42. わな(ナディア)
私の手は震えもしなかった。ピタッと狙いを定めて、アッバスの頭を吹き飛ばそうとしていた。
私のApple Watchの通知が表示された。「コードS。RSはトロイの木馬。RW。」
警察署で私にレッドサタンを伝えてきた男からだ。
危険。レッドサタンは罠。逃げろ。
メッセージは単純にそう示していた。私はジャックの背後に目を向けた。入り口からマシンガンを持った男の影がよぎった。私の指は銃を離さず、そのまま向きを変えて、全神経を右手人差し指に集中させて、入り口に向けてフッと息を吹きかけた。
炎のバリアがマシンガンを持つ男に対して張られた。私はそのまま壁全体にバリアを素早く広げた。
「ジャック!颯介、逃げるわよ!」
私は、サファイア、ピーター、ジョージア、レオ、そして3人の子供たちの祖父であるミランも守らなければならない。子供たちの祖父であるミランが未来で私に出会う想定だったということは、彼が無事に食料を調達して帰れたという逸話が残っているならば、ここで私は彼らを守り切れるはずだ。
男たちが数人現れて、マシンガンをぶっ放してきた。しかし、私の炎のバリアはびくともしなかった。
競馬場で歓喜の声がまだ上がっている中で、3匹のプテラノドンが空中に現れ、大勢の人が叫び声をあげ始めた。
馬主席までやってくると、そのまま私たちはプテラノドンに全員乗り、空高く飛び立った。
「ジャック、そいつも連れてきて」私はジャックに言った。ジャックはアッバスを無言でプテラノドンに引きずりあげ、一気に空高く飛び立った。
競馬場では、次のレースが始まった。競走馬とレースを一緒に走っているような感じになったが(私たちは空、馬は地上のコース)、炎を口から吐きながら最速で飛ぶプテラノドンが馬より前に飛び、すぐに競馬場を後にした。
颯介が、私とジャックに合図をして空中で私たちは集まった。
私の馬のレッドサタンのレースが始まる前、ジャックが近くのスーパーで大量の食料を買い込んできていた。ミランに渡すための食料だ。私たちは袋をミランに持たせた。
そして、ピータに少量のパンを持たせた。ピーターの両肩を、ミラン以外は全員つかんだ。ジャックは、右手でピーター、左手で呆然としているアッバスの腕をつかんだ。
「いい?ミラン?ピーター?ぴったり同じリズムで言うのよ。」私は念押しした。
ミランと子供たち3人は、それぞれ抱きしめあった。なにせ、子供の祖父と、その孫3人が一緒の時空にいるのだ。
ピーターは父親から聞いたリズムで言った。ミランは自分のリズムで言った。
「いでよ、ドブネズミ!」二人の言葉はまるで一つ声から言われているように、ぴったり一致した。
私たちは伯爵家の外の二十三本目の木の下に全員立っていた。
そこにミランはいなかった。ミランはより過去の伯爵家の外壁に、当時はまだ二十一本目の木だった所に戻ったのだろう。
「さあ、詳しく聞かせてもらおうじゃないの、アッバス。」私はワナワナ震えているアッバスに、低い声で告げた。
アッバス王子は利用されただけかもしれないが、じっくり話を聞かせてもらうわ・・・
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