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18話 大猿共との対決

 ガシャンッ


 デパートへ引き返し、またまた窓ガラスを破り中へ侵入。

 ちょうどそこは十数体ものオラウータン型と一体のゴリラ型の一つ目獣が警備員と対峙しているフロアであった。

 警備員側はかなり劣勢で、物陰に隠れながらなんとか頑張ってはいるが、全員がズダボロだ。


 さて、いきなり侵入してきたオレは、そいつら全員の注目の的。

 ならばお約束のアレをやらねばなるまい。

 銀のロッドをくるり回しポーズを決め、オリジナルの口上。


 「夜空に祈り響くとき、三日月の使者は地上に舞い降りる。地にはびこる魔物を倒さんがため【クレッセント・アリア】ここに推参!」


 キラーン


 「おっ………おい! お嬢ちゃん何やってんだ!? 猿が行くぞ! 早く逃げるんだ!」


 そこで戦っていた警備員は叫ぶ。

 その言葉通り、一つ目オラウータン共がおそいかかってきた。


 どうせなら『おろかな小娘め、死ねい!』とか相手もお決まりの口上を言ってくれたらいいのに。

 まぁ猿に様式美をもとめてもしょうがない。

 向かってくる猿を一息にロッドでなぎ払う。


 ボシュゥッ!! ボシュゥッ!! ボシュゥッ!!


 またまたいつも通り、ロッドの触れた猿から消えていく。


 「な、何だと!? いったいこれは…………?」


 ふふふふ気持ち良いな。警備員達の驚いている様が妙に気持ち良い。

 そういや、この中にあの姉妹の親父もいるのか。


 ボシュゥッ! ボシュゥッ!


 オラウータン型は全部消した。あとは一体だけいるゴリラ型のみ。

 ちょっとボスっぽい風格があったから、最後のシメに残しておいたのだ。

 やることは同じだけど大技っぽく倒すとしよう。


 「この【クレッセント・アリア】がいる限りお前達の好きにはさせないわ! 喰らいなさい! クレッセント・プリズム…………」


 ブゥンッ!


 「うわっ! 危ない!?」


 ゴリラはそこにあった応接セットの椅子を投げてきやがった!

 ギリギリで躱したものの、ゴリラはさらに机を振り上げ、オレ目がけて振り下ろした!


 「うわっ!? うわわわ!?」


 バキャァッ!!!


 これも何とかかわした。このアリアの体は妙に敏捷性が高いので助かった。

 その場から逃げ出し物陰に隠れたものの、ゴリラはソファーを振り回して威嚇している。


 あのゴリラ、道具を使いはじめた!

 オレのつくり出す武器は触れただけで一つ目獣(モンスター)を消す能力があるが、その他のものは消せない。普通に武器としての能力があるだけだ。

 だから向こうが道具を使い始めた以上、それを掻い潜って体に触れなければならないが。


 「まいったな。相手が舐めているうちにあの厄介そうなゴリラを消しておくべきだった」


 今まで楽勝だったから、相手にあんな知能があるとは思わなかった。

 これからは戦うとき【クレッセント・アリア】の演出だけじゃなく敵のことも考えよう。


 さて。オレが避難した場所だがそこには先客がいた。

 ここの警備員のヘルメットと防御ジャケットを纏ったガタイの良いオジサンだ。


 「お嬢ちゃんすごいな。聞いた話じゃ、あの一つ目野郎を殺す方法なんてないはずだが。どうやってやってんだい?」

 

 「え、え~と。適当に武器で叩いたら消える? みたいな?」


 一つ目獣を消している方法なんて聞かれてもこまる。

 そんな理屈はさっぱり分からないままやっているのだから。


 「つまりそれでぶっ叩けば、あのバケモノを消すことができるのか? なら俺に貸してくれないか。俺ならあの攻撃を耐えて近づくことができる。機動隊からコレも借りたしな」


 ジュラルミン盾を見せてそのオジサンは言う。

 ふむ、なるほど。ここらで他人に武器を使わせても同じような効果があるのか試しててみるのも良いか。

 

 「わかったわ。でもちょっと形を変えるわね」


 オレはロッドの先端部分を変化させて先をとがらせた。あと柄の部分も2.5メートルほどにして槍に変えた。これなら獣相手に原始的な戦いができる。


 「はい。これでやってみて」


 「…………驚いたな。いったいどうなっているんだ?」


 オジサンは渡した槍をシゲシゲと見ながら言った。


 「そういや、君の名前を聞いていなかったな。なんていうんだい?」


 「【クレッセント・アリア】よ。入ってくるとき名乗ったでしょう」


 「娘が好きなアニメの真似事かと思っちまった。オジサンは椎名考一。娘が三人もいてここで頑張らにゃいかんのよ。よかったら娘とも仲良くしてくれ」


 このオジサン、裕香や比奈子ちゃんの親父か。

 もうすでに知り合っているよ。


 「それじゃ行ってくる」


 オジサンは片手に槍、片手に盾を構えて出て行った。

 これでオジサンがゴリラを倒してしまったら、ボス攻略を一般の人に任せてしまったわけで。

 魔法少女としては何とも締まりのない………いや、考えないようにしておこう。


 ゴリラは出てきたオジサン目がけてソファーを振りおろす!

 オジサンはそれを盾でうけながら直進。


 「うわっ痛そう」


 オジサンはソファーでメチャクチャ殴られているが、盾で身を守りながら歩みを止めない。

 やがてゴリラのふところ近くまでたどり着くと、槍を突き出す!

 ゴリラはソファーを捨て、素手で掴みにいった!

 だが、やはり槍の方が速い。


 ズブリ


 「グオオオオオオオーーー!!!!!」


 槍はゴリラの腹を深々と貫き、ヤツは断末魔のような声をあげた。


 「消滅はしない………けど、効果はあったか」


 あれだけ深く槍が刺さっているのに、ゴリラからは血が出ない。

 だけど苦しみながら存在が希薄になってゆく。

 まるで消えていくように体が透明へと近づいていく。


 「…………なんだ? もう少しで、あの一つ目獣が何なのか分かる気がする」


 徐々に消えていくゴリラの姿に、何かを思い出すような感覚をおぼえた。



 「グウァオオオオオオ!!!!」

 「うあぁぁぁ!?」

 「うっ!? まずい!!」


 断末魔のあがきか、ゴリラはオジサンをつかみ上げ、高々と持ち上げた。

 「あれはヤバイ!」と見たオレは飛び出した。



 ボキバキギリギリグシャァァァァ!!!!



 「ぎゃああああああ!!!!」


 空中に持ち上げられたオジサンはその場で握り潰された。

 体は原型をとどめないほどに捻られ、血しぶきが辺りに飛び散る。

 オレのコスプレ衣装にも血が降りかかる。

 あまりに無残。その凄惨な光景は夢に出そうだ。


 されどオレはゴリラのふところに到着。

 その腹に刺さっている槍をつかんだ。



 ボシュゥゥゥ!!!

 ドサァッ



 瞬間ゴリラは消滅。

 オジサンの亡骸だけが音をたてて落ちてきた。


 「……………ゴメンな。お前らの親父さん、帰してやれなかったよ」


 無残にねじ曲がった椎名姉妹の親父をみて、ポツリと言った。




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