56. 秘密のとくぎ(ナディア)
テラスでは爽やかな風が吹き、テーブルクロスが密やかに揺れていた。
私はサングラスをゆっくりと外し、のんびりコーヒーをすすった。
指をくるくる回し、小さな炎を作り、フッと息を吹きかけると、トーストの上においたバターとキャラメルが少し焦げて、実に香ばしい香になった。誰も見てはいまい。私のこのすごい特技を。
ジャックだけが読んでいる新聞の影から顔を出して、片眉をあげて、呆れたように首を振った。
そう。私のすごい力をみんな見て!と言いたいが、マジックとしか言いようがない異能なので、誰にも見せびらかせない。
私が高層ビルに登ったり、空手の技で相手を倒したり、柔道の技で相手をぶん投げたりするのも世間に公開していないが、この力も同じようなものだ。今なら、敵を倒せる自信がある。いや、自信なら前からあるが、一網打尽に敵を倒せる自信があるという方が正しいか。
ホテルの客に混ざって、私はひとときの休暇をリラックスして過ごしていた。もちろん、奴のかかとに埋め込んだチップが的確に奴の居場所を指し、ミサイルが真っ直ぐに狙っていることは確認済だ。
しかし、もはや、居場所を確認さえできれば良かった。物騒なミサイルを使う必要なんて全くない。
忍者のように素早く動け、炎の光線を自在に操れ、炎のバリアで敵の攻撃をかわせるのであれば、私は無敵だ。
コーヒーをゆっくりすする。私はこの力を世界を救うために使うだろう。
まずは、ヴィオラを救出して、あとは、どう使うかはじっくり熟慮しよう。
ジャックが読んでいる新聞の見出しに私は今更ながら気づいて、声をあげた。
「レオナルド・ダ・ヴィンチの新たな作品発見」世紀の大発見のような見出しが踊っている。
イタリア語でなになに?本人直筆のタイトルがあったですって。
「そーすけと魔法の板と炎のドラゴン」
「わーお!」私は思わず声をあげた。ちょっとだけ歴史を変えてしまったかしら・・・?




