34. 面会(ナディア)
髪型一つで随分印象は変わる。
私は、最近使用していないアジトに向かって、慎重に変装を重ねた。
昨晩、沢山寝たので、気分は上々だ。
夜寝る前に、ジャックには松明草の葉っぱを1枚食べさせた。私が寝ている間に万が一にでも敵に襲われたら、自分で身を守ってもらうためだ。ジャックは面白半分に食べて、颯介の真似をして、ジャクジーの中で軽く火を出して、危うくホテルの火災警報器を作動させるところだった。
変装の準備は一種の散財のように見えるかもしれないが、スパイ業にとっては非常に重要だ。私は変装の準備に多くの金を費やす事を後悔していない。結局、自分の身を守ることに直結するからだ。
慎重に変装した後、フラッと入ったカフェで特殊端末を開き、周囲に私をつけている人間がいないかチェックをした。やつのかかとに埋め込んだ探知機は、普段通りにやつの位置を示し、ミサイルはまっすぐにやつのかかとに向かって設定されていた。特段、いつもと変わった動きは、今のところ見当たらない。昨日、作家ナディアのままの私を狙ったスナイパーの存在以外は。
よし、何が起きているのか確認しよう。
私は警察署に向かった。通りを渡って警察署に向かう最中も、念入りに周囲を確認した。しかし、気になる兆候は見当たらなかった。
警察では、昨日逮捕された男の面会を申し入れ、サングラスを取り、ナディア・ストーンの弁護士を名乗った。誰も私のことをナディアだと気づく人間はいまい。体型も髪型も、雰囲気も顔も全く違う。
面会室で、私は男と二人だけになった。男の手には手錠がはめられている。
「あなた、ナディアを助けようとした?」私は男と二人だけになったのを確認して、聞いた。声も変えている。
男は頷いた。
「彼女に危険が迫っている。彼女は無事か?」
男は、まだ、私がナディアだと気づいていないようだ。
「あなたと彼女の関係性は?」
男はゆっくりと私を見て、そして目をしばたいて、静かに言った。
「ちょっとした知り合いだ。それだけだ。」
なるほどね。私がナディア・ストーンの弁護士だと信じているようだ。目の前にいる弁護士はナディアの本当の正体を知らないと考え、事実を悟らせまいとしているのか?
「彼女がもしも、まだ無事なら伝えて欲しい。レッドサタンだ。」
変装した私は、平然を装って、「分かったわ」と答えた。男の声が遠くに聞こえる・・・
レッドサタンは、想定外の答えだった。
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