30. ひ・み・つ
窓から、外の涼しい風が吹き込んできて、俺の眠気を誘う。
明るい昼過ぎから始まった宴会はまだ続き、肉の丸焼きや、オレンジ、ワイン、パン、サラダ、豪華な食事が沢山食卓に並んでいた。俺たちは、子供たちが二人ずつペアになり、こっそり宴会を抜け出して、アトリエを探した。
ダ・ヴィンチのアトリエは広々としていて、様々なものが置かれていた。だが、子供たちは誰も、モナリザの絵なんて見たことが無い。綺麗っぽい女の人(子供の目から見て、モナリザを綺麗な女の人と思うかは疑問だったので、綺麗っぽいと言った)の絵を探してねと伝えた。
全員、それらしき絵を見つけ出すことができず、だんだん辺りは暗くなってきていた。
俺は、ずーっと情熱の人、ダ・ヴィンチにつかまっていた。ダ・ヴィンチは、俺だけ未来人だとちゃーんと分かっていて、俺にずっと質問や議論をし続けていた。
話し続けるダ・ヴィンチに、俺は盛んにワインをすすめたが、俺も逆にすすめられ、俺は眠ってはいけないのに、多少なりワインを飲んでしまったせいで、だいぶ眠くなってしまった。ダ・ヴィンチはそれほどワインを飲まず、ずっと正気で上機嫌で俺にマシンガントークを続けていた。
ま、ず、い・・・
眠気と必死に戦う俺は、最後の手段を使うことにした。
「プテラ〜」
いきなり席をたち、大きな窓から庭に向かって呼びかけた。
プテラノドンがにゅっと窓から現れた。その怪物の全身が、弟子たちにも、ダ・ヴィンチにも見えた。
「うぐっ。。」プテラノドンは庭で何かを食べていたらしく、ご機嫌にゲップをした。もちろん、口から炎が出た。
その瞬間、弟子たちは「うぎゃああ!!!!」と叫び声をあげ、俺は金切声を出して「逃げてー!みんな逃げてえ!」と叫んだ。弟子たちは、俺の声を聞いて、一目さんにダ・ヴィンチの屋敷から転がるように飛び出して行った。
で、肝心のダ・ヴィンチは、白目を向いて、また気絶した。今度は食卓の椅子に座っていたので、上半身がのけぞっても、椅子がしっかりダ・ヴィンチの体を支えてくれていた。
でかしたぞ!プテラ。
俺が褒めると、プテラノドンはいそいそとまた庭に戻って行った。
さあーて、アトリエで、今度こそ、モナリザを見つけるぞ。
広大なアトリエに子供たちと俺は集まった。しかし、探しても、探しても、俺の知っているモナリザはなかった。時間ばかりが経ち、俺は焦った。もう月が出初めていて、大きな出窓からの月明かりで絵を見て回った。しかし、どこにも、俺の知っているモナリザはない。このアトリエではないのか?
こうなったら、カメラアプリを1枚1枚にじっくり認識させよう。カメラアプリが反応したものが、書きかけのモナリザだ。月だけが頼りの月明かりの中で、俺は尻を突き出すポーズで、1枚1枚の絵に頭のカメラアプリを近づけて行った。
おんなじような絵が何枚かあるなーと思った辺りで、突然、「モナリザを認識いたしました。」とカメラアプリが静かに告げた。ええ?これが?と俺は思ったが、そんなの今更どうでもいい。
「みんな、ここに立って、この絵にカメラを向けるんだ。」子供たちは歓声をあげて、順番に一人ずつ「モナリザを認識いたしました。」とカメラアプリに言わせた。
一体どんな絵だったかって?それは「ひ・み・つ」だ。
決して知られてはいけない謎の代物だと思うから、イケおじダ・ヴィンチの永遠の秘密でいい。ただ、これだけは言える。似たような絵が何枚かあった。1枚に反応したが、それと似た絵が数枚ほかにも存在していた。これは皆んな知っていることだから言ってもいいと思う。
すかさず、俺たちは、走って食卓に戻った。そして、食卓の上に乗ったでかい肉の丸焼きを目の前にして、例の呪文を言おうとした。
が、その時、椅子にのけぞって気絶していたダ・ヴィンチが、「だから!板とカメラの形が・・・」と突然大声で言った。俺たちは死ぬほど驚いた。
そこで何かをダッカーが言った声だけ聞こえた。「びっくりしたー。ちょうど、いでよ、ドブネズミって言おうとした瞬間だったね。」
で、暗転して、何かに引っ張られて、ダッカーが生まれた王都の市場にワープしたわけだ。ワープじゃなくて、もうこれは悪魔の召喚みたいな感じに思える、悪夢のような瞬間だった。正直、俺は田中さんのいるニューヨークに戻りたかった。
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