35. レッドサタン(ナディア)
レッドサタンは、ジャックの牧場で世話している競走馬で、私が馬主だ。
「レッドサタン?」私の心は想定外の言葉で揺れる。
私は決断した。この男を釈放させることに決めた。
「あなたを釈放する手続きをするわ。釈放されたら、ナディアに連絡入れて。」私は男に言った。
警察署で釈放手続きをした。
「狙われているのね、ナディアは。」と私は男に言った。警察署を出た後だ。
「そうだ、狙われているのは、ナディアの方だ。分身じゃない。この言葉の通り伝えてくれ。」男はそう言って、人混みの中に去って言った。
分身じゃないとは、つまり、スパイ業の方から命を狙われているわけではないということだ。今のところ、ニューヨークのアジトは2つとも安全ということだ。ひとまず、アジトに帰ろう。
レッドサタンは、昨年はフランスの凱旋門賞で優勝した。G1で優勝する競走馬の馬主として、私は沢山のテレビでも紹介された。一昨年は、イギリスのキングジョージ6世&クイーンエリザベス杯でも優勝したし。
そのレッドサタンを譲り受けたのは、とあるアラビアの1国の王子からで、元々のオーナーは私ではない。
ジャックの牧場に、調教師ごと私が買い取った。
それが?
買い取った先の王子・・・ここから私の情報が敵に漏れている?
敵は、アラビアの1国か?
あー、このレッドサタンを入手した経緯はいわくつきだった。
本来は、私のところに来るはずのない馬だった。
私は定期的にジャックの牧場を訪れていた。馬主だから当然だ。レッドサタンの状況を見たり、時には乗ったりした。この調教師は非常に気さくな人だと思っていた。
もう1度、彼の身辺を洗ってみよう。
ジャックを介して、今度のニューヨーク旅行は、牧場の人間なら知り得たはずの情報だ。
私は、他の誰にも話していなかった。スパイ業の仲間にも、作家としてのナディアの周辺にいる人物の誰にも今度のニューヨーク旅行を話していない。
しかし、私がニューヨークにやってきて、あの辺りに行くことは、ジャックを介してなら、たやすく情報を入手できるはずだ。私は背筋が寒くなった。
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