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ロックスターの気の迷い(ナディア)

ヨレヨレのTシャツを着て、寝癖(ねぐせ)のついた頭のままの相手を私はじっくりと見つめる。

オーストラリアの高級ホテルのスウィートに泊まる若い男性の頭には、銃が突きつけられている。


私とこの男の共通点はいくつかある。若くして、自分の才能と努力で富を(きず)いた点がまず一つ。私は作家で、この男はロック歌手だ。29歳の彼には世界中に熱狂的(ねっきょうてき)なファンがいる。世界各国でツアーを開催すれば、巨額(きょがく)のお金と人が動く。


二つ目は、おそらく服の趣味だ。互いに安価で気に入った服をひたすら着倒(きた)す傾向が強い。この男は、スウィートに似つかわしくない服装をしていた。それは私も同じだ。


三つ目は、私は本物の筋金入りのスパイだが、この男はスパイ業に足を踏み入れようとしていた。男は、まさに入り口に立っていた。男は、私と同じく疑われずに、世界各国を自由に移動はできる。


彼にはどの国でも常にVIPという称号が与えられた。セレブリティは写真は撮られやすい。どのくらい、他人の目を誤魔化すことに長けているかで、スパイに向いているか、向いていないか。それがまず分かれ道となる。セレブリティの自分を隠れ蓑(かくれみの)に使えるかは、それは本人の資質次第(ししつしだい)だ。この男は、人の目を惑わすことに長けていた。私と同じくな。


しかし、総合的にこの男にはスパイとしての才能は無い。音楽の才能の方が遥かに(ひい)でていた。


「今すぐ、スパイ業から身を引きなさい。」私は男に警告(けいこく)した。


「なぜ?あんたは誰だ?」男は私に聞いた。


私は完璧な変装をしていた。私が誰だか分かるまい。

「あなたぐらいのレベルで、この道に入るのは危険よ。」

私は言い放った。


「いい?私は常にあなたを見張っているわ。スリル欲しさに危ない橋を渡るのは今すぐやめることね。」

私はゆっくり言った。


「さもないと、あなたの命はないわ。」

私は冷たい口調で男に言った。


私は指にフッと息を軽く吹きつけた。私が素早く蹴り上げた、男の床に脱ぎ捨ててあったトレーナーが宙に舞い、一瞬で火がついた。そして左手の氷の光線(こうせん)で一瞬で火が消えた。


「なんだ?今の?」

男の額に汗が吹き出し、男はうろたえた様子で言った。


「ね?あなた、こんなことできないでしょう?あなたの踏み入れる道に、あなたの勝ち目はないわ。」

私は冷たく笑って言った。


「額に汗水垂(あせみずた)らして、真面目に働きなさい。歌であなたは世界を救うの。」

銃をグッと男の頭に押し付ける。


「いい?決して、今いる道から外れてスリルを追いかけてはダメよ。話は断りなさい。」

私は男にくり返した。


「わ、わ、分かった。断る。俺は歌だけやる。」

男は早口で言った。両手を広げて降参(こうさん)のポーズをしている。


「今日のコンサートには、何人来るの?」私は聞いた。


「10万人の予定だ。」

男は言った。


「そうよね。私も楽しみにしているわ。あなたの音楽のファンよ。だから、あなたを殺したくはないわ。」

私はそう男に言った。


「分かった。俺は歌を世界に届けることだけに集中するから。」男は言った。


私は、静かに銃をしまった。


「私に銃は要らないわ。あなたがどんなに遠くにいても、この力であなたを狙えるわ。」

「でも、あなたが歌だけに集中するなら、私はあなたを守ってあげるわ。」

私は男に約束した。


「ありがとう。」

男はかすれた声で言った。ちょっと涙目になっている。


(ぼう)やが()れない世界に遊び半分で足を踏み入れようとするからよ。


「じゃあね、ずっと見ているわ。」

私はそういうと、バルコニーから飛び出した。いつものようにバルコニーから侵入したのだ。

私は屋上に壁を駆け上がり、待っていたヘリに乗ってホテルを後にした。


さあて、今日のコンサートが楽しみだわ・・・

男の名前は、ロンドサ・ザッキース。世界最大の動員数のギネス記録をそのうち破るのではないかと言われているロック界のスーパースターだ。


私の名前はナディア・ストーン。世界最高を自負するスパイだ。


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