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21話 黒幕登場?

 ――――――夢をみた。


 オレはどこかも分からない、何も無い、ただ広大な空間の中にいる。

 自分の意思で手足は動かせず、ただ見るだけ聞くだけ。


 オレは何も無いその世界を迷いなく歩き続け、ようやくどこかにたどり着いた。

 人がいたのだ。


 背の高い女性で、妙におごそかな雰囲気を纏っており、そして奇妙な仮面をかぶっている。


 ――――――!???


 その仮面を見た時、軽く驚いた。

 それは中央に大きな単眼のある不気味なデザインの仮面。

 だがその単眼は、あの一つ目獣の眼とまったく同じ形をしていたのだ。


 そいつはぼんやり虚空を見つめ続け、オレが近づくまでまるでオレに気付く様子はなかった。

 やがてオレはそいつに近づくと勝手に跪き、口も勝手にしゃべり始めた。

 かつてのアリアに会っていた頃に聞いた、どこの国ともわからない意味不明の言語でだ。

 だが何故か今はその言語を理解することができる。



 「お久しゅうございます。祖神さま」


 すると向こうも同じ言語で返してきた。


 「――――おお! 巫女…………の意識か。だがどのように渡ってここに? ここは我らの故郷世界より遙かに離れた深層の果て。戻ること叶わぬ境界の狭間の底。意識のみとはいえ、とても来れるものではない」


 「私の本体はいま無魔法世界へとあります。ここは我らの故郷からは最果てでも、無魔法世界からは直近。ゆえにこのように意識を飛ばし、お目見えすること叶いましてございます」


 「ふむ? そこまでして何の用じゃ。余を追放した者らの手の者が」


 「誰しも苦渋の決断でありました! 最古の森の番人(エルフ)たる祖神さまを追放するなど。ですがあなた様のやろうとしたことはあまりに危険。アレをやめぬとあらば、追放せざるを得なかったのです!」


 「そんなことは言われんでもわかっておる! 質問に答えておらぬぞ。何故(なにゆえ)戻る事叶わぬ異世界に来てまで余に会いにきた? 用は何じゃ」


 「先見の術士らがそろって予言いたしました。『祖神さまが帰ってくる』と。『その後、計画の時間は再び動きだし【救済】の脅威は我らの世界隅々まで及ぶ』とのことです。故に二度と帰れぬこの異世界へやって参りました。祖神さまの帰還を阻止せんがため」


 「ほほっ。そのためにまさか禁断の異世界転移までするとはな。だがしかし、なんとも嬉しい予言よ。その通り! 余はやがて帰還する。あまりに容易くこの世界の(しし)は狩られてくれるのでな。この分では十年も先のことではあるまい」


 「………やはり! 現在、無魔法世界全域に使い魔らしき獣がそこの住人(すみびと)らを襲い喰らっております。形は向こうの世界の獣を模してありますが、術の技術は我らの世界のもの。あれは祖神さまの仕業で間違いありませんな?」


 「左様。ここは戻ること叶わぬ境界の狭間。だが異世界の無魔法世界にはごく近い場所にある。故に余はその世界に干渉できる。あれは余が放った使い。人を喰らい咀嚼し魔力へと変換する影の獣(ラルフラム)


 ――――――何だと!? こいつが元凶? ラスボスなのか!?


 「…………ずいぶんと力を増したようですね。どれだけこの世界の人間を喰らいました?」


 「ふふ……およそ20億2千といった所かの。それだけ喰らってもこの牢獄から出るだけの最大出力はまだ出せぬ。容易い狩りとはいえ、ほんに魔力のない(しし)とは効率悪いものよ」


 「それだけの人間を…………異世界の者とはいえ!」


 「あと30億といった所かの。それくらいの(しし)を喰らい魔力にかえればここを破ることができる。なつかしの故郷へ帰還することができるのじゃ」


 「…………帰って何をなさるおつもりです?」


 「無論、【救済】じゃ。余をこのような目にあわせた者ども、術者、国主、貴族、領民、みな愛をもち慈しんで救ってやろう。あまねく全世界の人間を種族問わず救おう」


 「【全人類救済計画】………ッ! まだアレを行うつもりですか!」


 「ああ。感情というものを持ってしまった今では、ただ祀られるだけでは我慢できなくなった。神らしいことをしたくてたまらない。止まらんぞ。余は」


 「祖神さま。その仮面をとって下さい! いえ、壊して下さい! あなた様に感情は危険すぎます。むしろそれは邪悪な意思をもたらすものかもしれません!」


 「そしてまた『人形に戻れ』と言うか。残念だがこれはもう外せんよ。感情というものは存外楽しいものでな。たとえ邪悪であろうと、この狭間へ追放されようと、もはや手放すことはできん」


 「祖神さま。では私はあなたのやろうとしていることを止めます。たとえ殺してでも! ………いえ、あなた様に『死』はありませんでしたね。では他の方法で」


 「ハハハッ。そなたが祖神である余の邪魔をするのか? 面白い試みだ。巫女よ。できるのか?」


 「祖神さま。たしかにあなた様は神の領域に住まう絶対の魔法使い。されど対抗する(すべ)は持ってまいりました」


 ヒュルリ


 一陣の風とともにオレは人形? のようなものを手にしていた。


 「ハハハッ。考えたな。やってみるが良い。そして敗れ、この世界の人間ことごとくを余が喰らい尽くした後にそなたも余の救済をうけるが良い。巫女よ。挑むがよい!」


 「ご免! その仮面を粉砕させて頂きます!」


 オレの周囲にはつの間にか無数の鬼火がゆらめいていた。

 そいて大いなる力が顕現し、仮面の女に迫る!

 壮大な魔法バトルがはじまった―――

 






 ―――――「………あ?」


 気がつくと、そこは車内だった。隣では親父が運転している。


 「よう、起きたかお嬢ちゃん。ずいぶん良い顔で眠ってたな」


 ……………夢?


 女同士で少年マンガみたいな会話とかバトルとかやっていたような?

 あの夢を引きずって、どうにもここがどこでオレは何をしているのか理解するのに脳が追いつけない。


 「親父…………いや、間宮さん」


 「まぁ俺のことは好きに呼べ。自分が東司だってんなら、別に『親父』と呼んだってかまわねぇよ」


 「信じるのか? その話」


 「さてな。が、お客さんの輸送でしばらくは仕事仲間になる間柄だ。余計な遠慮はナシにしとこうや」


 「そうか………おっと、早速こっちも仕事だ。獣が出たらしい。かたづけてくるから止まって待っててくれ親父」


 インカムから先行している装甲車両からの連絡がはいったのだ。前方に狼(タイプ)の集団が迫っているらしい。


 「あいよ。しっかり退治してくれよ」


 車が止まると、オレはロッドを顕現させて外へ出た。

 さて。ひとつ暴れるか。

 


 ―――――『仮面ヲ…………壊シテ…………』



 ……………………………?

 空耳?

 自分の声がどこからか?


 オレは頭をふり幻聴をふりはらうと、襲撃地点に向かって駆けだした。




ようやく黒幕っぽいのを創ることができました。(前回まで出来てなかったんですよ)

敵が強すぎて倒せそうもない問題も、分かりやすい弱点とか作って難易度下げましたし。

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