94話『柔らかい部位』
ゴブリンキングと対峙して分かるが、スキルを発動するのを待っているのを見る限り、こいつは戦闘を楽しんでいる。自分に絶対的な自信があるからこそ、俺の全力を完膚なきまでに叩きのめしたいのだろう。
しかし、ある意味これはチャンスとも言える。相手が俺に対して油断しているのなら、今が一番好機と言える。
「速攻で片をつける!」
恐らく、今までのように槍を構えて突っ込むだけではゴブリンキングに通用しない筈だ。ならば、相手の考えていない行動を取ればいいだけだ。
「……ふっ!」
走り出す前に、まずは全力で槍を投げる。もちろん、これがゴブリンキングに通用するとは考えにくい。だから、俺は槍を投げてから走り出した。自分の投げた槍の速度に追い付けると信じて走った。
「この程度の槍では傷一つ付かぬわ!」
「んなこと分かってるわ!!」
もう少し、もう少しで槍に手が届く。しかし、ゴブリンキングも既に飛んできている俺の槍を掴もうとしている。どちらが早く槍を掴み、次の行動に移せるか。
―――その勝者は、俺だった。
「その心臓、貫かせてもらうぞ!」
「ぐっ、貴様、初めからそれが狙いだったか!」
ゴブリンキングの手が槍に触れる一瞬前に俺は槍を掴み、ゴブリンキングの空いている心臓部分へと突き出した。槍に気を取られていたお陰で、ゴブリンキングの行動はワンテンポ遅れ、既に俺の槍を止める術はないはずだった。
「ぐぬぅぅぁぁあああ!! 効かぬ! 効かぬわ!!」
「くっ、なんて硬え体してやがる……」
槍を投げた勢いと、俺の突く勢いで槍の威力は相当上がっていた筈だが、肉を突き、心臓まで到達することはなかった。少し刺さったところで止まってしまったのだ。
更に、ゴブリンキングは槍を引き抜けないように力を込め、俺の全力を持ってしても槍は引き抜けなくなってしまった。
「貴様程度のゴミが我に少しでも傷を与えたことを称え、我も少し本気を出してやろうではないか!」
俺が槍を引き抜こうとしているのを笑いながら見た後に、ゴブリンキングは俺を掴もうとしてきた。だが、今の俺の速さにはゴブリンキングの対応が出来ないようで、捕まる前に俺は槍を諦めてゴブリンキングと距離を取る事に成功した。
「今俺が勝てるのは速さだけか……」
速さだけが勝てても、力がなければゴブリンキングには傷を与えることは出来ない。それに加え、速さなど時間が経てばゴブリンキングも対応してくるだろう。かと言って、俺の出来る技など限られている。一体どうすれば良いのだろう……
「いや、考えてる時間もねえか」
「先程までの威勢はどこにいったのだ!!」
俺が考えている時間を待つほどゴブリンキングも馬鹿ではなかった。既に目の前に迫っていたゴブリンキングは、剣を振り上げていた。
だが、未だ俺の方が速い。剣を振り下ろされる前に俺はゴブリンキングの側面に回り、槍を手元に戻してゴブリンキングの脇腹を突いた。槍自体、既に力を込めていなかったのか、割とすんなり手元に戻ってきてくれたが、脇腹を突いても先端が少し刺さるだけでやはり俺の攻撃など無意味に終わった。
「ゴブリンもゴブリンキングも弱点は人間とさほど変わらないはず……」
俺の槍の攻撃を受けたまま、ゴブリンキングは体を捻り、剣で俺を斬り裂こうとしてくる。当然、その攻撃は俺も読めていた。だからこそ、俺は敢えてその攻撃を屈むだけで躱し、ゴブリンキングの中でも最も柔らかいであろう部位へと攻撃を仕掛けた。
「貴様が何をしようが無駄だ!!」
「ちっ! これでもダメなのかよ!」
目を貫こうと、ゴブリンキングの剣を躱した後に飛び上がったが、ゴブリンキングも俺の攻撃を読んでいたのか、飛び上がった俺の事を剣を持っていない手で掴み、投げ飛ばした。
「ってぇ……けど、やっぱり弱点はそこか」
ゴブリンキングの体は硬い。俺の攻撃でも通用しないほどだ。それは分かっている。だが、目を防いできたことで弱点は分かった。あとは、そこを狙いながら攻撃するだけだ。




