36. アラビアの王子(ナディア)
アジトのソファに身をしずめ、私は考えた。
どうやって、仕返しをするべきか。
カジノで大負けして、不動産投資で失敗して、あげく離婚に失敗したアラビアの王子、アッバスから、私は紆余曲折を経てレッドサタンをほぼただ同然で買い取った。
当時、レッドサタンは競走馬としての才能は未知数だった。というより、誰もこれほどの名馬だとは想像できなかったのだ。
買い取るとき、売買契約書には妙な条項があった。飼い主が面倒見れなくなった際、優先的購入権が旧持ち主に与えられるというものだ。当時は、レッドサタンの価値がそれほど高いものではないと思われていたので、私は了承した。
ジャックの牧場に移ってから、レッドサタンの才能は華々しく開花した。てっきり、調教師のお手柄だと思っていたが、ただの偶然だったのかもしれない。
スパイ仲間がアラビアの王子、アッバスの近況を超高速で調べてくれた。やはり、アッバス王子は金に苦労している。
アラビアの王族は皆が金持ちかと思ったら、ちゃんと使いきれないほどの金を使い果たす桁違いのやつも、世界にはいるにはいるのだ。調教師は、昔のよしみで、アッバス王子に気軽に情報をしゃべっているだけの気さくなやつにとどまりそうだ。
ケチなスナイパーなんかで、よくもナディア・ストーンを抹消しようとしてくれたものだな・・・
アッバスは今、ニューヨークにいた。そうと分かると話は早い。
私は颯介にチャットした。
「今どこにいる?」
颯介のホテルを聞くと、私は颯介との待ち合わせ場所を決めた。この弁護士の格好のまま行こう。
「レッドサタンを売りたいわ。」私はアラビアの王子のアッバスにチャットで連絡した。昔の連絡先がまだ残っていたのだ。
さーて、甘ったれてクレイジーな王子を懲らしめる方法が、一体何なのか、今やっと分かったわ・・・
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