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30話 決着の東京湾海戦

  ◇ ◆ ◇

 旗艦ヘリ空母いずも艦橋


 突如一帯に発生した眩い光は、艦橋をパニックにした。


 「なんだこの光は!? 原因はわかるか!?」


 「発生源は我が艦です。艦上救難員が先ほど甲板で【M兵器】のオペレーターという民間人らしき少女と接触しています。おそらくこれが【M兵器】であると思われます」


 「これが、か。全艦に通達! 発光現象がおさまるまでその場で停船せよ。下手に動けば衝突事故が起きる。災害獣からの防衛操舵はこちらの許可をとって行うべし」


 「レーダー! 災害獣の動きはどうだ。この光は奴らに少しは効果があるのか?」


 「はっ! ………………なッ! こ、これはいったい!? どうなっている!?」


 「どうした? 報告は明確にせよ」


 「失礼いたしました。レーダー上で無数にあった災害獣のマークが消えていきます! ソナーでも敵影をとらえられません」


 「な、なに!? 哨戒機につなげ! そちらにアップリンクされたレーダーの情報はどうなっている? それはこちらのみの現象か確認するんだ!」


 「返答きました! 哨戒ヘリのレーダーにも敵影は数体をのこして消失しているとのことです!」







 やがて光が晴れた後。

 戦闘にわきたった海域は一変していた。

 そこには数体のクジラ型を残してはいるものの、海面を埋め尽くすほどの無数にいたサメ型は消失し穏やかな波間が広がっている。


 「…………なんてこった。本当にサメが消えている。あれだけ殺せなかったヤツラをどうやって?」 


 「ソナー! 海底深度はどうだ。反応はあるか? そちらに潜ったということはないのか?」


 「………………はい、反応ありません。レーダー、ソナー共に感知できず。本当にサメ型は全て消失したとしか思えません。 今この海域にいる災害獣は目視できる50メートル級のクジラ型だけです」



 ウワァァァァアァァァアァァァァ!!!!!!



 艦橋内にわれんばかりの歓声が響き渡った。


 「すごい! これがM兵器!」

 「これがあればもう災害獣もこわくない! 日本を、世界を取り戻せるんだ!」

 「まったく、凄ぇものが発明されたもんだぜ!」


 だが、喜ぶ彼らの頭上に厳しい喝が響いた。


 「諸君、静粛に! まだ作戦は終わっていない。この海域にはまだ敵性災害獣がいるのだぞ」


 小沢海将の一喝に艦橋内の歓声は恐縮してピタリと止んだ。

 輪島艦長は彼らを代表して謝罪した。


 「申し訳ありません小沢海将。さんざ苦しめられてきたヤツラがこうもきれいに消えたことに、どうしても抑えられなかったようでして」


 「うむ。他の艦にも浮ついた連中がいるかもしれん。通信、全艦艇につなげ」


 おそらくはどの船にも同じようにこの奇跡に感動し、警戒がおろそかになる者が出るだろう。

 ここで締めておかねば致命的なミスが起きかねない。

 小沢海将はそう危惧し、マイクをとった。


 「護衛作戦に従事する全戦闘員及び作業員に告ぐ。先ほどの現象に動揺せず冷静に任務にあたれ。護衛対象の艦船には警戒を怠らず、残ったクジラ型へも侮らず対処するよう。ただし火器の使用は今しばらく中断を継続せよ」


 緊張を取り戻し、再び旗艦として各護衛艦に指示をとばす。

 戦況がだいぶ楽になったことにより、移動、配備、警戒はスムーズに行われる。

 だが艦橋内の明るさに反し、小沢海将の思い悩むような雰囲気に輪島艦長は気がついた。


 「小沢海将、気分がすぐれないようですが、何か気がかりでも?」


 「うむ………これだけのものが開発されたのなら、なぜ今まで首都東京で使用されなかったのかが気になってな。秘匿されなければならないのは分かるが、あまりに国民、そして全世界への被害が大きい。それに今作戦では陛下閣下の命さえ危うかった」


 「たしかに妙ですな。海将のレベルまで知らされない機密なんてまずないでしょうに。それに、あの情報官のヘリから落ちてきた少女達も謎ですな。甲板にいる艦上救難員によれば彼女らがM兵器のオペレーターだそうですが」


 「艦上救難員に繋いでくれ。【M兵器】とはどのようなものか聞こう。それといまだクジラ型は残っているが、それの排除も可能なのかも聞かねばならん」


 「了解しました。しかし謎は多いものの、M兵器の効果はたしかなようです。これなら人類の未来にも希望はありそうですな」


 


 ◇ ◇ ◇


旗艦ヘリ空母いずも 甲板


 「残ったか。あれは広域解呪魔法じゃ無理みたいだな」


 広域魔法の集中が途切れ、気がつくとそこは凪ぎの海。

 海面を荒れ狂い跳ね回っていたサメは、一匹残らず消滅していた。

 ただ、十数体の50メートル級のクジラ型は健在だった。


 「あれらはより強固に構成して創られている。となると直接ぶっ叩いて壊すか」


 オレはプラチナクレッセント・ロッドを握り、軽く振り回して具合をたしかめた。

 すると、さっきまで『信じられない』といった顔で海を見ていた小柴が話しかけてきた。


 「あれを倒しに行くの? アリアちゃん」


 「うん。あとデカブツ十数体だし、軽く片付けて終わらす。これなら今日中に帰れそうだし」


 「帰させてくれるかなぁ。ここが終わっても、また次の場所へ行かされるんじゃない? あっちこっちの海でも苦戦してるみたいだし」


 うぐぅッありえる! あのブラックエリートの綾野ならば!

 と今度は、やはりさっきまで唖然と海を見ていた自衛隊員の人が詰め寄るように聞いてきた。


 「おい君達! いったい【M兵器】とは何だ? 艦橋の小沢海将から説明を求められているが、何と答えればいい?」


 そんなもん知ったことか。

 見たまんま『オレ達がキスしたらサメが壊滅した』とでも言えばいいだろう。


 「それに残ったクジラ型はどうする? あれらの排除は可能か?」


 「それならご心配なく。これから私が片付けてきます。私達が機動した【M兵器】に関しては、この”小柴さん”が詳しいので、どうぞ艦橋にお連れして偉い人に説明させてあげてください」


 「ええッアリアちゃん!? あたし知らないよ!」


 面倒な説明役を小柴に押しつけると、さっさとラビットシューズで跳ね飛び、空中へ舞った。

 オレの飛んでいる姿に、ちょっとしたパニックになった声が後から聞こえた。





 「プリズム・クレッセント・アーク!」


 誰も見てないし聞いてもいないが、必殺技っぽくロッドで突いて解呪(ディスペル)をクジラに叩きこむ。

 やっぱり【クレッセント・アリア】のバトルはこういうノリでやらないとね。

 しかし魔法擬似生物だと意識すると、これがいかに高度な魔法で創られたものであるかが良くわかる。真性の魔法使いらしいこのアリアの目には、その能力(ちから)がよく見えるのだ。



 構成認識 魔法回路への介入 実行開始 解呪



 プラチナクレッセント・ロッドで突いた一瞬でこれら全て行い、その存在を解きほぐす。

 クジラは爆散し無へと帰す。


 「ふう。下が海だと苦労も倍だな。あと11体か」


 クジラ一体を倒したときだ。

 綾野から怒鳴り声で通信がきた。


 『アリアくん、今、君は何をやった!? 一度にこれだけの災害獣を消失させる能力など私は聞いてないぞ! さっきの現象について説明しろ!』


 「インカムつけている相手に通信で怒鳴らないでください。それで会話を続けるなら、インカム海に捨てますよ」


『……………悪かった。先ほど災害獣を大量に消失させた現象について聞きたい。あれは君がやったんだな?』


 「ええ。さっき海に落ちたときに覚醒した能力(ちから)です。上手く説明できないし、さっき試してみるまで出来る確信がなかったんで黙っていました。別に問題はないでしょう。こちらが有利になったわけですし、ここの仕事も早く終わりそうだし」

 

 『大ありだ! 誰もが皆、あれが【M兵器】だと思ってしまったぞ! 海自空自の司令官にも、パシフィック・エースのやんごとない方々にも説明を求められているが不可能だ! 私だって知らないし、何も分からないのだからな!』


 「フフフいいザマです。人を東京湾などに無理矢理連れてきたうえに、兵器扱いした罰です。残ったヤツラはさっきの手じゃ消すことは出来ないので、直接消さねばなりませんから私は忙しいです。説明はそちらでがんばってください。では」


 『待て、アリアくん! 先に説明を…………ッ!』 プチッ。


 オレはインカムを切ると、それを海へポイッと捨てた。

 綾野以外の偉いやつらも連絡してくるだろうし、面倒なので戦闘中に海に落としたことにしよう。


 無理矢理させられている仕事だが、魔法擬似生物がうろついているのは面白くない。

 この感情はオレのものなのか、それともこの体の元の持ち主の彼女のものなのか。


 「今はこれを利用して魔法生物を消していくのが先か。水を操る魔法も思い浮かんだ。これを利用すればもっと楽にやれそうだ」


 オレは水上を滑走して、次のクジラに向かっていった。



 そして夕方になる頃

 全ての水棲一つ目獣(モンスター)を消滅させ、この海域に平穏を取り戻した。

 しかしこの大きすぎる戦果は、逆にオレの平穏をほど遠いものにしてしまった。





次回よりいよいよ黒幕との最終決戦にはいりますが、それを書くためにしばらく休みます。だいたい二週間くらい? 再開をお待ちください。

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