表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/96

2. 伯爵の家

 3人の子供たちは、そっと家の外にでて、ピーターが玄関の鍵を静かに固く閉めた。自分たちが家を留守にしている間に、真夜中に誰かが家に入ってくるなんてゾッとする話だ。そうならないよう、自分たちが夜道を歩いている間に誰にも家に侵入できようになった事を確かめた。


 怖いけど、やるしかないわ。


「行くぞ。」ピーターが妹と弟にささやき、妹と弟は真剣な顔でピータにうなずき返した。真っ暗で、夜道は本当に怖かった。三人とも耳をすませ、辺りに目をこらし、野良犬や怪しい人影がいないことを確かめた。そして、急ぎ足で静かに通りの端っこを歩き始めた。足音をなるべく立てずに、かなりの急ぎ足で進んだ。目的地は、伯爵の家のある、大通りの突き当たりだ。


 伯爵の家は、村一番の大きな大きな屋敷だが、貧しい村なので、伯爵の家にも食べ物はあまりないと聞いたことがあった。夜ひっそりと確かめるのは、父さんが話てくれた話の中で、じいちゃんが伯爵の家に忍び込んだ時に使った穴がまだあるのか確かめることだった。


 子供たち三人は、伯爵の家の大きな門の前まで来ると、門のすぐそばの木からゆっくり数え始めた。


 門に向かって右に進み、高い城壁の外を囲んでいる二十一本目の木の下に、その穴はあると父さんは言っていた。大きな大きな木なので、二十一本目まで歩くのは思ったより時間がかかった。

「ここだ。」ピーターとジョージアが同時にささやいた。


 その木の下には穴なんてなかった。確かに二十一本目の木なのに、木の根本の辺りには穴なんて全くなかった。ピーターとジョージアは明らかに落ち込んで、木の下に二人とも座り込んでしまった。


 あの話は嘘だったの?

 父さんが話してくれた話は嘘なの?


 レオはそんな二人をそっちのけで、二十一本目の周りの木の下をはいつくばるように、見て回っていた。レオは数を数えていなかったのだ。父さんは木の下が三股に別れているようになっていて、穴はやぶに覆われていると言ってた。だから、レオは三股に分かれている木を探していた。


「これだ!」レオは、ジョージアとピーターが座り込んだ所より二本先の木の下を指差して、言った。


「え?」ジョージアとピーターはレオが指さした方を見て、立ち上がってやってきた。

「本当だわ。この木は三股ね。二十一本目の木は三股じゃなかったのに。」ジョージアは言った。

「分かった。じいちゃんが忍び込んだ時より、二本多く植えられたんだよ。」ピーターははっとしてそう言った。

「そうか!」ジョージは言った。

「ね、この薮をかき分けたら、穴があるよ。」レオは三股の根本を覆っている薮をかき分けて見た。


 そうすると、伯爵の家をぐるっと囲んでいる高い城壁の下に、子供がやっと通れるくらいの穴が空いているのが見えた。

「やったわ!」ジョージアは小躍りして喜んだ。


 ついにやったわ!

 本当なのよ、あのじいちゃんの冒険は!


「入ってみよう!」レオはそう言って、あっという間に穴に身を滑らせて、ジョージアとピーターが止める間もなく、レオは城壁の中に滑り込んでしまった。


「レオ!戻ってこい!」小声でピーターは驚いてレオを呼び戻そうとしたが、辺りはしんと静まり帰っていて、レオの声はしなかった。ジョージアも、ピーターも恐怖で心臓が潰れそうだった。


 嘘でしょう!なんで一人でさっさと行ってしまうの?

 レオ!戻ってきて!!


「レオが戻ってこないわ!私も行く。助けなきゃ。」ジョージアは泣きそうな声でそう言って、穴に身を滑らせた。


「ジョージア!」ピータも、妹と弟が心配で、自分も続いて穴に身を滑らせた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ