いきさつ(ナディア)
時刻はお昼だった。
爽やかな風が吹き、私は目の前の食事に満足していた。
ロンドサ・ザッキースの坊やを脅して、スパイ業の入り口から引き戻させて数時間後のことだ。
私はホテルに戻ってきて、中世ヨーロッパからやってきた3人の子供たちと食事会と洒落込んでいた。
その日は、元々、中世ヨーロッパから、ピーター、ジョージア、レオの3人が美味しい食事を食べにやってくる予定だった。私は、オーストラリアの最高級ホテルのレストランを予約し、テラス席で3人に美味しい食事をおごっていた。
ピーター、ジョージア、レオの3人は、ダッカー王子と伯爵のおかげで、目一杯オシャレをした格好をしていた。もちろん、中世ヨーロッパファッションだった。
予定にはなかったのだが、ミランが途中で合流した。偶然、中世ヨーロッパから私に会いにやってきてくれたのだ。
「ミラン!」
「久しぶり!」
「一緒に食べる?」
「爺ちゃん、一緒に食べようよ。」
そんな会話が賑やかに繰り広げられ、食事中にどこからともなく突然現れたミランに、レストランの給仕係はとても驚いた様子だったが、文句一つ言わずにミラン用の席を用意してくれた。
私は世界的有名なベストセラー作家のナディア・ストーンとして、そこにいた。
私たちは非常にゴージャスで美味しい食事を皆で楽しくいただいた。
そのうち、著名なロック歌手のロンドサ・ザッキース本人が同じレストランに現れたことに、私は気づかなかった。彼がスパイ候補に選定された理由は、多分、その誰にも気づかれずに目的の人に近づけてしまう所だろう。
食事を終え、私たちは5人でエレベーターの方に歩いて行った。
ホテルの防犯カメラと人目のつかない所で、「いでよ、ドブネズミ」の解放の呪文を使おうとしていた。
レオが解放の呪文を言った時(私たちはそれとなく手を繋いでいた)、私の肩に誰かが手を伸ばして来た。
気づいた時には、時は既に遅しだった。
私たちは、中世ヨーロッパにワープしてから気づいた。
世界的ロックスターのロンドサ・ザッキースが、私たちと一緒に、数世紀前の過去の世界にワープして来ていたのだ。
「なんで?」ロンドサ・ザッキースは、訳がわからないと言った様子で、辺りを歩き回っていた。
伯爵は、ことの事態に呆気に取られていたが、いそいそとコーヒを準備し始めた。
「ここは一体どこだ?ナディア、一体どうなっている?」ロンドサ・ザッキースは大興奮状態で、初対面の私にしゃべりかけていた。
話を聞くと、彼は、どうも私の本のファンらしかった。
そこで、ホテルのレストランで偶然出会ったので、追いかけてきて、声をかけようとしたらしい。そのタイミングが、レオの解放の呪文のタイミングと重なってしまい、偶然伯爵家に来てしまったいうわけだ。
とかく興奮する彼に、伯爵はコーヒーを飲ませて、落ち着かせてくれた。
しかし、詳しい説明は後だ。
よりにもよって、その日は、彼の大きなコンサートの日だったのだ。
私は、彼を元の世界に戻そうとした。しかし、何回トライしても五番目の扉から弾き飛ばされてしまい、現代のオーストラリアのホテルまで戻れなかった。
「なんだ?」ロンドサ・ザッキースは、非常に驚いていたが、何回もトライするうちに、結果的にゲームのことを理解してしまった。
ミランと一緒に頑張ってもどうしてもうまく行かず、そのうちピーターもジョージアも協力してくれたが、彼を一向に元の世界にうまくワープさせることができなかった。
私は、焦って、颯介にヘルプを頼むよう、ミランにお願いした。
「お願い!颯介を連れてきて、コンサートの繋ぎをお願いしてくれる?どこにいても、龍者の実と松明草の粉は持ち歩いていると思うから、颯介ならやってくれると思う。」
ミランは分かったとうなずき、すぐに五番目の扉から颯介の所にワープした。
ミランは、以前、52回も颯介を救うためにワープに挑戦したことがあったので、颯介の所にはすぐにワープできる技を身につけていたのだ。
これが、ロンドサ・ザッキースの10万人コンサートに颯介が呼ばれたいきさつだ。
颯介はさすがだ。
完璧に、いや期待以上にやり遂げてくれた。
新たに、仲間にロンドサ・ザッキースが加わってしまったのだが、スパイ業からは彼はキッパリ足を洗うだろう。
ゲームという、スパイ業より、もっと非常にエキサイティングなツールを見つけてしまったからだ。
<完>
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