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番外編1 シルバー侯爵家のお茶会は大混乱2

番外編です。

午後にも投稿します。

「これは持病ですか?」

「そんな訳ないでしょう!」


 なんとか脱がさないように止めるマニエラと、意地でも脱ぎたいサリエラの攻防の最中、エリザベスが一応聞いてみた。


「早く、薬師を呼んで!……あ」


 マニエラがサリエラを押さえつけながら、身体をビクビクと震わせた。どうやらこちらにも症状がでてきたようだ。


「ジ……ストーン侯爵令息、この症状何かわかりますか?」


 媚薬だとはわかっているが、ここでそれを指摘してエリザベスが盛ったことにされたらたまったものじゃない。


「……媚薬だと思う」

「どうすれば媚薬の効果はなくなりますか?」

「男の精を取り込むか……ひたすら発散させるか。でもこれは……」

「これは?」


 ジルベルトの目が泳ぐ。

 きっと、どんな媚薬の種類かも知っているんだろう。エリザベスはジルベルトが出てきた小部屋をチラリと見る。開いた扉から中が見えるが、ベッドがあり休憩室になっているようだ。ここで媚薬を口にしたエリザベスを抱くつもりだったのか。


 心底気持ち悪い。

 どんな思考回路をしていれば、そんなことをしようと思えるのか。また、ジルベルトを唆したシルバー侯爵家の双子にも、同じように嫌悪感しかわかない。

 でも……、だからって、ジルベルトに「あなたが抱いてあげればいいじゃない」なんてことも言えない。


「ジルベルト、彼女達を向こうのベッドに運んであげて」

「いや、でも……」

「侯爵令嬢が、床に寝っ転がってくんずほぐれつ……なんて、侍女達に見せたくないでしょう」


 ベルの鳴らし方に合図があったのか、ベルを一回鳴らした時にはやってきた侍女が、数回鳴らしたベルではやってきていない。


「……運ぶだけだからな。ウワッ、触るな!手を入れるな!」


 二人纏めて抱え上げたジルベルトは、情けない悲鳴をあげながらも二人を小部屋に運び入れる。エリザベスはその隙に、証拠品としてマニエラがかじったカカオ菓子の残りを置いてあったナプキンに包んでポケットにしまった。


 ベッドに放り出されたシルバー侯爵令嬢ズは、お互いに抱き合い、足を絡めて秘所を擦り合わせてながらカクカク腰を振っていた。


 見るに耐えない……。


 エリザベスは二人にシーツをかぶせると、ジルベルトに侍女と薬師を呼んでくるように言った。ジルベルトは自分が相手をさせられたらたまらないと思ったのか、言われた通り走って部屋を出ていく。


 エリザベスは手に持っていた赤い薬を半分に割ると、サリエラの口の中に突っ込んだ。指をネットリと舐められて気持ち悪かったが、嚥下を確認してから指を引き抜き、同じことをマニエラにもする。

 半量でどれくらい効果があるかわからないが、やらないよりはマシだろう。


 同じ顔をした美少女達がお互いに愛憮しながら喘ぐ様は、なんとも卑猥で違うジャンルのエロゲーの世界のようだ。

 これはこれで需要があるかもしれないな……などと、エロゲープレイヤー目線で扉の外から見ていたエリザベスだったが、侍女が数名とでっぷり太った中年男性が部屋に入ってきて、エリザベスは場所を開けて彼らを小部屋に通した。


「これはいったい……」


 シーツで覆い隠されてはいるが、二人が何をしているかは一目で明らかだった。


「シルバー侯爵令嬢達は、そちらに出されたカカオ菓子を食べた途端、暑いとかムズムズするとか言い出して、そのような状態に……」

「カカオ菓子?」


 中年男性は侯爵家お抱え薬師らしく、侍女に置いてあるカカオ菓子を持ってこさせると、それを半分に割って匂いを嗅いだ。


「これは……媚薬だと思われます。しかもかなり強力な。誰がこれを?」

「シルバー侯爵令嬢様は、私の為に注文した特別なお菓子だとおっしゃってましたから、侯爵家で購入された物だと思われますけど」

「あなたは?」

「エリザベス・ミラーと申します。シルバー侯爵令嬢様達に本日お茶会に招待されました」

「そうですか。では、あなたも?」


 中年薬師はジルベルトに鋭い視線を向ける。


「俺は……」

「彼はジルベルト・ストーン侯爵令息様です。あなたもシルバー侯爵令嬢様にご招待を?」

「うん、まぁ、そんなとこだ」

「では、お嬢様方に治療をなさったのはストーン侯爵令息様で間違いはないですか?」

「治療?!俺はそんなことしていない!ただ、この部屋に運んだだけだ」

「しかし、この媚薬は精を取り込まないと狂ってしまう類のものだが、お嬢様方はすでに山は越えている。後は水分を取りながらしばらく発散すれば媚薬は代謝される筈だ。つまり、すでに精を取り込んだ後としか思えない」


 中年薬師に詰め寄られ、ジルベルトは大きな身体を縮こませて懸命に否定している。


「エリー!俺が何もしていないと話してくれ!」

「さあ、それは本人達に聞いてください。今日はお茶会は終了ですよね。私はこれで失礼します」


 エリザベスが綺麗な淑女の礼を決めると、エリザベスはジルベルトの静止も無視して部屋を出る。ジルベルトは中年薬師につめ寄られていて、エリザベスを追いかけてくることはなかった。


 部屋を出ると、サイラスが壁にもたれて立っていた。見た目は完璧な変装で初老の従者なのだから、この態度はアウトだろうが、侯爵家の使用人達は令嬢達の一大事にそれを咎める者などいなかった。


「無事で良かった」


 エリザベスはハグしようと近づいてきたサイラスに、両手を前に出してストップをかけた。


「あぁ、うん。そうだよな。で、どうなった?」


 サイラスはギリギリ踏み留まり、エリザベスの頭を一撫でするだけにした。


「どこまでご存知ですか?」

「うーん。一応ね、窓の外で見張ってたから、シルバー侯爵令嬢達が床に転がって、ストーン侯爵令息が出てきたとこかな。あいつが出てきた時、踏み込もうかとも思ったんだけど、すぐに部屋から出て行ったから、こっちに回ってきたって感じ」

「マニエラ様とサリエラ様の見ました?」

「床に転がってからはほとんど見えてないよ。あれってやっぱり媚薬?」


 エリザベスは辺りを見回して、こっそりとポケットからカカオ菓子を取り出した。


「薬師の方の話では、かなり強力な媚薬だそうです。これ、マニエラ様が齧った残りです。お二人にアナスタシア様の秘薬を半分づつ飲ませましたら、峠は越えたと薬師の方が言っていたんで大丈夫そうですよ」

「あれらは自業自得だな。これが証拠品か。これがあればどんな媚薬を使ったか判別できるな。凄いよ、ベス。この媚薬が今王都で流行っているものと同じだったら、シルバー侯爵家を取り締まるきっかけになるかもしれない。そこから芋蔓式に悪事を公にしていける」


 サイラスは媚薬を受け取ると、ナプキンごと袋に入れて内胸ポケットにしまう。


「私、お役に立てました?」

「もちろんだよ。……ハァッ、頑張ったねのチューがしたいから、早くここから帰ろう」

「はい。私もラス様のハグが恋しいです」

「うん、いくらでも。でも、やっぱりこの変装を解いてからだな。ほら、沢山詰め物したせいで、ベスを直に感じられないだろうから」


 二人でクスクス笑いながらシルバー侯爵家を後にした。


 ★★★


 これは後日談になってしまうのだが、王都に蔓延っていた違法薬物である「真珠の涙」が、シルバー侯爵領で栽培されているマリ(蔓植物)の種子をすり潰して精製した物質からできていることがわかり、シルバー侯爵が王都に媚薬を広めたことも証明された。それと同時に、その薬漬けになった奴隷が多数存在したことから、人身売買の事実まで明らかになり、シルバー侯爵の爵位は一次王家預かりとなり、元シルバー侯爵と、その娘二人は平民として生活することになった。シルバー侯爵家後継であったライド・シルバー6歳だけは、元侯爵夫人である母親と実家の伯爵家に身を寄せたらしい。また、数いた愛人達は侯爵家から手切れ金を受け取り、その後はわかっていない。


 マリア・ロンド、彼女もあの媚薬騒ぎの後から学園を退職し、その後の行方は不明だ。


 ジルベルト・ストーン侯爵令息は、カーン子爵家の婿養子になるも、結婚式もブッチして逃走。いまだにエリザベスに横恋慕しているとか、していないとか。イザベラの追跡を逃れつつ、王都に潜伏してヒモのような生活を送っているらしい。


 ティタニア・オスマンタス男爵令嬢は、ジルベルトとの破局後複数の男性と関係を持ち、20歳過ぎた頃から消息不明だ。


 ジルベルトが関係した他の女性達は、それからもエロゲーのモブに相応しい爛れた生活を送り、裏切られたり裏切ったり……まぁ色々だ。


 こんなことがありましたが、明日、サイラスとエリザベスの婚約式を行います!






番外編1は終了です。次回は番外編2です。

アナスタシアが少し可哀想かもしれません。最後はハッピーな感じなんですが。ご理解ある方のみ、次にお進みください。

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