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27話 魔法少女決戦ダイヴ

 オレが軽く言った言葉はしばし場を凍りつかせた。

 しばらくして綾野が言った。 


 「どういうことだアリアくん。いったいどうするつもりだ?」


 「作戦も何も、私の能力で片っぱしから消していくしかないでしょう。とにかく一度戦ってみて、考えるのはそれからにしましょう」


 「…………君はあれらに対抗できるのだな?」


 「『勝算はある』とだけ言っておきます。安全策で端からチマチマやっていくんじゃ、船の大半は沈められるでしょうね」


 その時だ。再び通信士が声を荒げて報告した。


 「情報官、大変です! 【パシフィック・エース号】に50メートル級クジラ型が時速40ノーチカルマイルで接近しているそうです! ミサイル、魚雷の飽和攻撃を喰らわせるも損傷見受けられず。止めることも進路を変えることも出来ないそうです!」


 「な、なに!? …………いいだろう。君に賭けよう。操縦士(パイロット)、聞いての通りだ。エースに迫っている50メートル(クラス)の上空へヘリをまわしてくれ」


 「了解。ヘリをクジラ上空へまわします。ですが目標が高速で移動しているなら、それに合わせるのは困難ですよ」


 「ともかく追ってくれ。それを最優先で撃破してもらう。それと通信士。司令の小沢海将に要請。『ただいまより【M兵器】を使用する。パシフィック・エース号周囲の攻撃は一時中断を求む』だ」


 【M兵器】ってオレか? 本当に兵器扱いしてんのかよ!


 ヘリが移動した下には一際デカい豪華客船。

 そしてそれに真っ直ぐ高速で迫るクジラ型の一つ目獣(モンスター)がいた。

 だが、それに割って入るように巨大なヘリ空母の護衛艦が移動している。


 「うっ! あれは旗艦の【いずも】!? まさかあの進路は!?」


 その”まさか”をあの空母はやった。

 あえてクジラと正面衝突だ。

 


 


 ズゥン!!!!



 こちらにもその衝撃が伝わるような響く音がきこえ、ヘリ空母とクジラは衝突した。そしてそのまま力くらべをするように押し合っている。


 「旗艦が身を挺してパシフィック・エース号を守ったのか。無茶をする。だが動きがとまった。アリアくん、チャンスだ。まずあの個体から倒してくれ」


 「了解。しかしずいぶんあのイヤミなセレブ船を気にしてますね。家族でも乗ってます?」


 「いや。だがあれは任務として最重要な船だ。あれの名前は豪華客船【パシフィック・エース号】。日本中枢の要人方が多数乗っているのだ。ともかくあれを最優先に守り、対応策をとっている海上及び航空自衛隊の活動を助けてくれ」


 「了解。がんばってきます」


 相変わらずくだらないことをさせられるな。まったくヤレヤレだぜ。

 ヘリはゆっくり移動し、やがて例のクジラ型の真上へと位置を合わせた。


 「確認するが、あの災害獣の真上でいいんだな? 今なら【いずも】の上にもあわせられるが」


 「それはいい。そのまま攻撃した方が早いから。ハッチを開けて」


 何度も飛行しているのでパラシュートのことは聞かれない。

 オレがコスプレ衣装で現場に出ていられるのも、その能力を見込まれてのことだ。



「これよりハッチを開く。降下者以外は安全ベルトを装着せよ」


 操縦士の警告とともにハッチは開けられ、強い海風が吹き込んできた。

 ガラス越しではない、生で見る下の光景はまるで特撮のよう。


 「それじゃ行くわ」


 オレは魔法で武器を顕現させた。


 「あれ? 剣? いつもの【プラチナクレッセント・ロッド】じゃないの?」


 そう。小柴が言うとおり、オレが今回顕現した武器は小剣だった。


 「うん。コレを使う用があってね」


 「ふむ? まぁとにかく頼む。今は君だけが頼りだ」


 綾野は小柴を支えてそう言った。安全ベルトで固定されているにも関わらずそうしているのは、さっき落としたことがトラウマになっているのだろう。

 小柴、綾野、自衛隊員らに見守られながらハッチのへりに立つ。


 「アリアちゃん、がんばってね。それにしてもあたしってば何のために来たのか。足手まといになってばかりで何の役にもたってないね」


 「い~や、そんなことないよ”みちるちゃん”。これからすっごく役に立ってもらうんだから」


 オレは天使の笑顔で小柴に言った。


 「”みちるちゃん”? 何で【マジマギ】でのアリアちゃんの呼び方? それに役に立ってもらうって?」


 「ごめんね小柴。悪いけど巻きこむわ」


 オレは手に持った小剣で小柴が巻いている安全ベルトを切り裂いた。


 「え?」


 綾野の手から小柴を奪い、思いっきり引き寄せた。


 「アリアくん!? どういうつもりだ!」


 そして彼女を引っ張り、ハッチから飛び降りた。


 「うわあぁぁぁぁ!? また!?」


 巻き上がる風の中、オレ達は東京湾の空を舞った。




 いつもより強めに空気を集めて二人の揚力にする。

 強風に煽られ、小柴を抱えながら安定させて飛ぶのは苦労した。


 「あ、アリアちゃん、どうしてあたしを!?」


 「しゃべらないで、舌を噛むわよ。とりあえず綾野に頼まれていた用件を片付けるから」


 「え? それって…………うわぁぁぁぁぁ! まさか!?」


 風をあやつり、自由落下のスピードを抑えながら降下していく。

 ちょうど坂道を自転車でブレーキをかけながら下りていく要領だ。

 目標はヘリ空母と押し合っているクジラ型モンスター。


 「ちゃんと目を開けて見てなさい小柴。ビッグサイズの撃墜シーンなんてレアな光景見られるの、多分もうないんだから」


 オレは小剣をプラチナクレッセント・ロッドに変えた。

 そしてクジラに向かって突き出し、それを伸ばしていく。


 「や、やめてぇぇぇ!」


 クジラの巨大な一つ目がギョロリとこちらを向く。

 その様はまるで【マジマギ】に出てくるラスボスの【暗黒魔界破壊神】。

 実際はデカいだけの創られた魔法擬似生物だが。



 「消えなさい虚ろなる者よ。その存在を虚空へと帰します!」


 「いやぁぁぁぁぁ!!!」



 プラチナクレッセント・ロッドを突き出し、周囲の空気を霧散させて揚力を手放すと、落下するままにクジラへ向かって突撃した。






 


 


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