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24話 転落

 タイトルを変えたのは、この東京湾の決戦を書きたいためです。

 あまりにタイトルと内容が乖離してしまうので。

 当初はホラーっぽい話にするつもりだったのですが、魔法少女バトルものに変更です。

「日本の危機なんだ! もし東京湾にて政務を執っている方々が一度に消失してしまえば、日本は埋めようのない政治的空白がおこる! いや、それどころか国体の危機すらある!」


 「知らない知らない。東京のお偉いさんなら、こんな小娘に頼らず自分で何とかして」

 

 そんな遠出などしたら、何日も美織里ちゃんに会えなくなってしまうだろうが。

 まったく常識のない公僕め。


 「……………そうか。君に大義を諭すのは時間の無駄だったな。大島、鹿川両一等陸曹。プランCだ。あまり手荒にならんようにな」


 「わ? わわわっ!?」


 壁の奥に控えていたであろう二名の自衛官があらわれ、逃げ出す間も与えてくれずにオレの両腕をガッチリとった。

 さすが屈強の自衛官。まるで身動きがとれない!

 

 「なッ! 綾野! なんでお前が自衛隊員に命令できるの!?  いつから自衛隊は警視庁に使われるようになったの!?」


 「ああ、言ってなかったな。私は現在、警視庁を離れ【M兵器情報分析官】という内閣直属の情報官となっている。要は君の管理をまかされているというわけだ。君の護衛とサポートに自衛官を使う場合、その指揮は私が執る」


 「くそぅ人を兵器扱いして! 無理矢理連れていかれても絶対戦ってやんないからな!」


 「…………ふむ。君の説得役も必要か。君達、彼女を連れていくのはしばし待っててくれ」


 綾野は懐から携帯を取り出し、どこかと通話した。


 「すみません狭間群長。申し訳ありませんがもう一人民間人を連れて行くことは可能ですか? …………ええ、わかっています。ですが彼女の性格上、説得にあたる少女も必要でして………ありがとうございます。ご面倒をおかけいたします」


 綾野は携帯を懐に戻すと、周囲の女の子達をぐるりと見回した。

 そして小柴に目をとめた。


 「小柴さん。すまないが君もついてきてくれ。君にアリアくんの説得を頼みたい」


 「ええっ!? 説得もなにも、アリアちゃんに何をさせるのか知らないんですけど! それにどうしてあたし? それって裕香ちゃんの役じゃ? それか美織里の言うことなら何でもきくと思いますけど」


 「うむ………作戦の性質上、あまり小さな子を連れて行きたくはないんだ。君の身体能力は高いし、いざという時の行動もとれるだろう。現場では私と自衛官の指示に従ってくれ。命に関わるからね」


 いったい東京湾などに連れていって何をさせる気だ!





 「武運長久、護国鎮護。重責を担い長駆出撃する同朋に敬意を表し、敬礼!」


 隊長らしき自衛官が号令をかけると、整然とならぶ自衛隊員は一斉に敬礼をした。


 いつもと違う!

 なんなんだ、この物々しい見送りは!


 防衛本部に詰めている自衛隊員が総出で敬礼をしながらヘリに乗り込む隊員を見送りに出ている!

 オレは本能的に逃げだそうとジタバタするが、やはり両脇を隊員二人に押さえられたままヘリに詰めこまれてしまった。


 「あははっ。あたし達、すごく場違いだね」


 普段は気丈な小柴も、自衛隊員総出の敬礼の花道と、乗り込む最新鋭の軍用ヘリ、そして共に乗る精悍な自衛隊員にかなり腰が引けている。

 かつてない盛大な見送りを受けて、ヘリは離陸してしまった。

 


 ああ、休みが!





 さて、ヘリには当然、綾野も乗っている。

 この任務について何やら説明をしているが、オレは聞く気はない。

 仕事なんてする気はないからな!


 「前にも言ったと思うが、災害獣に水上で活動できた種類はいなかった。故に東京在住の避難民は大半が東京湾や流れる河川などに逃れている」


 「つーん」


 説明なんて聞きませーん。


 「が、その前提が崩れた。数時間前に現れた水棲の新型災害獣により逆に危機に陥ってしまったのだ」


 「つーん」


 「アリアちゃん。ちゃんと聞かないと」


 「つーん」



 「ポーン」という音と共に「イチイチマルキュウ東京湾上空到達。目標地点近シ。搭乗員ハ出撃ニ備エヨ」というアナウンスが流れた。

 早いな。日本最高速のヘリとは聞いていたが、もう東京か。


 「下を見たまえ。目視でもわかるだろう。あれが世界中の海に突然出現したのだ」


 言われた通り窓の外を見てみると、そこには東京湾アクアラインと巨大な港。それを越えて広がる広大な海があった。

 だがその海には何百何千ものサメ、そしてクジラが泳ぎ舞っていた。

 それらは通常のものより体長が大きく、そして頭部前面にはあの禍々しい巨大な一つ目がついていた。


 それらは全て海上に浮かんでいる船に攻撃をしかけ、転覆させたり船体に穴を開けたりしている。さらに水中に投げ出された人達は数秒でそれらに喰われている。

 海王類? 東京湾じゃなくて、間違ってグランド○インに来ているぞ!


 「ヒッ! あれはサメですか? それにあっちのデカいのはクジラ? まさかあんなものが現れるなんて! やっぱりあれも全部不死身なんですか?」


 「ああ。海自海保の武装はまるで効かない。加えて洋上は陸地以上に抵抗も逃走もできないし、船をひっくり返されればお終いだ。これらが先ほど全世界に一斉に現れたそうだ。やられたよ。洋上に避難している者たちは一斉に狩られるだろう。世界の人口は今日大きく減らす」


 「そんな……………ひどい!」


 「つーん」


 「上層部は何より日本の政治機能の防衛、及び東京湾上にいる人材を守ることを決定した。東京湾にいる者達が生存できれば、まだまだ日本は統一された行動ができる。アリアくん。協力してくれ!」


 「つーん。するわけないでしょ! 勝手にサカナのエサになれば良いんだわ」


 「まいったな。小柴さん、頼む」


 「は、はい。えーとアリアちゃん。さっき言われた通り日本の危機みたいだよ。お願いだから機嫌なおして自衛隊に協力して。正義の魔法少女でしょ!」


 「ふん! 小柴のお願いなんて聞く義理はないね。寝るから終わったら起こして」


 ポテン。「グウグウ」


 「アリアちゃん!」


 「まいったな。やはり君では無理か?」


 「いえ、ひとつだけ試してみたいことがあります。その…………みんな向こうを向いてこっちを見ないでくれます?」


 「ふむ? わかった。何をするかわからんが、やってみたまえ。全員視線を前へ!」


 何をするつもりだと、薄目を開けて見てみれば、小柴の顔がアップでせまってきた。


 なんかコイツ、本当にイケメンアイドルみたいな顔してんな。

 顔だけじゃなく雰囲気とかも小娘な年代の女の子を引きつけるものがある。


 女になっているせいで、それが良くわかるよ。

 美織里ちゃんが夢中になるのも無理はない…………


 いや! どうして小柴の顔がせまってくる!?


 ―――――と思ってたら、キスされた!?


 まさか裕香から聞いた説得方法をそのままやったの!?


 柔らかく熱い感触が唇からつたわってくる。

 

 やがてそれは甘く酔っ払ったような痺れに変わり、頭の中が気持ち良くなってきた。


 オレはその心地よい痺れに浸っていく―――――





 ――――――――――え?



 オレの中の何かが解放される?



 オレの体の中に【何かしらの力】を感じた。



 それが小柴のキスのトキメキで制御できなくなり、抑えきれなくなっている!



 それが何なのか分からない。

 だが、それはとてつもないピンチを引き起こした。



 パカン


 「ええ?」

 「うわぁぁぁぁぁ!!! ハッチが!?」


 オレの背後にあるヘリのハッチがいきなり開いてしまったのだ。

 そして悪いことに綾野も自衛官もこちらを見ていなかったため、オレ達の救助のための行動が遅れた。



 フワリ


 数秒後、オレと小柴の体は共に空中へ投げ出されてしまった。

 海からの強風で軽い体はクルクルまわる。



 「アリアくん! 小柴さん! くっ、何でいきなり開いた!?」


 綾野の声が遠く上空から聞こえる。

 空中に舞うオレと小柴。

 ともに海獣のうよめく東京湾へと真っ逆さまに落ちていった。


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