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6. スタバ

「あなたたち、サバンナから来たの?」

 突然どこからか声がして、ニューヨークの大通りの歩道でたちすくんでいる三人の子供たちは、我に返った。


 耳をつんざくような音が周りに溢れている。静かな中世の村では聞いたこともないような喧騒だった。色んな格好をしたさまざまな年齢の人がせわしなく子供たちの周りを歩いて通り過ぎて行った。歩くスピードも速いし、子供たちをジロジロ見る人もいれば、まるで目に入らないような感じで通り過ぎて行く人もいた。


 三人の子供たちの頭上には、「ゲーム スタート」と書かれた巨大な看板が斜めに傾いて出現した。そして、「一人に付き3つの命が使えます。」と添えられていた。すぐに、看板も文字も消えた。


「ねえ!聞こえている?私の声。」


 ピーター、ジョージア、レオの前には透き通るように光り輝くように見える少年と、褐色の肌の女の子が立っていた。声の主は女の子のようだ。


 ジョージアとピーターは素早く目を合わせて、うなずいた。自分たちはゲームの中に入り込むことに成功したのだ。ただし、サバンナの時のように、命懸けのゲームの中に入り込んだのだ。


「もう引き返せないわ。」ジョージアはつぶやいた。


 すごいハンサムな子だわ。


 少年は素晴らしいハンサムで、褐色の肌と黒髪の女の子は全身がピカピカで眩しいほどのオーラを放っていた。二人とも、ピーターと同じくらいの年齢に見えたが、三人の子供たちからすると見たことも無い格好をしていた。二人は信じられないほど変わった様子に見えた。特に少年はお化けみたいに透き通っている。


「僕たち、さっきまでサバンナの泉にいたはずなんだけど、急にこんなところに来ちゃったんだ。」

 レオが無邪気に言った。 

「そっか。君たちの親はどこ?」

 透き通るような少年は当たりをキョロキョロ見回しながら言った。


「親は来ていないのよ。私たち、父さんが連れていかれてからずっと三人だけなの。」ジョージアが答えた。

「親がいないですって!」女の子は驚いたような表情で言った。


 そんなに驚かなくても。。

 父さんも母さんもいないのは、私たちのせいではないわ。


「もしかして、お腹が空いてる?」

 女の子は少し優しい声になって言った。ジロジロ三人を見ていたのをもうやめている。顔つきもグッと優しい顔になったように見えた。


「ああ、僕らはとてもお腹が空いてるんだ。僕らは、食べるものが何もなくなったから、食べ物を探しに来たんだよ。」

 ピーターは正直に言った。


「OK。」女の子は言った。


「私はサファイアよ。小学校に通っているわ。そして、この彼はニューヨークの若きキング、ダッカーよ。」

 サファイアと名乗った女の子は、少々得意気に、自分の隣に立っている透き通るように光り輝いて見える少年を紹介した。


 ジョージアは身震いしながら、両腕で自分を抱きしめるような仕草をした。怖さを我慢する時のジョージアのくせだ。そう、何がなんだかわからない。


 キングって何のキング?

 王様なわけ?


「僕はピーター、妹のジョージア、そして弟のレオだよ。」ピーターは、ダッカーとサファイアに自分たちの名前を教えた。


 ダッカーはにっこりして三人の子供たちに「よろしく」と言った。


「ダッカーは、お金持ちで、このニューヨークの街一番の幽霊キングなの。あなた達もきっとそのうち意味が分かるわ。」


 サファイアはそう言うと、すぐ横にある建物を指差した。

「今、私のママがスターバックスでコーヒーを飲んでるわ。みんなであったかいココアとドーナツでも食べましょう。」

「やった!」レオは何か食べれると思って、小おどりして喜んだ。

「でも、ダッカーは幽霊だから、周りの人には誰にも見えないわ。気をつけてね。もちろん、私のママにもダッカーは見えていないわ。」

 サファイアはそう、三人の子供たちに注意した。


 キングって幽霊という意味?

 ぜーんぜん分からない・・・


 サファイアは「行くわよ!」と三人の子供たちを連れて、建物の中に入って行った。


 サファイアにスターバックスと呼ばれた店の中は結構混んでいた。彼女がツカツカと近寄った席には、女の人が一人座ってコーヒーを飲みながら何か紙のような物に書き込んでいた。隣の席には若い男の人がいるだけで、まだまだ他の席は空いていた。


「ママ、この子たち、私の友達よ。ココアとドーナツをみんなで食べたいの。」

 サファイアは、気難しい顔をして何かを書いている女の人の前に立って話しかけた。


「サファイア?お友達?」

 女の人は顔をあげて、驚いた顔をして言った。


 目の前に見たこともないボロボロの格好した三人の子供たちが自分の娘と一緒にいたのだ。それは突然過ぎてびっくりするはずの出来事だった。



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