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62. ご対面(颯介)

 油断した、のかもしれない。

 

 俺たちはひっとらえられた。

 まず、一体どうやってここから抜け出すかと言いながら、ピラミッド内部を歩いていたら、大網に全員ひっくるめられて吊し上げられた。とっさに炎の光線で網を焼いて抜け出そうとしたら、ナディア姉さんに止められた。


「よく見て!真下に尖った杭がたくさんあるわ!」


 ははーん、その手のタイプね。


 俺は、したり顔でニンマリして言った。


「みんな、いいね?一気に氷噴射だよ!杭が隠れたら、俺が網を破る。」


「OK!」全員が叫び、俺たちはすごい勢いで左手を真下に向けて氷を噴射した。杭が隠れたところで、俺の右手が炸裂し、網を炎で焼いて俺たちは落下した。


 さすが龍者の実を食べているだけあって、全員が見事に氷の上に着地した、と思ったら、動こうとしたら、ツルツル滑ってうまく動けない。


 さっきも思ったけど、忍者って、氷の上は役立たずになってしまうのかもしれない。氷の上の修行の術がなさそうだしね・・・


 なんて呑気に思っていたら、クルクル!!!!!と投げ縄の要領で、縄がひっとんで来て、全員が一人ずつ縛られていた。


 俺たちは縄を引っ張られる形で、よろよろと氷の上から救出され、そして、そのまま数珠繋ぎのように縄で繋がれて歩かされた。


「ね?私の縄を焼いてよ。」ナディア姉さんが後ろにいるジャックに言っている。

「無理だよ。。ナディアに炎が触れずにやくなんて無理だ。ナディアが火傷しちゃうよ。」とジャックがボソボソ言っていた。


 そうなんだ。ある程度距離があれば良いのだが、至近距離で炎をうまく操る術を俺たちはまだマスターしていなかったのだ。というわけで、お互いに躊躇しまくっている間に、あっという間に、誰かの前にひっとらえたまま、連れて行かれた。


 エジプトは、発展している街だった。緑に溢れている。砂漠の真ん中に立ったピラミッドしか知らない俺からすると、別次元の世界だった。


 とても賑やかで、通りのあちこちに店が出ていた。

 そのまま、すぐ近くの宮殿みたいなところに入り、俺たちはひたすら歩かされた。


 あっという間に、とてつもない広いホールに連れてこられた。高い玉座の上から誰かハンサムな若者が俺たちを見下ろしている。


 「あれじゃない?」アッバスがささやいた。


 俺たちは色めき立った。そうだ、これがミッションの対象のクフ王とやらに違いあるまい!!


 しかし、手を後ろに縛られているので、誰もカメラアプリのボタンを押せない。


「お前たちは、珍しい術を使うらしいな。」その若者が威厳たっぷりに言った。


「はい、あのー、こんにちは!」ナディア姉さんがとびっきりの笑顔で愛想良く言っている。

「あ、こんんちは。この頭につけた黒いもののボタンをちょっと押してみていただけませんか。黒いものが喋るところをご覧に入れます!」俺も乗った。


「何?頭の黒いもの?」クフ王が乗ってきた。もう、玉座からおりて、こっちに向かって歩いてきそうな勢いだ。


「そうなんです。これって喋るんですよ。」ジョージアが素晴らしい笑顔で言っている。


 こうなると、超絶美形の得だ。レオとピーターもさわかーな笑顔でクフ王に笑いかけている。

 警戒心がほぐれたクフ王が、子供たちのそばに歩いてやってきた。


 ジョージアの頭の黒いカメラを覗き込んでいる。


「あー、ここを押すのか?」クフ王は上から眺めてボタンを見つけて、かがんでいるジョージアを見下ろすような体勢でボタンを押した。


「これはクフ王の腹です。顔を認識できません。ミッション不成功です。」


 ああ!惜しい!腹じゃないっつーの!!


 俺たちは色めきたった。あと少しだ。


「あの、顔を黒い部分に向けてボタンをもう一度押してもらえませんか?」ナディア姉さんが丁重に頼んだ。


「お?こうか?」クフ王はカメラがしゃべったことに驚くと言うより、なんか違うと言われたらしいことに、躍起になっている。


「クフ王の顔を認識いたしました。」今度はカメラアプリがさわかな声で成功を告げる声がホールに響き渡った。



「やったー!」「やったわ!」「ね、今度は私のも押してみて!」あたりに歓声と興奮で溢れた。

俺たちは、両手を後ろにしばられた状態で、歓喜の感情に溢れ、ぴょんぴょん飛び跳ねて、クフ王を褒め、クフ王にもっとミッションをクリアするように誘導した。


「お、いいか?こうかな?」クフ王は褒められてノリノリだ。なんてったって、見たこともない黒い物体が、自分が顔を近づけてボタンを押せば、「クフ王を認識いたしました」としゃべってくれるのだから!!


 俺たちは、クフ王と一丸となって全員のミッションをクリアした。

 クフ王は意外だが、素直で割といいやつだった。単純だった。


「ね、王様。そろそろお腹が空いたので、食べ物を何かくれませんか?」ナディア姉さんがクフ王に頼んだ。


 そうだ、そうだ、解放の呪文だ。

 さっさと紀元前のエジプトステージをクリアして、ヴィオラ奪還の本線に回帰せねば・・・・

 

 俺たちはニッコニコでクフ王を見た。


「そうだな、うん。その黒い物体の話をもっと聞かせておくれ。お前たちの術についてもな。」クフ王はそう言ってうなずいた。


「よし、こちらは私の客人だ。食事を運んでまいれ。」クフ王はどうなることやらと、離れて見守っていた家来に告げた。


 家来がいそいそとどこかに消えると、残っていた家来にこうも言ってくれた。


「こちらの客人の縄も解いてやってくれ。」


 クフ王の家来が縄を解いてくれている間に、食事がどんどん運ばれてきた。すんごい料理だ。とにかく、アジア人の俺からしたら、香辛料からしてかいだこともない香がしている。しかし、とにかくうまそうだった。


 ピーターが、自分が言うか?と目くばせしてきた。伯爵が、いや、ここは俺が言おうと言った合図をした。


 全員がかすかにうなずき、俺が言った。


「クフ王、このようなもてなし、本当に感謝します。食事の前に感謝の言葉を伝えさせていただきます。」

俺たちは全員で手をつないだ。


 さあ、あとは、伯爵が解放の呪文を言うのだ。

 と、その時、さっとクフ王が動き、満面の笑みで、アッバスとピーターの間に割って入ってきた。


 え?ちょっと待ったー!


「いでよ、ドブネズミ。」若き伯爵は予定通り言った。


 さっと消えたのは、若き伯爵と手をつないだアッバスと、クフ王の3人だけだった。


 ピーター、ジョージア、レオ、ナディア姉さん、ジャック、俺の6人は、呆然と玉座の前の豪勢な食事に前に残されて突っ立っていた。


「な、何?」家来がのけぞるほど驚いている。

「王が消えた?」

「貴様ら何をした??」


 ひえーーー!!!!


 今更そんなくだりいる?


「まずい、歴史が変わる。」ナディア姉さんがボソッと言った。

「だな。」ジャックも言った。

「追いかけよう。戻るっきゃない!」俺も言った。

「みんな、手を繋いで!」ジョージアがキッパリ言った。

「僕が言う!」レオが言った。


「全員繋いだね?」ピーターが全員を見渡して素早く確認した。

「今だ、レオ」ピーターがささやいた。


「いでよ、ドブネズミ!」レオがするどく言った。衛兵が俺たちに飛びかかってくる瞬間だった。


「ゲーム クリア」の巨大な文字が今度は天井に出現するのを俺は見た。


 そして、暗転して、伯爵家の城壁の二十三本目の木の下に全員が突っ立っていた。


 そのまま、一人ずつ素早く穴を潜りけ、伯爵家の庭を突っ走り、中庭に入り、キッチンの扉を開けて飛び込んだ。


 クフ王も、若き伯爵も、アッバスも無事か?


「一体、なんなんだ!」そこで怒鳴り散らして入るクフ王がいるかと思ったら、意外や意外、「なんだこの黒い水は?」、とか言いながら、若き伯爵のおもてなしをニコニコして受けているクフ王がキッチンにいた。


「結構、うまいんですよ。」アッバスも、さすがはプリンス、上品にクフ王のモードに合わせている。


貴族衆は、いつの時代の方でも、やっぱりどこか気が合うんだな。平民の俺には到底分からん・・・


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