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41話 炎よりきこえし呪詛

 祖神のいる一点から紅蓮の炎柱(ほばしら)があがった。

 だが祖神の命の脈動はまるで弱まる気配はせず、変わらず炎の中にある。

 つまりこれで終わりじゃない。


 闇夜を照らす燃えさかる炎を睨んでいると、狭間郡長から通信がきた。

 オレは通信のインカムに応えながらも、炎から目を離すことはしない。

 

 「アリアくん、目標を撃破した。これで終わったのか?」


 「まだです。まだ撃破していません。祖神さまは無限の再生能力をもっています。注意を怠らず再攻撃の準備をして…………うっ!?」


 戦慄を感じた。

 炎の中からなにかきこえる。

 炎の中から呪詛のようなエルフ語のひびきが聞こえてくる。


 (あれは…………まさか魔法の呪文詠唱? あの神が?)


 アリアの記憶によれば、ヤツが魔法を使うのに呪文や魔方陣などの補助を必要としたことはない。

 それほどにヤツは自然かつ造作なく魔法を使う。

 そのヤツが呪文を使い魔法を使用するなど、かつてヤツの巫女であったアリアですら未知のことのはずだ。


 「どうしたアリアくん」


 「炎から注意をそらさないでください。なにか…………」



 『キシャァァッァァァァァァァァ!!!!』



 ――――――――??!!!



 突如、地を揺るがすような咆吼が響き渡った。

 と同時、炎が炎柱となってオレに向かってきた。


 「うわぁぁぁ!!」


 ギリギリ避けたものの、それは圧倒的質量があり、吹き飛ばされたオレは衝撃で動けなくなってしまった。



 ――――バギメギグジャアァァァ!!!!



 何かが激しく潰れるような音が背後から聞こえた。

 イヤな予感に、動かない体で目だけをそこに向ける。


 「な……………ッ!」


 地上戦力部隊の中核がいた場所。

 そこは一面広がる惨劇になっていた。

 戦闘車両やロケット弾等武器類はすべて破壊されスクラップになっている。

 それを扱っていた数十人もの人間は消え、散らばる肉片だけが彼らのいたことを物語っていた。

 それだけのことがオレが倒れていたうちにすべて起こったのだ。

 そしてそれをもたらした巨大な脅威。



 ――――――巨竜。



 この世界のものではない、恐竜のような巨大な生物がそこにいた。

 ラノベ小説そのものに全身無数の銀のうろこに覆われている。

 ただ一点違うのは、それの目もまた巨大な一つ目だということだ。


 「先ほどの祖神さまの詠唱。それはコレを生み出すためのものかッ!」


 巨大な顎は何やらモグモグ動かしている。

 おそらくそこにいた人間をまとめて喰ったのだろう。

 

 「な、なんだアレは!? あんな巨大なものがいつの間に来た?!!」


 狭間郡長はインカムで驚愕そのままの声を送ってきたが、オレへの質問だろう。

 ふらつく体でなんとか立ち上がり、頭をふって意識を起こす。


 「おちついてください。アレも祖神さまの創った魔法生物です。とにかく本体の祖神さまをさがして………」


 ――――――――『我はここじゃ』


 !!?


 頭の中に直接に声を送ってきた。

 その意思の発信元をさぐると、そこにはあの巨竜。


 そうか! 祖神さまはあの巨竜の内。

 巨竜は祖神さま最大の創造魔法生物と同時に、祖神さまを守る鎧。

 魔法生物に物理攻撃はきかない以上、自衛隊は一方的に蹂躙されるだけだ!

 

  自衛隊戦闘団は巨竜が一暴れするたびに次々壊滅していく。

 それはその巨体であるにも関わらずあまりに素早く、撤退すらおぼつかない。


  空中のアパッチヘリ編隊は地上の友軍の退避を支援しようと果敢にバルカン、ミサイルを巨竜に浴びせかける。

 されど竜は重力の法則など関係ないというように、その巨体でヘリのある場所まで飛び上がる。

 巨体はうねり踊り、一機また一機となぎ払い、とうとうすべて撃墜してしまった。


 オレはどうにか自由になりつつある体でいつもの解呪(ディスペル)の術式を構成する。

 ただしいつもより念入りに。


 「アパッチが全滅………………ダメだ。やはりアレにも我々の攻撃は効かない。アリアくん、あの魔法生物もいつものように出来ないか?」


 「やります狭間郡長。巨大であろうと所詮は魔法生物。解呪します! 『幻想よ砕け去り夢にかえれ!』」


 全身全力でプラチナクレッセント・ロッドに解呪(ディスペル)の術をこめる。

 術式をまとったロッドは白く輝き、オレはそれを槍のように構える。

 狙うはただ一点。術の中心、巨大な単眼の瞳。


 ラビットシューズを全開にダッシュ!

 流星となって駆け抜ける。

 寸分たがわず巨竜の瞳の中心にロッドを突き立てた!

 だが………………


 ガッキィィィィン


 「き、きえない!? 術が通っていかない!?」


 巨竜を構成する魔法分子にオレの術が介入できない!

 それを構成している構造はあまりに高度で複雑。

 オレの本気ですらひとかけらも消すことはできなかった。


 全力の解呪(ディスペル)は逆流し、逆にオレの手にあるプラチナクレッセント・ロッドを消してしまった。

 呆然とするなか、頭にヤツの意思の言葉が響いた。


 『なにを勘違いしておる。我の本気の魔法。巫女ごときに消せるものではないわ!』


 ギョロリ巨竜に睨まれた。

 その怒りを感じた瞬間だ。



 ――――世界が白く染まった。



 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 ピシャァァァァァァァン!!!!!



 巨大な魔力の雷撃がオレを貫いた。


 圧倒的な魔力の奔流に手足をピクリとも動かすことはできない。


 なすがまま雷撃にさらされるだけだった。


 神の怒りの雷はオレの魔力を消していく。



 そしてオレ自身も――――


 

クレッセント・アリア死亡確認!

バッドENDォォォォォ!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 空也真朋先生の次回作にご期待下さい!!
[良い点] あっけない最期だったんですね ラブパワーがない魔法少女なんてこんなもんでしょうかね なんかロリ巨竜という単語が見えて興奮しました。
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