20話 アリアちゃんは仕事をしろ!
なんかタイトルと話の内容が合わなくなってきたので変更することにしました。本当はもっとホラーな話にするつもりだったのですが、上手くいかないので魔法少女アクションものにすることにしました。それに伴い二回目のタイトル変更をします。
オレは裕香に連れられ、しぶしぶ警備隊の本部長とやらが待つ会議室にきた。
だが、その本部長の顔を見た瞬間、踵を返してしまった。
「ちょっと! アリアちゃん、どこへ行くのよ! これから大事な話でしょ!」
「私にはとある才能があるわ。これから話をする人間が私に仕事をふる場合、どの程度の仕事なのかが分かる、という才能よ」
「ハァ?」
「だから話をきく前から、させられるのがラクな仕事か厄介な重労働か私には『におい』でわかるの!」
「ある意味すごい………でもナマケモノの才能っぽい?」
オレは本部長のオッサンを勢いよく指さして叫んだ。
「こいつは臭ぇッーー! サービス残業山盛りな大便のにおいがプンプンするぜーーーッ! こんな『う○こ』には出会ったことないほどにね! 当たりかしらオジサン?」
「やめて! アリアちゃんが『う○こ』とか言わないで!」
「もちろんアリアさんにはたくさん仕事をしていただかねばなりません。世界で唯一、あの不死身の害獣を倒せる人間ですからな」
認めた! 笑顔で言い腐った! やっぱ見かけ通り有能ブラックなおっさんだったよ!
「ほらぁ! 私帰るぅ!」
「ダメったらダメ! 本部長さんの話を聞くの!」
結局、裕香に引きとめられ、その本部長とやらの前に座らせられて話を聞くことになってしまった(渋々)。
裕香は本部長のオッサンの前だというのに、オレの腕をガッチリ組んで引っ付いている。
「T県県警警部及び当避難所警備本部本部長の滝沢です。アリアさん。此度は協力していただけるそうで実に感謝にたえません」
さっきの騒動などまるでなかったように話を進めるな。
この人、意外と大物かもしれん。
とにかく以後も仕事をさせられないよう、釘だけは刺しておかないと。
「ここに避難している人達を森欧町に運ぶ計画にだけは協力します。でも、それ以後は約束できないからそのつもりで」
「なるほど。森欧町の職員から貴女のことは伺っております。あの不死身の害獣に有効な手段をお持ちですが、あまり協力的ではない方だとか。聞いた通りの方ですな。まぁ、それ以後のことはそのときに話し合いましょう」
「その時なんてあると思ってほしくないんですけどね。それより私のことを聞いた職員ってのは綾野警視ですか?」
「ご存知でしたか。現在、地上唯一ともいえる安全地帯となった森欧町に、平穏をもたらしたのは貴女の力だとか」
あのエリートっぽいオッサンか。やれやれだぜ。
「では避難民移送計画について話しましょう。現在、当避難所にいる人間は1328名。これを森欧町へ安全に運ぶことが目標となります」
「どうやって? いくら魔物に無敵な私でも、移動しながらそんな数は守りきれません」
「移動は大型の車両などを使って行い、一気に駆け抜けます。そのためにそこまでの交通路の確保。まずは道路の状態を良好にする作業をいたします」
なるほど。今現在、どこの道路も一つ目獣に襲われた後の車なんかが残っていて、使えないものが多い。それを取り除いて道路を整備するという訳か。
そしてスピードにまかせて襲撃をふりきると。
「道路の整備は当職員が行いますが、アリアさんには害獣対策にそれについていってもらいたいのです」
「つまりその護衛ですね。わかりました。やりましょう(渋々)」
と、オレは一つ目獣について思い当たることがあったのを思い出した。ちょうど良いのでこのお偉いさんのおっさんに言っておこう。
「話は変わりますが、あの一つ目獣について前回の戦いで気がついたことがあります。どうもあれは生物ではないような気がします」
「ふむ? では何だと言うのですかな」
「この裕香のお父さんが私の武器を使ってゴリラ型に攻撃したときのことです。それは普通の動物のように血を流して倒れる、というのではなく、存在が消えていくように薄れていきました。あれは何らかのエネルギー体が動物の形をとっているように見えました」
「ふーむ? エネルギー体が動物の姿となり、動物そっくりに動き回り、人間を襲って食べる、と言うのですかな?」
そう返されては、たしかに変なことを言っているような気がしてきた。言うんじゃなかった。
「そう見えたというだけの話です。忘れてください」
「いえ、あの獣と実際に戦った方の話は貴重です。あの獣には生物の常識が通じません。なのでアリアさんの話も大きな参考となります。これからも気がついたことがあれば、遠慮無くおっしゃって下さい」
「話はこれで終了で良いですね。じゃ、準備ができたら呼んでください。待っていますから」
「待機中はこの椎名さんと同じ部屋にいてください。連絡ほか食事の手配なども彼女を通して行いますから」
くはっ! 裕香のヤツ、オレの監視になったのかよ! なんて権力の忠犬っぷり!
「アリアちゃん仲良くしましょ♡ 睦美と比奈子ともあそんでね」
そんなわけでオレもめでたく公権力に使われることとなった。
翌日は周辺の一つ目獣の掃討。オレや警備隊員の十数名が整備任務に引き抜かれている間の避難所への圧力を弱めるためのものだ。
その過程で、周辺に今だ生き残っている人達を発見したりもした。
駅ビルの内のおはぎマニアの連中なんかも助けた。あいつら、閉じ込められていたのか。全然気がつかなかった。
さらに翌日。さっそく沙田間市までの整備任務につくことになった。
まったくこき使われる事この上ないな。
だがそこでまた意外な人物と組まされることになった。
「よぉお嬢ちゃん。よろしくな」
「親父………じゃなくて間宮さん。どうして?」
「本職だからな。このあたりの道路は一通り知ってるんで、移送車両の運転は俺がつとめることになったのさ。そのためにこういった役割の運転は俺がやって、道の現在の状況を知っておくというわけよ」
親父との共同作業か。妙にくすぐったい気分だ。しかしあんなカミングアウトをしたあとで、何を話せば良いかわからないのも事実だ。
「いきなりで悪いけど、少し寝かせてもらうわ。昨日の仕事で疲れているのよね」
助手席に座るなりそう言った。
「おお寝ろ寝ろ。昨日はかなり勤労にはげんだそうじゃねぇか。ちっとはぐうたらな性分も直りゃ良いな」
親父は意味ありげに笑った。
…………オレが東司だって話を真に受けてくれるのか?
まぁ、とにかく一眠りしてからだ。親父に向き合うのはそれからにしよう。
道路整備任務の車両隊は出発した。




