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17話 幼き声は魔法少女を呼ぶ

 「くそっ。下の方に行かないと窓は開かないか。中階のあたりから出よう」


 仕方なく階段へと向かって走ったのだが。

 なんと階下から人が大量に上ってきた!


 「えええ!? 何でみなさん一斉に上がってくるの!?」


 それは途切れる様子もなく、次々に上ってきて、あっという間に付近は人だらけになってしまった。


 「くそ! これじゃ降りられない!」

 

 流れる人混みにもみくちゃにされていると、そこに見知った人間がいるのを見つけた。

 椎名裕香と比奈子ちゃん。

 それともう一人。小学生くらいの妹らしき女の子がいる。

 三人は大量の荷物を持って、またどこかに避難にでも行くようないでたちだ。


 「おーい裕香。私だ。この人だかりはどうしたんだ? いったい下で何があったんだ?」


 彼女らはオレに気がつくと、近くに寄ってきた。


 「アリアちゃんたいへんなの! まものが! おとうさんが!」


 「裕香姉、この子と知り合いになったんだ。近くで見ても、やっぱりアリアちゃんにそっくり!」

 

 妹二人ははしゃいだり慌てたりで要領を得ないが、裕香は姉の貫禄か、さすがに冷静だった。

 

 「まずいことになったわ。モンスターが下の階に侵入してきたのよ」


 「ええ!! あんなに厳重に守っているのに? 外の壁もまだ破られていないのにどうして!?」


 「『猿型のモンスターが来た』といってたわ。壁を登ってくる厄介なヤツでね。それをどこからか知らない間に侵入させちゃったみたいなの」


 「ど、どうすんの!? それって、どうにかしなけりゃ皆殺しじゃ………」


 「今、お父さ…………中の警備の人が頑張っているわ。とにかく、どうにかできると信じるしかないわ」


 ふと気がつくと、窓の方から不安気なざわつきが漂いはじめた。中には悲鳴まであげる人もいる。まるで恐慌一歩手前だ。

 それを不審そうに見た裕香が聞いてきた。


 「あの人達、何を見ているの? 外の方で何かあったの?」


 「モンスターがここに大量に集ってきたんだ。そいつらは体当たりをカマして壁を壊しにかかっている」


 「な、なんですってぇ!? じゃあ、もしかしてここは………!」


 崩壊寸前だよ。


 このフロアの人口密度はますます上がり、キツくなってきている。

 かなり苦しくなってきたのに、まだまだ増える。

 唯一一つ目獣(モンスター)を倒せるオレが出ようにも、人混みが酷くて階段の方へは行けそうもない。

 そして外の方もだいぶヤバイ様子だ。

 窓際の悲鳴がだんだん大きくなり、今にも防御壁が崩れそうな様子が伝わってくる。

 

 ……………もうここの陥落は時間の問題かもしれない。

 となると、逃げる算段をたてておくか。

 親父と………あとついでにこの姉妹も何とか連れて行こう。






 ―――「アリアちゃん! お父さんをたすけて!」



 突然、幼い声が響いた。

 それは裕香が手を引いている比奈子ちゃんからだった。


 「比奈子!? やめなさい! お願いだからさわがないで!」


 「比奈ちゃん。あのね、あの子のはコスプレで本物のアリアちゃんじゃなくってね」


 姉の二人は必死に幼い妹をいさめようとしている。

 けれど、比奈子ちゃんはなおも叫ぶのをやめない。



 「おねがい! まほうでまものをたおして! アリアちゃん!」



 ――――――――――!



 ………………そうだったな。



 今、オレは魔法少女【クレッセント・アリア】だったんだよな。



 なら、行かなきゃな。



 魔法少女らしいことをしに。



 オレはしゃがんで、比奈子ちゃんの小さな手をとった。


 「わかったわ比奈子ちゃん。あなたに魔法の虹を見せてあげる」


 「アリアちゃん……!」


 比奈子ちゃんの頭をひとなでしてから立ち上がる。


 「離れてて。危ないわよ」


 プラチナクレッセント・ロッドを顕現させた。


 「え? すごいマジック! 何も無いところからいきなり現れた!」


 「タネなんてないからね。じゃ、行ってくる」


 ラビットシューズで飛び上がり、人の頭を踏み飛ばしながら窓へ。

 窓の前にきても勢いはゆるめず、一気に窓ガラスをたたき壊した。


 ガシャァン!


 ここってはめ殺しの窓ばかりだから、こうするしかなかったんだよね。


 「正気!? まさか!? やめなさい!」


 そんな言葉が聞こえたが、かまわずラビットシューズで跳躍し、壊した窓から外へ。


 ふわり


 魔法コスプレ衣装で増幅された空気圧をうけて空に浮く。


 さて、まずは外の方を楽にしておくか。

 空中で空気圧を徐々に落とし下へ下へ。

 三階ほどの高さに達した時、プラチナクレッセント・ロッドを空にかかげる。


 「プラチナクレッセント・ハンマー発動!」


 ロッドの先端部分をオレの体の二倍ほどもある超巨大槌(ビック・ハンマー)に変える。

 原作にはこんな技なんてないんだけどね。

 なんか別のアニメが混じっちゃった。


 あと見た目超重量ハンマーだけど中身はスッカスカ。

 別に重さとかいらないからね。


 そして一気にそれを振り下ろす!

 ハンマー地獄(ヘル)! ついでに天国(ヘヴン)



 「はああああああ! 土に還れぇぇぇぇ!」



 ボシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!



 そこにいた一つ目獣、数十体をまとめて消滅させた。

 ロッドを元に戻し、今さっきモンスターを消滅させて空白地帯になった地上に降り立つ。


 そして原作そのまま【クレッセント・アリア】固有のキメポーズ。

 ロッドを天に掲げ、もう片方の腕を腰にあててシャナリ。


 なびく金髪ポニテに輝く銀の錫杖(ロッド)

 原作ではバックが夜で、大きな三日月が輝いている。

 【クレッセント・アリア】が主役越えといわれるほど人気が高かったのも、このキメポーズの美しさからだ。



 ウオォォォォォォォ!!!!


 いきなり背後からすごい歓声があがった。

 見るとデパートにいる避難民のみなさんがこちらを見て、すごい応援だ。

 やれやれ。魔女っ子ショーじゃないのに。

 オレが言うことでもないが。


 それにそれに構っているヒマなどない。

 周囲のモンスターが、いきなり現れたオレを目がけて殺到してきたのだ。


 ふむ。数十体を一瞬で消し去っても怯みもしないか。

 なら、またまとめて片付けられるな。


 「ロンギヌスモード!」


 さらに次はロッドを十五メートルもの長柄状に変え、まとめてなぎ払う!


 ブルン! ブルン! ブルン!


 ボシュゥッ! ボシュゥッ! ボシュゥッ!


 ロッドの軌跡のあとに次々とモンスターは消滅していく。

 ロッドを振り回すこと数十回。

 モンスターの密度は大きく下がり、数はまばらとなった。

 これなら防御壁は破れまい。



 ウオオオオオオォォォォォ!!!!!

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!



 またまた背後から爆発的な歓声やら拍手やらが聞こえた。

 オレの応援はさらに熱狂したものになっている。

 防御壁の上でモンスターをいなしていた警備の人さえも、手を振っている。

 オレはそれに軽く手を振ると、ラビットシューズで全力跳躍。

 デパートへと舞い戻った。


 さて、次は中に侵入したヤツラだ。




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