60. パワーを使う(颯介)
肩もうすぐ折れる。
頭が軋む。涙が勝手に出てくる。視界が歪む。
俺の目の前に岩に挟まって動けなくなった、3人の子供たちが見える。この子たちが息絶えるのを見るのはとてもじゃないが耐えられない。俺には無理だ。
ええい!!!!!!!
俺は雄叫びをあげて、左手を何とか上に向けた。
グオーーーーーーー
俺の左手から氷の塊が噴射され、狭い通路の天井に氷の塊を作った。それがみるみる膨れ上がり、岩が押してくるのを必死で押し返そうとしている。(氷に必死という感情があれば、だが。)
「ナディア姉さん!ジャック!アッバス!伯爵!」
俺は声にならない声で叫んだ。
ウオおおおおおおおおおおおお!
5人の大人が必死で同じように雄叫びをあげて、俺の作った氷の塊をさらに拡張して、両側の壁を押し戻した。
ピーター、ジョージア、レオが、崩れ落ちるように仕掛け通路の床に座り込んだ。
「無事か?」俺は3人の子供たちに無我夢中で聞いた。
その間も、雄叫びをあげて天井の氷の塊を押し広げた。
「だいじょうぶ。」レオがか細い声で言い、ジョージアとピーターもこちらを振り向いて、うなずいた。
アッバスが言った。
「よし、今のうちにこの仕掛け通路を通り抜けよう。」
「そうね。颯介、ナイスよ。」ナディア姉さんがそう言い、ジャックもうめき声を上げながら俺に近づいてきて、俺の肩を優しくポンと叩いてくれた。
俺が先に行く!
まーた、俺はバイトリーダー的根性がむくむくと湧き上がってくるのを感じた。
「待って!」
ナディア姉さんが止める声を無視して、俺は通路の先頭に立った。
俺はもっと慎重に行くべきと思いながらも、割と小走りに走った、かもしれない。
あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
落ちた。
俺は落とし穴に落ちた。
落下する寸前、映画のようだが、本当にあちこちでガイコツを見た気が、した。
思わず左手が無意識に穴の真下を向き、俺は氷を大量噴射していた。
皆の目から見たら、視界から消えた俺が、氷の山に乗って、急に出現したように見えただろう。
氷の三角山の頂に俺が座って、急に俺が競り上がるように現れたものだから、ナディア姉さんがボソッと言った。
「あら、そう来たのね・・・」
俺の作った氷山が見事に落とし穴全体を塞ぎ、俺たちは、その氷山と壁の間をツルツル滑りながら、必死で歩いた。
「ね、前に進まないね。」アッバスがそう小声で言う声が聞こえたが、俺はシカトした。
だって、落ちて死なずに進めるんだから、滑るからって文句を言わないでほしい。
数時間かかって、ようやく落とし穴の端に辿り着き、俺たちは難所を過ぎた。
ふー、こんな事をしていて、一体いつになったら、クフ王の顔を拝めると言うのか・・・俺は先の遠さに目眩がした。
あともう少しで完結です。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
少しでも面白いと思っていただけましたら、ブックマーク、もしくは「いいね」を押して頂けると大変ありがたいです。




