6. スタバ(颯介)
俺はニューヨークのスタバにいた。なんとかやっとの思いで注文して、隅っこに座っていた。田中さんに会えるなんて希望は消えつつあった。そりゃそうだ。こんな大きな街で偶然会うなんて、超絶無理難題だ。
周りの様子をチラッと伺った。みんな思い思いで注文して、何かそれなりに作業をしていた。今日は何しようかな?そんなことを思って、俺はぼんやり観光ガイドをめくっていた。
うん?隣のテーブルの様子がちょっと変だ・・・
明らかに、この辺りの子じゃないと思われる子供達が3人入ってきた。子供たちを引き連れているのは、ちょっとお金持ちの家の子に見える褐色の肌の小学生くらいの女の子と、びっくりするくらいゴージャスでハンサムな男の子だ。男の子は普通には見えない。何かのスターなのか?
で、問題はそのスターみたいな子と小学生くらいの女の子ではない。その横にいる3人の子供達だ。靴が見たこともない代物だ。全体的になんかの時代劇から出てきたようないでたちだ。要するにボロボロ。
でも、ぼろぼろを纏う子供たちは、男の子は綺麗な顔をしたハンサムだし(中学生くらいか?)、女の子ときたらびっくりするぐらいの美人だ(中学生?小学生?)。そして、小学低学年くらいの金髪の男の子も綺麗な顔をしている。
そうか、そうか、ニューヨークで何かの映画の撮影をしているんだな?これは、歴史物の撮影か?衣装のままでスタバにみんなで来たんだな。
俺は、そういうこともあるよねーぐらいの気持ちで、ほうほう、ハリウッド映画ってこんなにびっくりするくらいの衣装の完成度で作るのね、と思ってあんまりジロジロ見たら失礼だと思って、チラッと様子見をするぐらいにとどめていた。
自分の中では、田中さんには会えないけど、珍しい現場に遭遇できたと思って、少しモチベーションが回復しつつあった。