第4章 三大陸対抗武闘競技会 4-10. 予選トーナメント最終戦
マルグレーテがウィルへミナを連れて外出から帰って来てから、ガオ高等学舎への対策会議となった。
「 ふーん、ガオ高等学舎は明日、槍を持ち出してくるかも知れないんだって? 」
「 いや、そうと決まった訳じゃないが、今日、ソフィアがパムクのサラ・スマーナと会ったんだとさ。
彼女の話を聞いていて、そう思い当たったらしい 」
マルグレーテの質問に、ヒルダさんが事の次第を説明する。
「 槍を出すなら、何人ぐらいだと思う? 」
「 先ず2人、いや、3人が槍持ちになるだろうな 」
「 だけど、実戦では有効だと思うけど、槍って試合では却って扱い辛くない?
しなる穂先で魔石を貫くなんて芸当、そう簡単にはできないと思うけど 」
「 槍の使い道は、なにも刺突だけじゃないさ。横にぶん回すことだってできるぜ。
むしろ、そっちの方が怖い。しなるから、受け止めても穂先は追い駆けてくるからな 」
2人の話に、レジーナさんも加わってくる。
「 受け止めるにしても穂先から距離をとらないと駄目でしょうけど、剣じゃあそれは無理ですね 」
ジャンヌは、しなる柄の槍を受け止めた時を想定しているのだろう。
皆がそれぞれ、ガオへの対策を考えているのだ。
「 クローディアさんがメリッサ・チャオの剣技には、ル・ブレ師匠やメリン・ライボルト師に共通するものがあると言ってました。
仮にガオ高等学舎の武術師範がその関係の人物なら、全員が槍を使えることも考えられます 」
「 ソフィアやウィルへミナも使えるのか? 」
「 私が腕を故障した原因もそれですから 」
ミーナが膨れっ面でそう答えると、皆、苦笑いしながら、まあまあ、と彼女をなだめている。
「 槍を使えるのが、ソフィアとミーナ、それとレジーナ姉か?私とジャンヌは使えないし、ヒルダ姉もちょっと怪しいから、槍3本でいく? 」
「 いや、相手と同じことをしても、みすみす相手の土俵の上にあがるようなもんだ。
こういう戦法はどうだろう? 」
ヒルダさんが、皆に耳を貸せと言って、彼女の考える戦法を話し始めた。
翌日、三武会、女子トーナメント最終戦は、コロシアム風の中央闘技場で行われる。
抽選会で観戦席から見てはいたが、競技フィールドに降りると、また、違って意味で闘技場の大きさを思い知らされる。
これまでの予選闘技場と比べて観戦席が広い分、壁に囲まれているような圧迫感あった。
これから試合をする私たちは第二試合。
Aブロックでは既に、フランコ学院が決勝リーグ出場を決めていた。
対面にはガオ高等学舎の選手たちが既に整列している。
そこへ、我が、セント・アンドリュース学院も並行して整列する。
昨日、私たちは、メルグレーテを下げて、ヒルダさんを大将に立てることで結論を見た。
『 それではこれより、予選トーナメント最終戦第二試合を始めます 』
闘技場にアナウンスが響き渡る。
「 それでは、両チームとも、礼っ! 」
審判の掛声と共に礼をして、スタート地点に戻っていく両校。
予想通り、ガオは3人が槍持ち、そして残りの2人は段ビラの二刀流だ。
それに対抗する此方の獲物は、棍だ!
棍とはつまり、人の身長程ある長い棍棒。
槍と違って、棍ならヒルダさんも扱える。
4人が棍を持ち、そして、段ビラを構えたジャンヌが後衛に控える。
いつものレイピアでないのは、それだと槍の穂先を受け止められないからだ。
『 第1ゲーム開始! 』
試合開始の合図と共に、先頭の3人が三角形に陣形を組み、その後ろをヒルダさん、ジャンヌと続く。
対するガオも、先頭の槍持ち2人が横並び、その後ろに大将のメリッサ・チャオ、段ビラの二刀流が後に続く陣形だ。
早速、ミーナ、レジーナさん、私の3人の持つ棍が、相手の槍と激突、数で此方が押されているのを見かね、大将自ら応援に駆け付ける。
気持ちは解かるけど、少し不用意だと思うよ!
私たち3人が、大将に目がけて躍りかかる。
先頭の槍持ち2人は大将を護るでもなく、両脇に避けて私たちを躱した。
3人の棍に対して独りで立ち回るメリッサ・チャオ!
柄のしなりを利用して、穂先を回しながら刺突を繰り出すと思えば、鞭のように、穂先全体で胴を薙いでくる。
どんだけ槍の扱いに慣れてんだよ、この人は?!
不意に、横合から槍がぶん回されてきた!
しまった!大将を囮にして此方に隙を作ったか?!
私とミーナは、両サイドから振り回されてくる槍を避けて後方へ跳ぶが、2本の槍は、残ったレジーナさんを目がけて襲い掛かる。
中央を持って回転させ、槍を弾いていく彼女の棍に、メリッサの槍が突き入れられ、穂先を棍に合わせて回転させて、その動きを封じようとした。
それと同時に、私とミーナは、横を向いている2人の槍使いに棍を突き入れる。
虎視眈々とレジーナさんの魔石を狙っていた2人は、咄嗟のことに、横っ飛びでそれを凌ぐ。
槍持ち3人とも数歩下がって両チームが睨み合う形になった。
棍でも槍と打ち合えている。
後は、段ビラの二刀流がどう出てくるかだ!?
再び、両チームの前衛は接近して、打ち合いを始める。
槍の柄を棍で受け止めると、穂先がしなって目の前を掠めていった。
剣で受けていたら、肩か側頭部に一撃を喰らっている!?
そして、その時、視界の端に映るのは、私たちの両脇をすり抜けていく2人の段ビラ二刀流!?




