガーデンに持って行くことでギルドとも合意したようだった。
アンナはシマミミズの討伐に対する報酬が想像以上だったようで、受け付けで一人大きな声を上げたあと、バツの悪そうな顔をしていた。
「本当にすぐ行くのね。」
「あぁ、一応魔法で腐敗を遅らせてはいるが、早いにこしたことはねぇ。ブリガーデンまでは5日はかかるしな。それにこいつを持ったままふらふらするのも面倒だ。」
ギルドの外でショットバイクにサーベルサンドをのせながらミグルが答える。
「短い間だったが楽しかったぜ。本当はもう少し一緒に依頼をこなしたかったんだが。ま、お前らならまたすぐ会えるだろうよ。騎士になれるだけの実力はあるようだしな。」
「なんで私たちが戦ってるとこ見てないのにそんなのわかるのよ。」
「わかるさ。最初に見た時からだいたいの実力はわかってた。」
ミグルはそう言うと、アルに目で問いかけるような表情を見せる。
「あの時、あそこじゃお前らが1番実力があった。だから俺も一緒に行こうと思ったんだけどな。」
「そ、そうなの?まぁ、確かにそう言われれば、そうかもね。うん。」
まんざらでもない表情を見せながら、アンナが答える。
「アル。今度会ったら一度手合わせしてくれよ。」
準備を終え、ショットバイクに乗り込んだミグルが問いかける。
「あぁ、構わないよ。」
「お互い手加減はなしだぜ?」
そう言いながらミグルが拳を突き出す。
「それは君の実力しだいかな。」
アルも拳を出し、ポン、と合わせる。
「言うね。その時が楽しみだ。よし、じゃあそろそろ行くわ。」
魔力が込められたショットバイクが宙に浮く。
「道中気をつけてね。」
「おう、お前らも試験で下手こくなよ。」
「忠告どうも、気をつけるよ。」
「ふっ。じゃあな!」
そう言うとミグルはブリガーデンに向けて走り去っていった。
「なんだか嵐みたいな人だったわね。」
「嵐か、確かにぴったりだ。いなくなったとたん急に静かだもんね。」
「ほんとよ。まぁ悪い奴じゃなさそうだし、大目に見てあげることにするわ。さてと、じゃあこの後はどうしようか?」
「そうだね・・・あ、アンナの杖を見に行くのはどうかな?シマミミズの討伐報酬ももらえたし、せっかくならそれで上級の杖を買ってみてもいいんじゃないかな?」
「そうね・・・まだうまく魔力をコントロールできる自信ないけど、そんなこと言ってたらいつまでたっても使えないしね。」
「その意気だよ。それに不安なら最初は俺が杖に強化の魔法をかけてあげるからさ。」
「ありがとう、じゃあ試してみるわ。」
「よし、じゃあさっそく行こうか。そういえば、アンナは火属性の魔法が一番得意なのかな?」
「えぇ、そうよ。あなたは?」
「俺は闇以外は一通り使えるけど、特に得意なのは雷属性だね。」
魔法には、基本属性として、光、闇、火、水、雷5つがある。人によって得意な属性は異なり、またそれら5つの属性をもとにした、派生属性と呼ばれる魔法も存在する。たとえば、火と雷の属性を組み合わせることで、土属性の魔法が使えたりするのだ。ちなみに、強化や回復、探知といった類のものは、光属性から派生した魔法である。
「4属性を一通りって、あなた剣士でしょ?そんなに必要ないじゃない。」
「そんなことないさ。いろんな属性の魔法が使えれば、それだけ戦い方の幅が増えるからね。それに、基本属性の魔法くらい使いこなせないと、ホルダーにはなれないだろ?」
「基本属性の魔法くらいって・・・私なんてまだ火と雷だけなのに・・・」
「雷の魔法なら、魔術師の君よりもうまく使える自信があるよ。」
「うるさいっ!」
ふん、と鼻息を吐くと、アンナは先に歩いて行ってしまった。
ギルドの周辺には武器や防具を扱う店が多く、杖を扱う商店もすぐに見つかった。
「いらっしゃいませ。本日はどういった品をお探しでしょう?」
店に入ると店主と思しき男が声をかけてきた。
「上級者用の杖を探してるんですが、耐久性が高くて魔力のコントロールがしやすい杖ってありますか?」
アンナがそう答えると、男は少し考えるそぶりを見せる。
「そうですね・・・基本的に耐久性の高いものは総じてコントロール性が悪くなってしまいます。聖武器であればそのような杖もあるでしょうが・・・あいにく当店ではあつかっておりませんで。」
「やっぱりそうですよね・・・」
「聖武器ってなんです?」
初めて聞く言葉にアルは横から質問を挟んだ。
「あぁ、これは失礼いたしました。聖武器とは、クレアトールと呼ばれる職人が作った武器のことでございます。彼らの高い技術から生み出される武器は一般の武器の性能を大きく上回り、中にはあのドラゴンにさえ傷をあたえることができるものもあるといいます。」
「へぇ、ドラゴンに。」
もしそれが本当なのであれば、ぜひとも手に入れたいとアルは思った。
「聖武器が売られている店もあるんですか?」
「まれに市場に出回ることはありますが、常に聖武器を扱っている店はないですね。私の店でも扱ったことはありません。通常はクレアトールに直接依頼し、作ってもらうのが一般的ですから。」
「そうですか。じゃあそのクレアトールって人のところにいってみようか。」
そういってアンナを見ると、険しい表情を浮かべた。
「ブランヘルブにクレアトールはいないわ。近くだとバインドラにいるって聞いたことがあるけど確か剣が専門だったはずよ・・・」
「はい、おっしゃる通り、機械都市バインドラには剣を専門とするクレアトールのボルトナ氏がいらっしゃいます。杖を専門とするクレアトールですと、私が知る限り幻影都市マジュリンのユリナス氏だけですね。」
「幻影都市マジュリンか・・・ちょっと遠いわね。それに、そもそもクレアトールに武器を依頼できるほどのお金もないわ。まだ騎士でもない私に武器を作ってくれるかもわからないし。まずは上級者用の武器で試してみるわ。すみません、耐久性の高い杖をいくつか見せてもらってもいいですか?」
「もちろんでございます。ご予算と得意属性をお伺いできますか?」
「予算は金貨1枚で収まるもので考えています。得意属性は火です。」
「かしこまりました。ではいくつか選んでまいります。」
そういうと男は店の中に並べられた杖をいくつかとりにいった。
「聖武器ってどれくらいするのかな?」
「私も詳しくは知らないけど、安いものでも家一つ余裕で買える値段だって聞いたことがあるわ。」
「ほ~、じゃあシマミミズ数十匹は狩らないといけないね。」
「そうね・・・気が遠くなるわ・・・」
「おまたせしました。」
店主は数分で戻ってきた。手元の木でできたトレーの上には、3本の杖が置かれている。大型の杖が2本と、小型の杖が1本だ。
「こちらにご要望の杖を3本ご用意しました。まずこちらの杖ですがA+ランクの魔石を使用しており、この3本の中で最も耐久性が高いものとなっております。」
大型の杖の1本を持ち、店主は説明を始める。
「ただし、属性による強化はありません。銀貨90枚の品です。」
そういうと今度はもう一本の大型の杖を手に取り説明を続ける。
「続いてこちらの杖ですが、Aランクの魔石を使用した杖で先ほどのものよりも耐久性は劣りますが、火属性の強化性能を備えております。使用者により異なりますが、火属性の魔力効果が約1.2~1.5倍になります。銀貨95枚の品です。」
店主は最後の1本に手を伸ばす。白い柄の先にはエメラルドの魔石がついており、その周りを魔石を守るように銀の装飾が施されている。
「そして最後の1本。こちらは金貨1枚と銀貨40枚の品で、少しご予算を越えてしまう品ですが、ぜひともお勧めしたくお持ちしました。小型の杖なため、他の2本よりも扱いやすいですが、A+ランクの魔石を使用しており耐久性も申し分ありません。また、火属性の強化性能もついており、ご予算が許すのであればご検討いただきたい品でございます。」
説明が終わると、男はアンナを見つめ、決断を待った。対するアンナは明らかに迷っている。しばらく沈黙が続いた。
「アルは、どれがいいと思う?」
決めきれないのか、アンナがあるに問いかける。
「3本目だね。アンナは杖がないと魔法が使えないから、すぐ構えやすい小型の杖がいいと思う。それに、耐久性が大きく変わらないなら、なるべく扱いやすい杖にすべきだよ。」
「そう・・・よね・・・」
どうやらアンナも3本目の杖にすべきと思っているようだ。とすると・・・
「アンナ、今いくら持ってるの?」
「金貨1枚と銅貨20枚・・・」
やっぱり。
「じゃあ3本目の杖にしよう。俺も少し手持ちはあるから、足りない分は貸してあげるよ。」
「ほんと?」
急にアンナの表情が明るくなる。
「でも、アルもブランヘルブに来たばかりでお金に余裕があるわけじゃないでしょ?」
「いいからいいから。お金はまたギルドの依頼を受ければいいし、それはアンナも一緒に行ってくれるだろ?」
「もちろんよ、じゃあ・・・ありがたくお借りするわね。」
そういうとアンナは代金を払い、杖を受け取りながら、満足そうにしていた。
「じゃあさっそく杖のお試しもかねて依頼を受けに行きましょ!」
そう意気込むアンナに続いて店を出ようとしたとき。
「おや、その棍・・・どちらで入手されたのですか?」
店主がアルに声をかけた。
「これは、知人から借りているものです。どこで手に入れたかはわからないですが。」
「そうですか・・・すみません、少し見せていただいても?」
「?ええ、どうぞ。」
アルが棍を手渡すと、店主は端から端までじっくりと棍を見ていった。そして。
「お客様、この棍はおそらく・・・聖武器だと思います。」
「えっ!?」
アンナの驚きの声とともに、アルも少し目を見開く。
「私も杖が専門なので100%断言はできませんが・・・特殊な素材にこの強度、そして高い魔導性・・・聖武器である可能性はかなり高いと思います。」
「そうですか。確かに扱いやすいし、硬いのによくしなるし、魔法もよく通る。上質なものだとは思ってました。」
と同時に、アルはその力を100%引き出せていないのだとも思った。ドラゴンに傷を与えられる可能性を秘めた聖武器。その力をうまく引き出し使いこなせていれば、シマミミズの体にはじかれることもなかっただろう。
「聖武器を使っていたなんて、それは強いわけね。」
後ろからアンナが声を上げる。
「まるで武器がすべてみたいな言い方だね。なら、君も使ってみるかい?」
「わ、私は魔術師だもの。それに、傷つけちゃったら弁償もできないし、遠慮しておくわ!」
「俺がどれだけ思いっきり振っても傷一つつかないから、大丈夫だよ。」
「いいってば!早くこの杖を試しに行くわよ!」
そう言うとアンナは勢いよく店を出ていった。
そんなやりとりを見ながら、店主が棍をアルに差し出す。
「ずいぶん仲がよいのですね。こちらお返しします。とても貴重なものを拝見させていただきありがとうございました。」
「いえ、むしろ教えていただいてありがとうございました。」
そうしてアルはその店を出てアンナを追いかけた。
ギルドに戻ると、ちょうど依頼の更新のタイミングで新たな依頼書が張り出されていた。
人混みをかき分けて掲示板の前まで来ると、良さそうな依頼がいくつか目につく。
「アンナ、次はこれにしよう。」
その中からアルが選んだのは、カリカムの討伐依頼だった。カリカムはコウモリを大きくしたような獣で、肉食だが危険度は低く、杖を試すのにはちょうどいい相手だ。
「カリカムか・・・確か空を飛ぶ中型の獣よね。直接見たことないんだけど、大丈夫かな?」
「そんなに危険な獣じゃないからね。動きも早くないし、魔法の試し撃ちには向いてるんじゃないかな。まぁシマミミズを倒せる魔法があれば、だいたいの獣は問題ないだろうけどね。」
そう言うと、特にアンナも異論はないようで次はカリカムの討伐依頼に決定した。
討伐依頼場所はブランヘルブの南東、砂漠地帯と森林地帯の間にある渓谷だった。距離はそこまで離れておらず、1時間もかからずに渓谷にたどり着いた。
渓谷に入ってすぐに、岩陰に隠れるカリカムが見えた。
「さっそくいたわね。」
「まずは中級魔法で試してみようか。」
そういってアルはアンナの杖に強化の魔法をかける。
「わかったわ。」
アンナはそう言うと、強化魔法で輝く杖を構え、魔法を放った。
「ファイアーボール!」
高速で放たれた火の玉は、隠れたカリカムに直撃し、一瞬で灰へと化した。
しっかりと火属性の強化もされているようだ。
「よし!」
アンナの杖は変わらず輝きを放っている。
「強化の魔法が効いている限りは、杖への負荷はほぼかからないはずだよ。アンナの魔力でも、中級魔法なら10発くらいはもつんじゃないかな。」
「わかったわ。じゃあどんどん行くわね。ファイアーボール!」
そう言って別の岩陰に隠れたカリカムに2発目を放った瞬間、杖の輝きが消えた。
「あれ?魔法、切れちゃったみたい・・・」
「おかしいな。さすがに中級2発で効果が切れるほどの魔法じゃないはずなんだけど・・・」
アルは少し考え、ふとグレイに言われたことを思い出しアンナに尋ねた。
「アンナ、魔法を使う時、魔力はどこに集中させてる?」
「え?えっと、杖の魔石の部分よ。」
なるほど。どうりで杖への負荷が大きくなるわけだ。
アルはもう一度杖に強化魔法をかける。
「じゃあ次は魔石じゃなくて、魔石の先の空間に魔力集中させるイメージでやってみて。そうすれば、杖への負荷は減るはずだよ。たぶん魔力も早く溜まると思う。」
「え、そうなの?わかったわ、やってみる。」
そう言うとアンナは再び杖を構え、隠れたカリカムに向かって魔法を放った。
結果的に、その後杖の強化魔法は切れずに、隠れていた10数匹のカリカムをアンナはすべて灰に変えた。
「すごいわ、魔力を込める場所を変えるだけで、魔法効率がこんなに違うなんて。」
明らかな違いをアンナも実感したようだ。
「魔石に魔力を込めると、そこからさらに魔石自体が外に魔力を出力しないといけないから、効率が悪いんだって。」
「そうなんだ・・・だから魔石への負担も大きくなるのか。全然知らなかったわ。」
「学園ではそういうことは習わないの?」
「習わないわ。逆にそれを知ってる人の方が少ないと思う。まぁ、騎士の中でも魔法使いは少数だから仕方ないのかもしれないけど。」
「マリリカは知ってると思うけどね。」
「そうなのかしら。あなたはそれを誰から習ったの?」
「グレイだよ。俺に闘い方と生き方を教えてくれた人。」
「放任主義な父親に変わって育ててくれた人ね!その人は今何してるの?」
「さぁね。少し調べることがあるって、モルドレイクで別れたきりだから。」
「そうなんだ。そういえば、それってあんまり聞いちゃいけないことじゃなかったっけ?いいの?私に話して。」
「あぁ、アンナがマリリカの孫だってわかったし、大丈夫だよ、たぶん。」
「ちょっと、じゃあこの前聞いた時は私が孫だって信じてなかったのね?」
「あはは、グレイから、すぐ人を信じるなって言われててね。」
「あっそ。まぁいいわ。討伐も済んだし、証痕をとってギルドに戻りましょ。」
そうして入団試験までの数日、アルはアンナと一緒にギルドの依頼を受けて過ごした。討伐依頼を中心に依頼を受けたが、アンナの魔法が安定したこともあり、特に危なげなく依頼をこなすことができた。
そういえば・・・あのサーベルサンドはなんだったのだろうか。あれ以降、アルは黒い瘴気をまとった獣には注意するようにしていたが、そのような個体をみたのは最初のサーベルサンドだけだった。




