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入部しちゃいました

入部しちゃいました


 次の日の放課後、『光速帰宅部』に所属していた俺は、愚民どもが目視できぬ速さで昇降口に向かった。

 しかし下駄箱から靴を取り出している最中、後ろからむんずと肩を掴まれる。


 振り向くとそこには、険しい上目の天の川がいた。


「善人くん、どこ行くの!?」


「どこって、帰るに決まってるだろ」


「善人くんは『いいスポーツ同好会』の部員なんだから、帰っちゃダメだよ!」


 そして俺はなぜかまた第三準備室、すなわち『いいスポーツ同好会』の部室にいた。

 陽が傾き始めたなか、アイドルとふたりっきりで、ひとつの机に向かいあう形で座っている。


「俺は同好会に入るだなんて一言も言ってないんだが」


「先生の許可はもらってあるよ。善人くんはいろいろ問題のある生徒だから、部活をするのはいいことだろう、でも気をつけなさい、って言われたよ」


「少しはオブラートに包めよ。それに天の川はもう、昨日俺に勝ったんだからいいじゃないか」


「よくない! まだ1回勝っただけなんだから! わたしは、勝ち越しするまでやるつもりだよ!」


「最低でもあと9840回もやるつもりかよ」


 そこに俺は、自由になる突破口を見いだした。


「天の川は俺に勝てばスッキリするかもしれないけど、俺にはなんのメリットもないよな?

 もうすでに1万回弱、それこそアルプスかってくらいに勝ってる相手に、いまさら勝っても嬉しくもなんもないし」


 すると天の川は「くっ……!」と眉を吊り上げる。

 「北風を縛り付けておくことなんて無理なのさ」と俺は椅子から立ち上がる。


「わかった。そういうことなら、こういうのはどう?

 先に5勝したほうの言うことをひとつ、なんでも聞くっていうのは?」


 「マジすか」と俺は光の速さで着席する。

 実をいうと昨日から、俺の頭の中は天の川のキス顔でいっぱいだった。


「ホントに、なんでも言うことを聞いてくれるんだな?」


「わたしに5回勝ったらね。いまはわたしのほうが1勝分リードしてるけど」


「昨日のお前の1勝分は考慮されて、俺が長年積み重ねてきた9840勝分は考慮されないのか」


「いいでしょう、そのくらい? 善人くん、ゲーム強いんだから」


「まあいいだろう。そのくらいはサービスしてやるよ」


「じゃあ、交渉成立ね! 善人くんは『いいスポーツ同好会』の部員で、これから毎日わたしとゲームで勝負するってことで!」

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