37. さいかーい
ナディア姉さんからのチャットは、意外と早く来た。ただ、タイミングはバッドタイミングだった。
な・ぜ・な・ら
俺は前の日、貴族の格好をしたまま田中さんとご機嫌で自分のホテルに帰り、ホテルでディナーを食べ、そして、翌日一緒に観光でニューヨークの街を回ることを約束して別れた。
そう、デートだーーーーーーーー!
翌日になり、俺たちは約束した通り待ち合わせをし、街を散策し、楽しんでいた。非常に良い雰囲気だ。夢のような時間だった。ひょっとしたら、ひょっとしたら、手をつなげるかもしれない?というところまで雰囲気が良かった、と俺は思っていた。そして、手を繋ぐ瞬間を、今か、今かと見はからっていた時に、ちょーどナディア姉さんからチャットが来た。
「今どこにいる?」
俺は、正直一瞬ためらった。しかし、俺たちの絆は家族より強いものになっていた。すごい冒険を一緒に耐え忍んで乗り越えたのだ。楽しかったことも沢山あったし。あんな有名人なのに、ナディア姉さんは信じられないほど運動神経も良く、気さくで、戦闘能力が高く、超格好いい人だった。
お・れ・は、仕方ない!
「田中さん、ごめんなさい。ナディア姫に呼ばれたので、また後で連絡する。ごめんなさい。」そう言って、すぐさま待ち合わせの場所に向かったのだ。
途中で、偶然、ジャックと出会った。
「ナディアが、あの競走馬のレッドサタンを売るって言うんだよ。びっくりしちゃって。調教師にも慌てて連絡取ったんだけど、何が何だかわからないんだ。」ジャックは相当慌てていて、俺にそう言った。
レッドサタンは俺でも知っている。世界的に有名な競走馬だ。
俺たちは、同じ場所でナディア姉さんと待ち合わせだった。
俺たちが待ち合わせに急ぐと、そこには、ナディア姉さんの弁護士がいた。
そして、ちょっとおじさんになりかけた、ジャックに言わせるとアラブの王子らしいが、いかがわしい雰囲気の男性がいた。
「やあ、ジャック!ナディアがレッドサタンを売りたいと私に連絡してくれたんだ。」
いかがわしい男性の名はアッシブというらしく、自己紹介してからそう言ってきた。
ジャックはキリキリと怒りを帯びた目でアッシブをみて、「あり得ない」と吐き捨てるように言った。
「あら、ジャック、本当なんですよ。」ナディア姉さんの弁護士は言った。
そして、気づけばちょうど、前回、俺が子供たち3人に呼ばれて中世の村にワープした場所に来ていた。
なぜ、ここに呼んだ?
俺は、ナディア姉さんが早く来ないかと辺りを見渡した。この場所は、サバンナにいる時に、俺はナディア姉さんに話した事がある。嫌な予感がしなくもない。
「颯介、龍者の実は持っている?」弁護士が急に聞いてきた。
「え?持ってるけど。」俺は驚きながらもとっさに答えた。
「だよね。」弁護士が急にニヤッと笑った。
「え?」
「行くわよ。」弁護士はそう言うと、アッシブの片腕をがっしりつかみ、もう片方の腕で、俺の腕をがっしりとつかんだ。
「なめたマネしたら、怖いのよ。」弁護士がボソッと低い声で言うのを俺は聞いて、ゾッとした。
俺は弁護士に言われて、ジャックの腕をもう片方の手でつかんだ。
その瞬間だ!
ぐわん、ぐわん、ぐわん、というあのお馴染みの何かに強く引っ張れる感じがあった。
え????
俺たち4人は、中世ヨーロッパのあの村の通りに、あの朝と同じように突っ立っていた。
「よう、来たか。」満面の笑みの若き伯爵に出迎えられた。
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