表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/57

ジルベルトが致す場所ランキング

R15バージョンです。

本日2話目です。

 キャサリンの日記とラスティの聞き込みの結果から、ジルベルトが女性と出没する場所を書き出してみた。


 一番多いのは体育倉庫、次いで屋上、教室、特別教室(家庭科教室や音楽教室)、保健室……。


 いやいやいや、ちょっと人気のないところならどこでも盛っていませんか?猿ですか?猿なんですね。


「あの……ちょっと質問なんですけど。十代の健康的な男子というものは、致さないと死ぬ呪いにでもかかっているんでしょうか?」


 ラスティの口はへの字になってしまう。


 その気持ちはわかる。自分でも馬鹿な質問をしていると思うから。でも、ここまで人数も回数も多く浮気をされていたとわかると、それにたいする腹立たしさよりも、これが十代男子の普通な性欲なのか?ジルベルトが異常に性欲が凄いのか気になってしまう。そう思う時点で、すでにジルベルトに感情はなく、他人事として受け止めている証拠なのだが。


「一般的な男子とストーン侯爵令息を同列で考えて欲しくないな。少なくとも僕は健康的な男子だけど、未だ誰とも致してなくても全く呪いが発動する気配はないよ」


 エッ?!

 衝撃の告白。いや、ジルベルトがあまりにアレだし、エロゲーの世界というのもあって、貞操観念が希薄だと思い込んでいたが、童貞男子がいても不思議ではないのか。でも、男子の閨教育とかは実践ありとも聞いたことがあるけれど。


 あまりにビックリし過ぎて、思わず口をポカンと開けてラスティを見つめると、ラスティは首筋まで赤くしてそっぽを向いた。


「僕は、一生一人の女性だけ愛せればいいと思っているから。それに練習の為にそういうことするのって、女性にも失礼だろう? 」

「ぶっつけ本番……」


 思わず漏れてしまったエリザベスの心の声に、ラスティは慌てたように弁解する。


「いや、ちゃんと座学は勉強したから。だから心配はいらない」


 何故ラスティがエリザベスに弁解するように言うのかはわからないが、ラスティのお嫁さんは幸せだけど大変そうだなと半眼になってしまう。そのラスティの未来のお嫁さん像に、未来の自分の姿を思い描いて、エリザベスは顔を赤らめながらも反面微妙な気持ちになってしまう。


 遠い、遥か昔、前世の記憶を思い出す。友達の話だが、初めて同士の初Hはそりゃもう大変だったらしいと聞いたことがあったからだ。数回チャレンジしてやっと成就できたとか、情緒も夢もない可愛さの欠片もないかっこうを取らされ、最後には羞恥心すらなくなり、合体できた時はハイタッチものだったとか、実際はあまりの痛さに彼氏の頭をおもいきりハイタッチ(引っ叩く)したらしいが。

 愛莉の初めては、相手が経験済みだったからかなりスムーズにはいったが、それでも愛を確かめる行為というより運動という感じだっただろうか。


「僕の話はいいんだよ」


 拗ねてる?

 表情はわからないけれど、ラスティの感情はかなりわかりやすい。


「雨ならば体育倉庫、晴れなら屋上か。でも寒い季節だからなぁ」

「騒ぎにして目撃者を作らないとですから、できれば教室がいいですよね」


 ジルベルトの不貞現場を、アナスタシアとエリザベスが目撃、騒いで人を集めるというのが今回の策だった。

 究極、人が集まらなくてもエリザベスが自分の不貞現場に実際に遭遇したということをジルベルトに知らせることが重要だった。次いで、公爵令嬢のアナスタシアが証言することで、不貞の事実を認めさせて婚約破棄をもぎ取る。証拠としてキャサリンの日記を提出すれば、証言人数は少ないが現行犯だから申し開きはできないだろう。


「なんだってこんなに色んな場所で……」


 次の不貞現場を特定しようにも、あまりに色んな場所で致しているから場所を絞りづらい。色んなシチュエーションを楽しんでいるドスケベである! と、そんなドスケベに恋心を抱いていた昔の自分に早く思い直せと教えてあげたい。


「場所を頻繁に変えているのは、不貞がバレないようにだろうね。同じ場所ばかりだと目撃されやすくなるから」

「なら、学園じゃなくて他所ですればいいのに」

「ハハ、いかにもな連れ込み宿を使用したら、そこに入るのを見られるだけでアウトだからじゃないかな。その用途でしか使わないだろうから」


 エリザベスはジトッとラスティを見る。浮気男の心理に詳しいじゃないですかと、とんだ濡れ衣である。童貞らしいから、そんな心配がないことはわかっているのだが。


「ジルの後をつけるのでは駄目なんですか?」

「彼ね、凄く勘が鋭いみたいなんだよね。何度かつけてみたんだけど、多分気がついたんだろう。何度か撒かれそうになったし、そういう時は絶対に女子とは密会しないんだ。彼、絶対に隠密に向いてるよ。そういう勘は天性のものだから」


 実はラスティ(サイラス)は隠密を使ってジルベルトを探らせていた。しかし、その隠密の気配を察知し、さらに撒く一歩手前までいけるとは、ジルベルトの能力の高さを示していた。

 ただの騎士で終わらせるには惜しい逸材、諜報部がスカウトをかけたいと話が出たくらいだった。


「その割にはキャシーに何度も見られてますけどね。私も2回遭遇したし」

「一度盛っちゃうと勘も鈍るのかな、ハハハ。そうだ、今までの実績も踏まえてキャサリン嬢が一番ストーン侯爵令息が行きそうな場所の予想ができたりして」

「嫌な実績ですね。でも、実際に遭遇確率が半端ないですから、そうなのかもしれません」


 ジルベルトの不貞の場所を予測するのは、一旦キャサリンが戻ってくるまで保留することにした。


「そういえば、学園主催のダンスパーティーと新年の祝賀舞踏会は、ストーン侯爵令息がパートナーなんだよね」

「多分。まだ話してはいないけれど、毎年そうですから」


 学園主催のダンスパーティーはそこまで格式ばった集まりではないから、いつもは入場だけジルベルトにエスコートされ、後はバラバラに過ごしていた。エリザベスは主に壁の華となり、ジルベルトは友達のところへ行ってしまい、途中で姿を見失ってしまうことが常だった。帰りもエリザベスは一人先に帰っていたから、ジルベルトがその後どうしているのか知らなかった。きっと、エリザベスが帰った後は色んな女子とダンスをし、空き教室で致していたことだろう。

 新年の祝賀舞踏会は国王主催の全貴族が出席するものなので、一応ジルベルトと一緒にいることになる。


「まだ話してない?だってダンパは来週だよ」

「そうですね」

「衣装合わせとかどうなってるんだ?!」


 普通、舞踏会などでは婚約者がドレスを贈るのが一般的だ。自分の色の入ったドレスを贈り、自分は婚約者の色を挿し色に入れた衣装などを用意する。

 が、ジルベルトからドレスを贈られたことは一度もない。髪飾りすらもだ。エリザベスは淡い紫(ジルベルトの瞳の色)や金糸の刺繍の入ったドレスを自力で用意し、ジルベルトは胸ポケットに紺色のチーフを入れるのみだった。


「去年作ったドレスがあるからいいかなって思って」


 壁の華のエリザベスがどんなドレスを着ていたかなんて、きっと誰も覚えていないに違いない。残念なことに去年と身長も変わらないことだし、わざわざドレスを新調するなんて無駄遣いが過ぎる。


「まさか、舞踏会も?」


 ラスティが信じられないと言わんばかりにエリザベスに詰め寄る。さっき開いた距離が詰められて、その距離の近さにエリザベスは頬を染めて俯いた。


「私の身長だと、既成のドレスだとお直しが大変なんです。だからって、毎回ドレスを新調するなんて贅沢過ぎるでしょ?伯爵家のお金は私達家族の物じゃないですもの。領民から預かっているに過ぎないのに、私のドレスの為に散財するなんて駄目だから」

「いやいや、なんで侯爵家が出さない?婚約者の義務だろう」

「前は領収書を送ってくれって言われてたんです。でも、領収書を送ってお金を貰うのもなにか申し訳なくて。だから、うちで用意することにしたんです。別に侯爵家がケチとかじゃないんですよ。うちが勝手に領収書を渡すのを止めただけで」


 ラスティが「ハァッ……」とため息を吐く。


「ほら、私なんかがおめかししたって誰も見てませんから。別に私の去年のドレスなんか誰も覚えてませんよ」

「私なんかとか言わない」


 ラスティが屈んでエリザベスの両肩をしっかりと掴んで、視線を合わせるように顔を覗き込んできた。エリザベスからは前髪しか見えないが。


「君は素敵な子だよ。小柄で僕の腕の中にスッポリ入っちゃう身体は可愛らしいし、茶色の髪の毛は艶々で触りたくなる。よく見ると紺色の瞳は夜の空みたいに吸い込まれそうじゃないか」


 エリザベスはボンッと顔を赤くした。これではまるで口説かれているようではないか。

 ラスティから香る魔力の香りに甘さがさらに混ざり、エリザベスはポーッとなってラスティを見上げた。その瞳は潤み、小さく薄い唇が半開きになっていることにエリザベスは気がついていない。そして、そんなエリザベスをラスティは食い入るように見つめていた。


「……ベス」


 ラスティの声は掠れ、色気が溢れエリザベスを飲み込む。ラスティのエリザベスを掴む手に力が入り、引き寄せられているのかラスティが近づいてきているのかわからないが、その顔が次第に近くなってくる。


 エリザベスはそっと目を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ