第3章 チーム・アルフォンソ 3-5. 一理に達すれば万法に通ず
第1ゲームが終了して休憩に入る。
互いに自陣のベンチに戻って、タオルで汗を拭う。
私もミーナも、肩で息をしていた。
だが、相手方は、未だ息も乱していない。
ジャンヌは強い。
だけど、ミーナも負けていない。
彼女の連撃に耐えられるのだから、かなりの技量だといえるだろう。
マルグレーテも腕は立つが、やはり、司令塔タイプのようだ。
彼女の立てる戦術とジャンヌの突発対応力が合わさって、相手チームの強みになっている。
解説が、ジャンヌの動きにギミックがあると言ったのは、グレーテの作戦を寸分違わず彼女が遂行できているからだろう。
さすがは公女殿下、並みの戦術では太刀打ちできない。
ならば、意外性にかける!!
「 ミーナ!ル・ブレ師匠の教えを覚えてる? 」
「 忘れようったって忘れるもんですか!? 」
「 じゃあ、次は、回すからね! 」
「 はい! 」
試合再開の合図と同時に、私たちは、ジャンヌとグレーテを分断するように突っ込んでいく。
「 ソフィアのアイデアもーらい! 」
マルグレーテの呟き。
彼女たちは一歩後ろに跳んで私たちの攻撃を避けたと見せかけ、その実、踏み止まって反転。
その結果、ジャンヌが私に、マルグレーテにミーナが対峙して、私たちは背中合わせに。
狙ったかのように、ジャンヌとグレーテが同時に連撃を放ってくる。
相手からの攻撃で、此方は防戦に一方に。
先程、自らが立てた戦術に嵌った形!?
だが、実は、それが狙い!!
私とミーナは、一瞬、背後で手を握った。
それと同時に、右にステップ!
相手の連撃から逃れるような動きだが、手をつないでいるから二人はその場から離れてはいかない。
繋いだ手を中心にして遠心力で、互いの相手を得物で薙ぎ払う。
単なる戦いなら、此処で、2人とも斬られていたかも知れない。
繋いだ手が、此方の動きを制限していたから。
だが、これは試合だ。
狙うのは相手の胸に輝く魔石なのだから!
私たちの魔石を眼で追い駆けるジャンヌとグレーテに隙ができる。
その瞬間を狙って、私たちは手を離した。
遠心力でついた勢いが、私をマルグレーテに、ミーナをジャンヌにぶつけていく。
一瞬の駆け引き!
私は、すれ違いざまにグレーテの魔石を斬撃で叩き割る。
そして、その場で、ぐっと脚に力を溜めて止まり、宙でトンボを切りながら後方にジャンプ、そして、ミーナの背後に着地。
そして、振り向きざまに彼女の脇の下から腕を伸ばし、ミーナの魔石を割った直後で動きが止まっているジャンヌに刺突をかます。
「 ジャンヌ!危ない!! 」
グレーテの叫び!
砕け散る魔石。
茫然自失のジャンヌ。
一瞬の静寂。
咄嗟のことで、観客は何が起こったのか解からない。
『 試合終了ぉぉぉっ!
勝者は、ウィルへミナ・アルフォンソ - ソフィア・パルトロウ・ペアーです! 』
突然のアナウンスに、訓練場に割れんばかりの歓声が響き渡る。
『 いや~、アルフォンソ – パルトロペアーの見事な作戦勝ちでしたね、ウルヴズさん!? 』
『 そうですね。
ですが、今回、作戦が成功した背景には、対戦相手の性格を良く理解していたと云うことも上げられると思います 』
『 ほう、なるほど、なるほど 』
『 マルグレーテ・アルフォンソ選手は、1ゲーム目にパルトロウ選手が使った戦術を拝借して使おうとしました。
実はそれは、使おうとしてではなく、使うよう仕向けられていた訳ですね。
策士の策施策に嵌る、といえるでしょう。
一方、シューベルト選手は、ウィルへミナ選手の魔石を割った直後の一瞬の隙を突かれました。
勝って兜の緒を締めるということを怠っていた結果ですね。
そういったパーソナリティーの特徴に勝機があると、アルフォンソ – ポワソンペアーは考えたのでしょう 』
誰なんだ、この解説は?
すごく詳しく観察されているんだけど!?
ま、勝ったからいいんだけどね。
「 やったね、ミーナ!
うん?ミーナ? 」
ウィルへミナは、試合に勝ったというのに、しかめっ面でぶつくさいっている。
「 ううぅ~、またしても、ジャンヌにやられてしまいました 」
なんだ、そんなことか。
「 ミーナ、勝負は時の運だよ 」
「 そ、そうですが、私には、運が一向に向いてきませんわ?! 」
「 焦らない。
試合は勝ったんだし。
ミーナも、もう少しのところだったんでしょう?ジャンヌの魔石割るの?
次は、一本獲れるよ 」
「 ああ、ソフィアぁ~! 」
よしよしとウィルへミナの頭を撫でてやる。
どうやら私は、妹属性に好かれるみたいだ。
「 いや~、やられちゃったね。
第二ゲームが始まって早々とは畏れ入ったよ 」
頭を掻きながらマルグレーテが近づいて来る。
「 今日のところは負けておいてやるが、直ぐに再戦するからな! 」
ジャンヌ!あんた、どんだけ負けず嫌いなんだよ!?




