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4. ガストロノムスバックストッカー家 VS バッファローのまっき

 飛び込んだ先は、サバンナだった。


 三人の子供たちの目には、果てしなく、どこまでも、地平線まで草原が広がっているのが見えた。太陽はまだ高い。子供たちが飛び込んできたはずの扉は跡形もなく消えていた。三人の子供たちは、みすぼらしい格好のまま、サバンナにぽつんと放り出されたのだ。


「覚えている?」

 ジョージアがかすれた声で、二人にささやいた。彼女は、乾いた唇をかみしみて辺りを見回している。ジョージアの体は怖さでかすかに震えていた。


「じいちゃんは、バッファローの群れをかわした。父さんはそう言った。」レオは言った。

「うん、正確には、バッファローの群れをかわして、王手をかけろ、そう父さんは言ったんだよ。」ピーターは辺りをにらむように目を細めて警戒しながら、そう言った。


 そう!


「耳を澄まして!」ジョージアが言った。そして、突然、三つ編みのおさげをひるがえして、地面にはいつくばり、地面の音を直接聞こうと耳を地面にくっつけた。


「音がするわ。バッファローの群れが来るわよ!もうすぐ!」ジョージアが叫ぶように言った。

ピーターとレオは焦って辺りを見回した。


 まずい!

 本当にまずい!

 バッファローの群れがやってくる!


「逃げる場所を探すんだ!」


ピーターは焦りで気が狂ったように辺りを見渡して、1本の背の高い木を指さした。

「あれだね!あの木に登ろう!」レオは、ピーターが指さした木の方を見て、うなずいた。


 レオが真っ先に走り始めた。


 大地を揺るがす振動が伝わり始め、はるか遠くで砂ぼこりが高く上がっているのがジョージアとピーターの目に見えた。三番目の扉を開けて飛び込んだ先はバッファローの通り道になっているはずだ。逃げなければならない。

 

 父さんは、どうやってバッファローの群れをかわしたのかまでは話してくれていなかった。しかし、三人の子供たちには、高い木に登ってかわしたのだと、確信が持てた。


 ジョージアとピーターも無言で、全速力で高い木に向かって走り始めた。じいちゃんができたのなら、ガストロノムスバックストッカー家の足の速さなら、バッファローの群れが到着する前に、木に辿り着き、木に登ることができるはずなのだ。

 

 怖い!


 地面が激しく揺れ、先に着いたレオがなかなか木に登れず木の根本の方に何度か滑り落ちたのを見たとき、ピーターは、不安で心が描き乱れた。


「行くわよ!」

 そんなピーターの隣を疾走していたジョージアが雄叫びのような声をあげ、走りながらジャンプして木の枝に飛びついた。そして、木の枝を両手でつかんだまま、飛びついた時の反動を利用して、体を1回転させて木の枝の上になんとかしがみつくことに成功した。そのまま、木の枝にしがみ着いたまま、レオに手を伸ばした。


 さあ!

 レオ、飛びつくのよ!


 レオは泣きながら、少し木から離れて、走り込んできてジャンプしてジョージアの手を掴んだ。ピーターは下からレオを肩車し、ジョージアはレオをそのまま木の枝の上に引き上げた。


「ピーター!早く!」

 ジョージアが金切声を上げた。すぐそばまでバッファローの群れが迫っていた。


 ピーターはそのままジャンプし、ジョージアがピーターの手をつかんだ。ピーターは足を木の太い幹にかけ、体を斜めにしながら足を上まであげ、ジョージアが引き上げてつかませた木の枝をつかんだまま、なんとか体を木の枝まで自力で引き上げた。


 木の枝のギリギリ真下をバッファローの先頭が通り過ぎた。三人の子供たちは、もっと高く、登ろうと、木の枝に足をかけながら、上へ上へと登った。


 そして、バッファローの大群が、殺人的なスピードで、木にぶつかりながら木の周りを走り去るのを息を潜めて見ていた。


 このまま木がなぎ倒されてしまったら、三人ともバッファローの群れに潰されてしまう。三人の子供たちは、神に祈るような気持ちで、大群が通り過ぎるのを待った。


 間一髪で、私たちは助かったのだわ・・・


 やがて、日が暮れ始めた頃、最後のバッファローが通り過ぎたのを確認して、まずピーターが先に地面に飛び降りた。レオとジョージアは木の幹を滑り落ちるように地面におりた。


「さあ、バッファローの群れはかわしたわね。」ジョージアはほっとして言った。


「でも、このまま日が暮れると、恐ろしいことになりそうだね。ライオンやチーターもウロウロしているだろうし。」ピーターは、擦りむけた手のひらを見つめながら言った。


「王手をかけろってどういう意味か、にいちゃんとねえちゃんは分かる?」レオは心配そうにピーターとジョージアに言った。


「僕は今はまだ分からない。」ピーターは言った。ピーターは、遠くの地平線を途方に暮れたように見ていた。

「王手をかけるって、サバンナに似合わない言葉よね。」ジョージアは言った。


「木の上から眺めたとき、バッファローが向かった先に岩のようなものが見えたわ。あそこには水がありそうよ。」


「そうだね、僕も見たよ。あの岩の周りだけ、緑の木々が生い茂っていたね。確かに水がありそうだ。行ってみよう。」ピーターもうなずいた。


 レオも元気を取り戻したようにうなずいた。




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