表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/46

23話 東京湾出動命令

 獣災害が起こってから、そしてオレがアリアになってから約半年ほどの月日が流れた。

 当初の『避難所の市民を運ぶ仕事だけ手伝う』なんて話はどこへやら。

 結局、それ以降も綾野の持ってくる様々な活動にかり出され、森欧町に駐留している自衛隊に協力して一つ目獣(モンスター)と戦う日々だ。

 

 さて、現在オレの与えられている居住区は森欧町の防衛本部に近い場所。

 そこの居住区に親父や美織里ちゃんらオレの元の家族や、小柴の家族、椎名姉妹なんかと一緒に暮らしている。



 「あ~クソッ! やっと東部開発地域の仕事が終わった! 綾野のやつめ。こき使いやがって! もうあいつの仕事は絶対受けない!」


 安全地帯を東部へとのばすための一つ目獣(モンスター)掃討作戦。

 自衛隊と共に長期出動からやっと帰ってきた。

 居住区の一画にある女の子のたまり場になっている場所。

 そこの美織里ちゃん、小柴、そして椎名三姉妹の顔を見てやっとホッとした。


 「ご苦労さまアリアちゃん。いつもそんなこと言ってるけど、なぜか毎回ちゃんと出動するよね。どうして?」


 「うぐうっ!」


 小柴め。どうしてそう触れられたくないことを聞く?


 「うぐう? どうしたのアリアちゃん。何かきかれたくない事情でもあるの?」


 あうぅっ美織里ちゃん。


 「あ、いや私の正義感が強すぎるせいというか、最後には犠牲になっている人達のことがどうしても思い浮かんでね。これも魔法少女のサガというか何というか」


 「さすがアリアちゃん! まさしく正義の魔法少女だね!」


 ホッ。ごまかせた。


 ――――と思ったのに、隅で妹たちといる裕香が言った。


 「アリアちゃんはキスすると素直に言うこときくよ。やっぱり女の子好きなんだね」


 なんでバラす!? 椎名裕香!

 こういう睦言は黙っているものだろう!

 たしかにキスされて妙に気持ち良くなった心のスキに、いつの間にか納得させられるけど!

 いつまでもそんな風に弄ばれたりしないからな!


 「ふぅん。じゃあ私もやってあげようか? アリアちゃんとならキスしてもいいし」


 「ゲフン!!! みみみみ、美織里ちゃん!?」


 なんていうことを!

 兄妹同士でそんな!

 いや今は血は繋がっていないけど、精神的にヤバイ!

 ああ、見つめ合うだけでヤバイ領域にはいっていくのがわかる!


 「美織里ちゃんダメ! アリアちゃんをカラダで言うことをきかせるのはお姉ちゃんの役目なんだからぁ!」


 お前は何を言っている!? 椎名姉妹の真ん中の睦美!

 隣には幼い妹の比奈子ちゃんもいるだろう!


 「ひなこもやるーっ! ひなこもアリアちゃんにチューしてたたかわせるー!」


 ああ! 比奈子ちゃんが悪いことを覚えちゃった! なんて教育に悪い!


 「あ、でも初めてはやっぱり未散ちゃんがいいな。ファーストキスってやっぱりこだわりたいし」


 ファーストじゃなきゃこだわんないの?!

 お兄ちゃんは許しませんよ! そんなふしだらな!


 「いや、やんないから! 女の子とは友達にはなっても、そういう関係にはならないから!」


 美織里ちゃんに意味ありげに見つめられて、小柴はあわてたように言った。

 ホッ。なんだやっていないのか。

 でも小柴め。美織里ちゃんにあんなにかまってもらっていいな。


 「う~んアリアちゃんも可愛くてカッコいいし。ちょっとしてみたい気もするなぁ」


 なんて百合ビッチな発言!

 くそうっ『小柴に負けたくない』なんて思っちまうじゃねぇか!



 「ふうっ」


 今まで黙って見ていた裕香が年に似合わないアンニュイなため息をついた。

 まだ中学一年生の年のはずだが、その様は一番大人に見える。


 その顔を見ると、キスされる時のことを思い出して気恥ずかしくなってしまう。

 説得されるたびにキスされるんで、けっこうな数してるんだよね。


 「漫画とかじゃ『誰かを守る戦い』ってカッコよく描かれるけどね。本物の誰かを守る戦いなんて地味で泥臭いものよ。アリアちゃんの戦いが可愛くてカッコイイのは、誰も守らない戦いだからよね」


 「それって私のことほめているの? けなしているの?」


 「どっちでもない。ただのグチよ。小さい子を世話して教育まで考えなきゃいけないと、色々考えちゃうのよ」


 裕香も大変だな。でも親を亡くしたとはいえ、姉妹みんな明るく生きているみたいで何よりだ。


 さて、これからみんなで何して遊ぼうと考えてた時だ。

 突然、隣の防衛本部からけたたましいサイレンが鳴り響いた。

 さらにさっき別れたばかり。当分は聞きたくないエリート野郎の声まで聞こえてきた。


 「アリアくん。すぐ出動だ! 早急に準備してくれたまえ!」


 綾野のクソ野郎! ブラックすぎだろう! 


 「はぁ? 今日から三日間は仕事を入れないはずでしょ! そのために大きな仕事を受けたんだから」


 「『緊急事態には出動を促す』とも言っておいたはずだ。すまないが休みは取り消しだ。どうしても君の力を借りねばならない事態がおこった」


 「いちおう聞いてやる。場所はどこ? 今日中に帰れる場所でしょうね」


 「無理だな。場所は東京湾。敵対対象の規模も大きいし、作戦地域も東京湾上広域にわたる。おそらくは当分帰ってくることはできないだろう」


 行くかバカ!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ