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44話 月虹のアリア

 ミサイルは次々と巨竜にうち込まれ爆炎は吹き上がる。

 されど巨竜はあれだけの爆炎の中でも無傷。その巨体が崩れる様子はない。

 だが、さすがにその衝撃をくぐっては進めないようで、その場にくぎづけになっている。

 そんな中、頭につけたインカムから通信がきた。 


『状況はどうだアリアくん』


 この艦隊砲撃の指揮をとっている小沢さんからだった。

 オレはそれに応える。


 「うまく竜を足止めできています。もうしばらくそのままお願いします」


 『言っておくが、これは最後の大放出だ。前の東京湾襲撃でもだいぶミサイルを消費したからな。再びの斉射はないと思ってほしい』


 「大丈夫ですよ。いまが勝負時だと月がいってます」


 綺麗に輝く三日月をあおぎながら端末機をとりだした。

 それに記録してあるのは齢一万を越える祖神さまが組み上げた術式をも越える、世界の深奥にいたる(ことわり)の方程式。

 アリアの世界では永劫に計算を重ねなければたどり着けないといわれた領域だそうだが、多湖野博士はスパコンでちょちょいとやってしまった。


 「多湖野博士、使わせていただきます」


 そこに記録した術式の形に魔力を構成する。

 まるで世界そのものを創造するような、そんな感覚をおぼえる。

 だがそれだけに魔力消費はすさまじく、体の魔力を根こそぎ持っていかれる感覚がした。


 「…………ぐっ。すごく魔力が………っ! もし、これでまた仕留められなかったら、本当に命が危ない…………っ!」


 実はオレの使っている魔法の魔力は、たおした一つ目獣(モンスター)の体を分解したものから得ているのだ。

 さらに魔法の世界の住人であるアリアは、生命維持にも魔力を使っている。

 つまり、あの竜をたおして魔力を得られなかったら命が危うい。

 この大魔法は文字通り命を削っての大勝負だ。


 「再びの勝負ができないのはこっちも同じか。もし失敗したら………」


 ……………いや、いまオレは世界を取り戻す戦いをしてんだ。


 だったら、失敗した時のことなんて考えるべきじゃない。


 なにがなんでもこの大勝負を勝ち抜いて、みんなでハッピーエンドをむかえる。


 最終回の魔法少女になりきれ!


 愛も友情も世界中の誰もの祈りも、みんなオレの力になると信じろ!!


 「気高き月光よ。その淡き光を魔法の虹に変えて天に満ちなさい。私は朝を待つ子供たちに夜明けを告げる鳥となりましょう」


 最終回のクレッセント・アリアのセリフで集中を高める。

 魔力は天に虹色のオーロラになるほどに高まった。

 準備完了。インカムで小沢さんに連絡をとる。


 「小沢さん、準備ができました。ミサイルをとめてください」


 『了解だ。いいポエムだった。われわれも君の告げる朝を待っているよ』


 ゲフンゲフン! げはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!

 聞いていたのかよさっきのセリフ!

 そういや、インカムつけっぱなしだった。

 とんだ夢見る夢子ちゃんになってしまったぜ!


 

 やがてミサイルはとまる。

 ミサイルの足止めから解放された竜は、こちらに向かって巨大な単眼でひと睨み。

 あの巨体が嘘のように飛翔し、こちらに向かってくる。


 「もう一度勝負だ。エルフの祖神!」


 みるみる近づくその巨体。

 オレは魔法を巨大な槍に変え迎え撃つ。

 文字通り巨神殺しの大槍だ。

 それはお前の体を構成している術式よりなお深く真理にある!

 接触――――



 ―――――ザグゥゥゥゥゥッ



 通った! 巨槍一閃。

 真っすぐ巨竜を貫いた槍は、そのまま巨竜の体を構成している術式を分解していく。

 急速にその存在を否定され、巨竜の体は薄くなり消滅していく。


 『うっく……巫女よ。これは? なぜそなたが一万の齢を越える我をしのぐ術式を構成できる!?』


 『この世界の演算の力ですよ。魔法は使えなくとも、この世界の人間は”猿”などとあなどれるものではありません』


 完全に竜の体は消滅し、その存在はこの空中にあとかたもない。

 されどオレは空中に投げだされ、さっきまでオレの体を空中に固定していた風も霧散してしまった。

 つまり重力にひかれて墜落していく。

 ヤバイ! いそいで風を集めないと死んでしまう!



 

 ―――ドサァッ


 落下の直前、どうにか風を集めてクッションにし、墜落死をまぬがれた。

 だが衝撃はやはり大きく、体を動かせない。でも――――


 「はっ………はははははは……………っ! やった。やりました! 小沢さん、わかりますか?」


 インカムに自慢げに叫ぶ。


 『観測が確認した。見事だアリアくん。こちらはお祭り騒ぎだ』


 インカムごしに小沢さんの背後で歓声が聞こえた。


 『だがな。あちこちに確認をとってみたが、世界中にいる災害獣はいまだ消滅していないそうだ。君の話では、アレを倒せば災害獣は消滅するのではなかったか?』


 「でしょうね。竜はあくまで鎧。本体はいまだ健在です」


 そんなオレの言葉に応えるように長身の人影ひとつ。いつの間にかオレに近づいていた。

 それはラスボスのエルフの祖神。

 やはり健在だったか。

 あの槍はうつろな存在の魔法生物を消すためのもので、実体のあるものは消せないからな。

 オレは巫女エルフのふりをして皮肉を言ってやる。


 『おはようございます祖神さま。朝の参拝の時間ではありますが、いまだ起きれません』


 相変わらず不気味な一つ目の仮面をかぶって表情はわからない。

 されどヤツの憎悪は感じる。


 『やってくれたの。おかげで集めた魔力が霧散してしまったわ。これでは我の帰還はかなわぬ』


 ざまみろ。

 どうにか苦労してようやくここまでこぎ着けた。


 さぁアリア。ヤツの魔力を底がつくまで消耗させてやったぜ。

 お前の望み通りの状況をつくった。

 あとはお前の勝負だ。





多分、今年中に最終回になるとおもいます。

最後まで応援よろしくお願いします。

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