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異世界っぽいVR世界に閉じ込められたけどなんとかなりそうです。  作者: ねぎとろ


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99話「生きる意味」

 奇妙な現象ではあるが、奇跡的な覚醒によりゴブリンキングに勝利したのはいいが、最後に使用したスキルによって俺の中の血まで極限まで無くなり、立っていられなくなった俺はその場へと倒れてしまった。

 それでも、まだ意識は残っており、何よりもシロとメアが心配で仕方がなかった。致命傷を負っているのは分かるが、最後にシロが途切れ途切れ喋った時からは時間が経過している。一番想像したくない事だが、普通ならば死んでいるだろう。


「はぁ、はぁ……シロ、メア……」


 這いつくばりながらも気力だけで動いて、なんとかシロの元に辿り着いたが、やはり息をしている様子はなく、脈も止まっていた。ダンジョンコアの性質が未だ分からないが、人間と同じような体をしていることから、恐らく死んでいると言っていいだろう。


「―――え? ……あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 信じたくなかった。気付きたくなかった。だけど、知ってしまった。そして、俺は絶望した。自分の中では分かっていながらも、いざメアまでもが死んでいるということを理解し叫び、涙を流した。いや、それどころかもはや自分すら死んでもいいとさえ思えていた。

 最初の頃から途中までは視界端に存在していたスタミナゲージも見えなくなっており、HPゲージもなくなっている。どうして見えなくなってしまったのかは分からないが、この事が原因でスタミナゲージなどを忘れてしまい、スキルなどで倒れてしまっていたのだ。


「……今更こんな事考えても意味ねえか……」


 スタミナゲージもHPゲージも見えないが、恐らくは殆ど無いに等しいだろう。だからこそ、俺はそのまま地面へと寝転がり、シロとメアの手を最後に握りながら死のうと考えた。俺の生きる意味はもうない。守る人も守れず、俺の為に死なせてしまった。そして、俺はシロとメアの仇であるゴブリンキングを殺すことが出来たのだ。


「なんか、疲れちまったな」


 死を望み、俺は体を預けて目を瞑った。目覚める頃には死んでいるだろう。しかし、受け入れたその時に希望を与えるかのような少女の声が聞こえた。


「―――起きなさい! 生きているのならしっかりしなさい!」


 だが、今の俺にとって、無理やり俺の目を開けさせようとしてくる少女の声に苛ついていた。このまま死んでしまいたいというのに、どうしてこいつは起こしてくるのだろうか。大事な人が居なくなったこの世界で生きることになんの意味があるのか。苛ついていた俺はもう一度だけ目を開け、声の主である少女にキッパリと死にたい理由を伝える事にした。


 きっと、そうすれば俺を死なせてくれると信じて。


「……俺は死にたいんだ。仲間を失った俺に、仲間を守れなかった俺に生きる価値はない。だからこそ、もう俺のことは放っておいてくれないか?」


 死にかけているというのに、俺はどうしてか流暢に喋ることが出来た。いや、死にかけているという事自体俺が勝手に錯覚していただけだろう。

 少女が俺に回復の魔法を掛けたのか、俺の体からは痛みが不自然なまでに消えていた。


「だからなによ。あなたの事情なんて知らないわ。けれど、あなたがどうしても死にたいというのなら、私はあなたをこれ以上治療しない。それに、そこに転がっている二人も助けないわ」


 俺の言葉を聞いた少女は踵を返し、離れようとしていく。けれど、俺は歩き始めた少女を止めた。

 それは、少女の放った言葉にシロとメアを助けないという言葉があったからだ。その言葉を使うということはこの少女には死んでしまったシロとメアを助ける魔法かスキルがあるということを示しているのだろう。言葉が真実ならば、の話だが。


「あら、その必死に私を止めるあなたの顔の方が好きよ。そうよね。仲間を助けてもらえるのなら縋りたいわよね。けれど、もちろん無償で助けるわけにはいかない。分かるわよね?」


「あ、あぁ! 俺に出来る事ならなんでもする! だから頼む! シロとメアを!」


「分かったわ。ただし、助けてからその約束を反故にするのなら私はすぐにでもあなたの助けたい少女を殺すわ」


 少女が何者なのかは分からない。騎士にしては軽装な鎧だが、煌びやかな剣と美しい顔、そして、何よりもピンクに染まったその髪は、俺にとって救世主でしかなかった。

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