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大観衆の前で(颯介)

 熱気がすごい。

 そこは、10万人ほどの観衆が待ち構えているコンサート会場だった。四方をぐるっと囲まれているような錯覚に陥るほどの人、人、人だった。


「何?ここは?」俺はミランに聞いた。

 いきなり日本の保険会社のビルからワープした俺は、大きなコンサート会場のステージ上にいた。


 「ごめん。失敗してしまって、今日、この会場でこれからコンサートをする予定のロック歌手が中世ヨーロッパにまだいるんだ。」


 ミランは俺にそうささやいた。


「は?」俺は耳を(うた)った。

「ロンドサ・ザッキースのコンサートがこれから行われるはずなんだけど、彼はまだ中世ヨーロッパの伯爵家(はくしゃくけ)にいる。」


 ミランは早口でそう言った。


「ミスがあったんだ。ナディア姉さんと僕がミスをした。」

「今、ここには10万人ほどの観客が集まっている。そろそろ開演しなければならないのに、主役は中世ヨーロッパにいるんだ。」


 ミランはそう続けて言った。


 あの世界的大スターのロンドサ・ザッキースが、中世ヨーロッパにワープしている?

 何を言われているのか、全然頭に入って来ない。


 俺は、呆然とミランの顔を見つめて、なんとか状況を理解しようとした。


 そもそも、俺は徹夜開けだし、頭がよく働いていないのかもしれない。

 理解できないのは、俺がおかしいのか?

 ミランの話がさっぱり理解できない・・・


「颯介、とにかく詳しいことは後で説明するから。」

「僕とナディア姉さんがロンドサ・ザッキースをここに連れ戻すまで、このコンサートの繋ぎをやっておいてくれる?


「颯介を連れてきて、そう言うようにナディア姉さんに言われたんだ。」


 ミランはたて続けにそう言った。


「もう、どういうことなのか・・・コンサートのつなぎって。」


 俺は言葉を失って、途方(とほう)にくれた。


「ナディア姉さんは何をやればいいって言っていた?」

 俺はミランに聞いた。


「『龍者(りゅうじゃ)()松明草(たいまつそう)の粉は持っているんでしょう?』とナディア姉さんは言っていた。」


 ミランはそれだけ言って、すぐに何か呪文を唱えるポーズになった。


「待て!待て待て待て待て!!」

 俺はミランを引き止めようとした。


 しかし、ミランは召喚の呪文(じゅもん)を告げて、フッと跡形(あとかた)もなく消えた。俺一人を10万人の観衆が待ち構えているコンサート会場に残して。

 

 俺は意味が分からなかったが、条件反射的に龍者(りゅうじゃ)の実と松明草(たいまつそう)の粉をカバンから取り出して、少し舐めた。

 

 はあー、ふーっ!


 大きく深呼吸をした。とにかく、ナディア姉さんのお願いは絶対だ。


俺はチームナディアの一員だ。やるしかない。10万人の大観衆の前に一人にされて、腹をくくった。


 龍者(りゅうじゃ)()松明草(たいまつそう)の粉を使えときたら、あれしかない!!


 俺は、覚悟を決めてステージ中央に仁王立(におうだ)ちした。誰が出てきた?という空気で何か観客席がざわさわしている。


 俺はちなみに白いシャツにスーツのズボンだ。だって、会社で徹夜で仕事だったんだから。


 俺は、後ろに控えたドラマーに合図をした。

 ドラマーは、お前は誰だ?と言った目で俺を驚愕(きょうがく)の目で見ていた。ま、そうだな・・・


 俺は大きく腕を振り上げ、ジャンプをして、思いっきり右手を突き上げた。


 会場上空に大きな花火が上がった。


 天井が無い会場だ。

 一気に観客の歓声(かんせい)がこだまし、会場のボルテージが上がった。

 もう一度、俺は、ドラマーに合図をした。今度はドラマーは軽くうなずき返してくれた。


 俺は、もう一度、大きく腕を振り上げてジャンプした。


 それに合わせて、勢いよくドラムが叩かれ、俺が思いっきり右手を突き上げると右手から光の光線(こうせん)が発射され、花火のように会場上空に美しく広がった。


 完全にロック歌手のパフォーマンスのように激しいドラムがついてきてくれる。


 俺は、身をのけぞらせて左手を突き上げた。


 氷が()き上げられた。このまま氷が観客の頭上に落ちるとダメなので、右手の光線で氷を()かした。


 会場全体に水しぶきが一気に美しくまかれた。


 ドラムの音、俺の繰り返されるパフォーマンスでまるで本物のロック歌手に率いられているように、大観衆は乗ってきた。歓声が上がり、会場はのりに乗ってきた。


 すごい、俺は10万人を楽しませている!!!!


 観衆は(うな)りのような大歓声をあげていた。


 ここで、俺はプテラを呼んだ。


 あ、ちょっと待った。沙織さんが来る?


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