32. 身につけたちから
「さあ、占い師、この白状しないとこの水晶玉3つを割るわよ!」
ナディア姉さんは、床に並べた3つの水晶玉の1つを足で踏みつけ、銃を王の間の天井にぶっ放した。
王様と、王妃様と家臣は打ち合わせはしていたものの、悲鳴をあげた。
そりゃそうだ。ナディア姉さん、ここは中世。ちょっと迫力が過ぎます・・・
ここまでの経緯はこうだ。
まず、ナディア姉さんとジャックは、悪い占い師の家に忍び込み、水晶玉3つをくすねてきた。ナディア姉さんがどんな手を使って忍び込んだかは、聞かなかったが、気づかれずにあっさりくすねてくることに成功していた。
せしめた水晶玉3つと、ナディア姉さんの被災時用バッテリーで充電済みの俺たち4人のスマホを持って、城内に忍び込んだ。
例の隠れ家から秘密の通路を使って、王の城に入り、貴族然とした、子供たち3人と、ボロは来ても生粋の貴族の若き伯爵の威厳で、なんとか城内をそのまま歩き続けた。
子供たちと伯爵の間には、もう強い絆が生まれたようだった。あんなに意地悪爺さんだった伯爵を知っている俺としては、感慨深い状況だった。
俺と、ジャックと、ナディア姉さんとサファイアは、家政婦さんに着せてもらった、王と王妃の服を着て歩いていた。若き伯爵は、頑なに王の服を切るなってめっそうもないと言って固辞したので、バッファローに襲われてボロボロになった貴族服のままだった。
ダッカー王子の案内で王の間に通じる部屋に何とか辿りつき、スティーブ・ジョブズの発明したiPhoneの威力をふんだんに駆使し、ビデオカメラで、ダッカー王子と王と王妃が対話することに成功した。王と王妃はむせび泣いて喜んだ。
で、今、王に、悪い占い師を呼び出してもらったところだったのだ。占い師を脅して、悪事をゲロさせて、呪いを解いてもらおうとする計画だった。
しかし、だ。
「手遅れです。」
この占い師、ニターっと笑って、そう言いやがった。既に、ダッカー王子の幼い甥っ子を次期皇太子に立てる計画を進めているらしく、クーデータが成功しそうなところまで来ていると踏んだんだろう。
もう、俺のバイトリーダー的責任感がむくむくと膨れ上がった。
「お前、こんな動いているダッカー王子を見ても、まだそんな事を言えるのか?」俺は、水戸黄門状態で左手にスマホを抱えて、差し出して、ダッカー王子が王に泣きながら訴えている様子をビデオ再生して見せた。
「ふん、そんな板の中でしか生きられないダッカー王子は、やはり亡くなってしまっておると言えよう。」
占い師は、なめくさった態度で言いやがった。
ナディア姉さんは、バックの中に手を入れている。あー、まずい、占い師を殺す気じゃないよね?ナディア姉さん・・・
俺は、とっさに、サバンナの夜、チーターが若き伯爵を遅った時、俺の指から出た炎を思い出した。俺は、松明草の葉っぱを食った。ゲームから解放されてもまだあの力は有効か?
俺は王の間の立派な重厚なカーテンに右指を向けた。
「お前ごときが、俺さまの魔力に勝てると思うな。」吐き捨てるように俺はそういうと、カーテンに強く「燃えろ」と念じて指を刺した。
ダー!ダー!
光線のような光が出て、重厚なカーテンが炎で燃え始めた。
え?嘘でしょう、嘘でしょう!
俺は、ヒエー!!!!
火事になっちゃう!と慌てて、左手のスマホを落とし(ゴトンと鈍い音を立てて、王の間のフカフカの絨毯にスマホは着地した)、左手をパーにしてカーテンに向かって手を振った。
取り消し!取り消し!
すると、左手の人差し指から氷の塊がすごい勢いで発射された。右手の人差し指から炎線、左手の人差し指から氷線、二つの線が燃えてるカーテンの手前で交わって、氷が溶けて水になり、カーテンの炎を鎮火させた。
「おおおおぼおおおおぼ!」
占い師は声にならない声を出して、気絶しそうな顔で、俺を見た。まずい、びっくりし過ぎてこの人気絶しちゃう。
俺は、さっとかがんで、倒れそうな占い師を支え、「呪いを解いたら許してあげます。」と優しくささやいた。
占い師は、まだ目をギョロギョロさせて、俺たちを伺った。
まだ分かぬか?
俺は、右手をさっと斜め上の天井にまっすぐ向け、炎の光線を出した。さらに左手を斜め上の天井に向け、氷の光線を出した。次から次に、交互にレーダーのような線を出し、俺のすごい能力を見せつけた。
「お、お、お、」
「そうか、呪いを解かないところを見ると、お主も焼いて欲しいようだな。」俺はそう言い放ち、ピタッと占い師に右手を向けた。
その時だ。ナディア姉さんがその時、カバンからさっと金ピカに輝くものを取り出し、占い師に差し出した。
「焼かれて死ぬなんて愚かな事をする前に、さっさと呪いを解きなさい。解いたら褒美に、この金塊をあげるわ。」
占い師の目がぴかっと光った。
金かーい!
俺は心の中で思って、落ちたスマホを素早く手に取った。
「解放せよ、ダッカー王子を。むにゃむにゃー。」占い師がそう唱えた。
途端に、辺りが暗転し、俺の体はひっぱられた。
お馴染みの感覚だ。目を開けると、ニューヨークのスタバの前にいた。
「新城さん!」田中さんが目をうるうるさせて俺を見ている。
え?
「さっき、暴漢2人をやっつけて、すごい人だかりになったと思ったら、いつの間に着替えたの?」と田中さんが俺に聞いた。
はい、俺は王の服を着たまま、ニューヨークの街に戻っていた。隣を見ると、ジャックもナディア姉さんも王と王妃の服のままだ。サファイアもちゃっかり貴族のドレスを着ていた。
しかし、俺たちはもはや格好なんて、どうでも良かった。一緒に抱き合って歓喜の喜びに浸った。戻ったー!!!
さあて、サファイアの母親になんとこの状況を説明しようか?ナディア姉さんのファンのようだから、姉さんに任せようか・・・
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