31. ビデオ
市場には熱気が溢れ、美味しい食べ物の屋台の匂いがどこからともなくしていた。
チャイ屋やコーヒースタンドがないかと辺りを素早く見たが、そんなものは見当たらない。もっと後の時代にコーヒーは一般的な飲料として定着したようだ。
「あー、コーヒーが飲みたいな。」俺は思わずつぶやいた。
めざとく、ナディアが気づいて言った。
「同感。この時代には早すぎる飲み物だったようね。」
「飲みたいな。」ジャックも言った。
「そんなに美味いものか?」若き伯爵は興味深々に聞いてきた。
現代の大人3人は、うなづいた。あー、芳しいコーヒーの香りが恋しい。
色とりどりの鮮やかな赤や黄色の色のテントが 立ち並び、市場には色んな果物や野菜や穀物が所せましと並べられていた。ものすごく繁栄した都市なのは分かるけどね・・・
「あ、コーヒならあるよ。コーヒー豆をニューヨークでサファイアにもらったんだ。だって、ほら、ニューヨークステージの最初はスターバックスから始まるでしょう?」
俺たちにダッカー王子が言った。
「最高!」ナディアが思わずダッカー王子にだきついた。でも、群衆からかすかなどよめきが生まれた。
市場で再会した時、まずは3人の子供たちの服装が煌びやか過ぎたのには気づいたが、今や、俺たちは市場中の人々の注目を浴びてしまっていた。何せ、お姫さまと王子さま並の格好をしていた者の横に、未来人が4人いて、さらにボッロボロになった貴族服を着た20歳くらいの若者が立っているのだ。
そりゃあ、目立つよね・・今、ナディアが空中にとびかかって、何か空気をを抱きしめたように、人々には見えたようだし。
あ?今の行動って、人々の頭の中で、ナディアが空中に何かが見えてる的な感じに見えた?
「ね、魔女狩りって中世じゃなかった?」俺は一般的イメージで、気になった。
「中世だね。ここからさっさと撤収しよう。」カウボーイのジャックはきっぱりそう言った。
「ダッカー王子、君の家はどこ?コーヒーが飲みたい。まず、この群衆から早く逃れて、作戦を立てよう。」ジャックはダッカー王子に頼んだ。
「分かった。みんな、ついてきて。近くに王家の隠れ家があるんだ。」ダッカー王子はそう言って歩き始めた。
ナディア姉さんが、歩きながら自然に弓矢をしまった筒に手をかけたのを俺は目の端でしっかり見た。
だよねー。魔女狩りにあったらたまらない。そりゃ、戦闘モードにねるよね、ナディア姉さん。
俺、ナディア姉さん、ジャックが食べた龍者の実効果は、ゲームから解放されてもまだ効果を発揮するのか分らなかった。小学生のサファイアがいるし、彼女の肌は褐色だし、色々歴史を振り返りたいが、もはやこの状況的にサファイアが周囲の人にどう見えているのかわからない。
この時代の3人の子供たちは大金持ち風に見えることで間違いない。伯爵はよくいる貧乏伯爵ってところかな。。分からん。
市場を足早に逃げて、俺たちは、賑やかな通りを抜けた静かな通りにある、立派な邸宅に入って行った。
「ここに隠し扉があるんだよ。」ダッカー王子は教えてくれた。塀をよじのぼって中から開けなければならなかったが、ナディア姉さんが難なくよじのぼって、忍び込み、中から扉を開けてくれたので、皆で誰にも見られていないことを確かめて邸宅に入った。
すごく素敵な庭を持つ、中はとてもお金持ち風の邸宅だった。庭に噴水まである。
「地下の秘密通路で城とつながっているんだ。敵に襲われた時に逃げ出す時に使う隠れ家なんだ。知っているのは、歴代の王の家族だけだ。ここの家政婦と庭師は、代々、歴代の王の家族にだけつかえている人たちなんだよ。」
ダッカー王子がそう説明した。サファイアはナディア姉さんから災害用携帯バッテリーを借りて、自分のスマホを充電して、あちこち写真を撮り始めた。
俺のスマホも充電しておこうか、俺がぼんやりそんなことを思っていると、家政婦さんらしき人が突然部屋に入ってきて、僕たちを見てすごい驚いた。
「誰?ここは、王家の家よ!」
「あ、私たち、ダッカー王子の知り合いなんです。ほら、写真はこれ。」とナディアがスマホに映り込んだダッカー王子の写真を家政婦さんに見せた。
「え??王子・・・」家政婦さんは、大粒の涙を流し始めて、「この板は何なんなの?」と泣きながらサファイアに聞いた。
ちょっと待ってー!ダッカー王子ってスマホのカメラには映るんだ。
そうか、そうか、幽霊って映るよね。心霊写真とか、あれの類か。。
「ダッカー王子は、今ここにいます。」サファイアは家政婦さんを慰めている。
「待って、サファイア、スマホのビデオモードで、ダッカー王子を撮って、家政婦さんに見せよう。」ジャックがはっとして言った。
「ダッカー王子、サファイアのカメラに向かって、今の状況を説明して。」ジャックはダッカー王子にそう言った。
サファイアは家政婦さんと一緒にスマホのビデオモードでダッカーにスマホを向けた。
「動いているわ!今、ここにいるの?」家政婦さんは泣きながら、大興奮だ。
「声は聞こえてないわ。」ナディアが小声で言った。
ダッカー王子が話した内容をビデオ再生で見せると、家政婦さんは泣き崩れながら、まあ!とかおお!とか言いながらちゃんと王子の話の内容を聞いてくれた。
ダッカー王子は、自分は占い師に呪いをかけられて、姿が見えなくなっただけで、ここにちゃんといる、と伝えた。
「王様に知らせましょう!この魔法の板を、王様にも見せて!」家政婦さんは、泣きながら、そうサファイアに向かって泣いた。サファイアは、家政婦さんを優しく慰めた。
ダッカー王子がニューヨークから持ち帰った、コーヒー豆と豆を挽くツールで、俺たちは久々に贅沢なコーヒータイムを満喫し、家政婦さんから最大限のもてなしを受けた。
さーて、王様にどうやって近づいて、この魔法の板とやらをお披露目しよう。ついでに、悪い占い師とやらを懲らしめなければならないな。俺たちは、プランを練った。




