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42話 巨竜咆吼

 ――――――ドサリッ


 「あうっ!」


 …………………生きている?

 五体投地に投げ出され、体は指一本動かせないほどに痺れている。


 けど、命はギリギリ残っている。

 見上げると巨竜はそれ以上のことはしようとせず、威容をたたえてオレを見下ろしている。


 見逃したのか?

 …………………いや、目的はコレか!


 懐にある人形。

 ヤツはこれがなければ元の世界に帰ることはできない。

 だからオレにトドメを刺すことはできない。

 けど、体が動かないんじゃ………………





 「第一から第六の歩兵団突入! 任務に従いアリアくんの防衛につけ! 残っている車両もありったけで竜の前に出ろ!」


 大きな号令が夜空に響いた。

 それと同時に自衛隊の部隊がライフルを乱射しながら一斉に突入してきた。


 無論、それが通用するはずもない。

 巨大な顎にまとめて「バクウッ!」と喰われた。


 されどそんな犠牲もかえりみず、生還を望まず立ち向かい、次々に突入しては喰われていく。


 駆ける陸自の勇士。響くライフル音。とどろく雷砲。揺るがぬ肉の壁。

 巨竜の暴虐。散る華の命。

 ……………伝説のバンザイ突撃? 


 「いまここで彼女を失えば人類はおわりだ! 肉の壁となって彼女を………希望を守れ!」 


 「臆するな! 進めーーー!!!」

 


 (ミンナヤメテ………………)


 あまりに鮮烈。あまりに壮烈。

 たかく遠く叫びながら喰われゆく無数の隊員の姿に、動かない口で叫んだ。


 ――――――「アリアくん、無事か!?」

 

 ふいに誰かに抱え上げられ、ダッシュでその場から離脱させられた。

 それは綾野だった。

 まさか情報官のヤツがこんな激戦の前線にまで出てくるとは。無茶をする。


 コマンドポストまで運ばれたオレは介抱され、どうにかしゃべることが出来るまで回復した。

 しかし依然、体は動かないままだ。

 

 「体が………動きません。なんとか………回復するまで…………」


 「わかった。一時ここを離れよう。狭間郡長、おねがいします」


 「了解だ。ここは自分らの戦闘団がひきうける。綾野情報官、車両でアリアさんをヘリの発着場まで運んでくれ。そこで待機しているヘリで離脱だ。あとを頼んだぞ」


 離脱?

 そんなことをすれば、いま特攻しているあの自衛隊員は………ッ! 


 「待って……ください! 体は動かなくても………ささえてくれるなら魔法は使えます。私を竜の所まで連れていってください。切り札を使います」


 「ダメだ。それで失敗したら本当にもうあとがない。とにかく体を回復してから事にのぞんでくれ」


 狭間郡長は振り返り、背後にいる隊員に命令を出す。


 「彼女を離脱させるのに今少し時間が必要だ。すまんが君らも出動してくれ」


 その命のもと、彼らは臆することなく一糸乱れぬ統率で出動する。

 されどオレは巨竜にいどんだ彼らの仲間の運命を見ている。

 その背中はひどく悲しいものに見えた。


 「本当にいいんですか? このまま行かせて」


 「何がだ? 任務だ。皆、覚悟をもって事にのぞんでいる」


 「ですが足止めする隊員の人たち、多分みんな死にますよ。あいつは私にしかどうにも出来ません。やはり私にやらせてください」


 「ダメだ。君を守ることは我らが閣下より承った名誉ある任務だ。君が何を言おうと、今の状態で君を戦場に戻すことはできない」


 「部下の命を散らしても?」


 「そうだ。我々は君を守るために、この身を盾とし命を賭ける。君がこの絶望的な獣災害を終息させる鍵である以上、君を勝算の低い戦いに行かせることは絶対にしない」


 その拒絶はまるで巌のよう。

 たぶんオレが離脱したあと、この人も部下に続くつもりだ。


 「嬉しくありませんね。私のために死んでもらった所で、私はどうすればいいんです?」


 「感謝など求めんよ。忘れてくれてもいい。ただあの元凶を倒し、世界を救ってくれるならな」


 あまりに迷いのない瞳でそんなことを言う。

 たとえ世界に平和がもどろうと、この人達はそこにはいないのだ。

 彼はふいに優しげに微笑んだ。


 「なに、そう割の悪い任務じゃないさ。先に逝った者達はもっと理不尽で絶望的な任務にも、すすんで赴き倒れていってくれた。我々が死んだあとにも国と人類の歴史は続くというのならそれでいい。散った者散りゆく者誰もが報われるさ」







 結局、有無を言わせず車に乗せられ離脱させられた。

 後にひびく戦場の音に後ろ髪をひかれるような気持ちになった。


 空気を大きく裂くような竜の咆吼。

 鳴り止まぬ銃撃音と爆発音。


 されど銃撃音は次第に小さくなっていく。

 窓からいつまでも後ろを見るオレに、運転をしている綾野は言う。


 「アリアくん。いまは狭間郡長らのことは考えるのはよせ。彼らは国防の花道を歩いたんだ。そう思っておくんだ」


 国防の花道か…………

 だったら魔法少女の花道は?


 


 「……………そうですか。はい。急ぎます」


 隣の綾野は運転をしながらどこからか来た連絡をうけている。

 連絡を終えた綾野は神妙な顔でオレに言った。


 「アリアくん。足止めをした狭間郡長の戦闘団は壊滅した。竜は現在こちらに向かって猛追撃をかけているそうだ。いそぐぞ」


 やはりか。

 わかりきった結果に、心に重いものが沈むような感覚をおぼえる。


 やがて整地されヘリの発着場になった一画に車は到着した。

 オレ達は車からおりると、そこで待っているヘリへと駆け寄る。

 されどオレはまだ体がうまく動かせず、モタついてしまう。


 「すぐに乗ってくれ。追っ手がくる」


 綾野がそう言ったときだ。

 背後から地響きのような音が聞こえてきた。


 それは次第に大きくなり、相当のスピードで迫ってきている。

 振り返ると、はるか先に小山のような竜の姿がみえる!


 「くっアリアくん、いそげ!」


 綾野はオレを抱えてヘリに乗せた。

 だが自分はそれには乗らず、車に引き返していく。


 「綾野さん、ヘリに乗らないつもりですか。これからどうするつもりです?」


 ヤツは車の前で立ち止まり、オレに振り向いた。

 その顔は今まで見たことのないような笑顔だった。


 「東京(ここ)に残してきた家族に逢ってくるよ。アリアくん、あとをよろしく」


 「家族? こんなときに何を………」


 綾野はそれ以上なにも言わず車に乗り急旋回させると、もと来た道を猛スピードで戻っていった。


 ヘリが離陸してしばらくしたあとだ。

 何かが衝突するようなものすごい音がした。


 そしてふたたびの巨竜の咆吼も。




鬼滅に影響されすぎてどうしても鬱な展開になってしまいます。

このまま鬱な小説しか書けなくなったらどうしよう?

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