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16話 モンスター侵入

 「はぁ? お嬢ちゃん、今なんて言った? 近すぎるせいか、妙な言葉に聞こえちまったみたいだ」


 こんなこと他の奴らに聞こえるように言えるか!

 仕方なくオレは親父をその場から引っ張り出した。

 最上階の人気のない廊下の片隅まで連れて行き、再度仕切り直だ。


 「だからオレは東司なの! アンタの息子! ナリはだいぶ変わっちまったが」


 親父はオレの全身を、頭のてっぺんからつま先まで穴が開くほど見た。

 そしてあきれたように首をふって言った。


 「なんだそのぶっ飛んだ【オレオレ詐欺】は。せめて人種と性別と年齢を東司に合わせてから言ってくれ。何がどうなれば、あのぐうたら息子が異国金髪の女の子になるってんだ?」


 ぐふうっ!

 親父の口から改めて言われると、自分があまりに遠くへ行っちまったことを実感するぜ。


 「どうしてこんなナリになったのか、何があったのかはオレにもわからねぇ。ただ、こうなった過程を初めっからそのまま言うぜ。オレは…………」


 オレはオレの身に起こった経緯をすべて説明した。

 この体の子は元々ホームレスだったこと。

 オレはその子にいつもメシをあげに通っていたこと。

 モンスターハザード起こった最初の日、オレは狼型の一つ目に襲われ死亡したこと。

 目が覚めて気がつくと、アリア(この子)になっていたこと。


 オヤジはオレの話を最後まで聞いてくれたが、やはりその返事はこのようなものであった。


 「とても信じられんな。いや、たしかにこんな世の中じゃ何が起こっても不思議はないが、いくら何でも嬢ちゃんが東司だと言われても………なぁ」


 …………まぁ、そうだよな。今のオレが『間宮東司だ』なんて言っても、そう反応するしかないよな。


 「悪かった。忘れてくれ。ああ、美織里ちゃんは無事だ。今も森欧町に元気にくらしているはずだ」


 いつまでも親父にこの姿を見られるのが嫌で、踵を返し足早にその場を離れた。

 ともかく、ここに来た目的は達成した。

 これだけの要塞になったデパートにいるなら親父も当分は平気そうだし、そろそろ帰るかな。



 ――――――???



 ふと、窓の外が妙に騒めいているような気がした。

 なので外を見てみる。と、そこには…………


 「うわっ! 何だこりゃ!?」


 いつの間にか外の一つ目獣は数を大きく増やし、防御壁を突き破らんとするほどに集ってきていたのだ。

 もしかしてここら一帯の一つ目獣が、ここを目指して集まってきたのか?


 車の上にガラクタを積み上げて作った防御壁は無事かと見てみれば、一つ目共の体当たりをくらってあちこちグラグラ揺れている。


 「ヤツラ、本格的に突破をはかるつもりか? もしあの防御壁が破られたら…………………地獄絵図だな」


 本当の本気でヤバイ。このままじゃ破られる。

 数を減らしに出るかと、オレは窓から外に出ようとした。

 だが――――


 「開けられない!? てか開閉するようには出来ていない!? はめ殺しの窓だ!」

 




 ◇ ◇ ◇


 百貨店避難所・警備本部


 「犠牲者が出ただと? その状況を詳しく報告せよ」


 「はい。いきなり数を増やした獣の群れに隊員があわて、さらに獣共が防御壁に体当たりをくらわせたことで壁が揺れ、上に乗っていた二名が転落してしまったとのことです」


 「そうか。殉職した彼らは悼もう。で、彼らの持ち場だった場所は大丈夫か? それにこの状況では従来の体制では守り切れまい?」


 「はい。防衛体制を強化して対応しています。二人が抜けた穴も予備をあてました。ですが、まずいですね。現在、予備を全て使った防御態勢に移行していますが、これが続けば隊員達には休息を取らせることが出来ません」


 「ちぃっ仕方ない。現在圧力のない裏手に問題が無ければ監視強化にとどめ、それを予備としよう。北側方面の小輔につなげ」


 「はっ! 防衛本部長よりの指揮連絡。北側小輔、現在の状況を簡潔に述べよ」


 だがオペレーターのこの問いに、向こうで返事を返す者はいない。ただ、沈黙の静寂があるだけだった。


 「……………北側小輔、どうした? 本部長からの緊急だ。即時応答せよ! …………おかしいです。次席にも連絡してみましたが、誰も応答しません」


 「何だと?………まさか! おい、付近の誰かを見に行かせろ!」


 しばらくの後、その確認の報告はやはり最悪のものであった。


 「悪い予感は当たりました。北の一部がすでに破られ、そこの警備員は全員喰われた模様です。おそらくは中に侵入もされているでしょう」


 「隠密侵入だと!? バカな! 獣ごときが!」


 「やはり『猿の(タイプ)には人間に近い知能がある』という話は本当なのでしょうか?」


 「今それの詮索に甲斐はない。北側付近館内の映像は!? 監視カメラに何か映っていないのか?」


 「ありません。どこの映像にも獣の姿は皆無です」


 監視カメラは館内のみにしかない。となると、まだ館内には侵入されていないということか。


 「中の警備員に付近を徹底的に捜索させろ! 死人が出た以上、確実にどこかにいるはずだ。場所を特定するんだ!」


 さらに数分後―――――


 「発見しました! 大変です! 本舎北の外壁に数体のオラウータン(タイプ)及びゴリラ(タイプ)がぶら下がり、中への侵入を試みているもようです!」


 「なんだとッ!? 落とせないのか!?」


 「無理です! 奴らは壁を自在に這い回ります。地面のない場所では、人間に万一の勝機もありません!」


 「くっ! 防衛壁にあてている人員は動かせん………ッ! だが、このままでは直接、中の一般区がやられてしまう!」


 「まずいですね。当初の想定では、中に入られたら終わり。万一の侵入も必ず防ぐ絶対防衛が作戦の基本でしたのに」


 「だが諦めるわけにはいかん……………ッ! 中の警備員に対応させろ! 荒縄で侵入してくるオラウータン(タイプ)を拘束するんだ!」


 「無茶な! 普通のオラウータンでも人間の5倍の腕力があるんですよ!」


 「無茶でもやらせるしかない! できなければ中の人間はなぶり殺しだ!」




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