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異世界っぽいVR世界に閉じ込められたけどなんとかなりそうです。  作者: ねぎとろ


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91話 『諸刃の剣』

 プレイヤー達はアーサー達を敵と認識したのか、各自武器を取り出して迎撃しようとしていた。

 そんな中、俺は一人でゴブリンキャスター達へと槍を持って突っ込む。これでこちらも戦力を分断し、相手は連携が取れない状況に陥っている。あとは、どれだけ戦闘を長引かせず、また、傷を負わないかが勝負の鍵だ。


 万が一にもここで致命傷を受ければゴブリンキングと戦うことは不可能になる。だからこそ、魔法という致命傷を与えかねない事を使ってくるゴブリンキャスターを仕留めるのが優先だ。


「『神速!』」


 以前は『神速』スキルを発動した状態で、『神速突き』を使ったからこそ倒れてしまった。もちろん、今回もその危険性がある為に同じようなことはしない。そもそも、今『神速』を使った段階で集中力を凄まじいほど使っているのだ。

 どういう原理なのかは分からないが、思考すらも加速し、どう動くべきなのか、相手が次にしそうな動きすらも読めている。といっても、俺が考えているとおりに動けるとも限らないし、急激な思考の加速で長くは持たないだろう。


「速攻で仕留めさせてもらう!」


『神速』を使った状態での俺の足の速さはおおよそ馬をも超える。制御するのは難しくてまだ出来ないが、真っ直ぐ走るくらいなら出来るはずだ。恐らく、今の俺が無理に敵の攻撃を避けようとすれば速すぎて建物に突っ込んでしまう。

 まぁ俺の読みが外れていなければ、この速度で走ればゴブリンキャスターが魔法を詠唱するまでの間には仕留めきれるから問題ないはずだ。だが、俺の事を狙っているゴブリンアサシンの気配もゴブリンキャスターの後ろから感じられる。ここで取れる最善の手は……


「うおぉぉぉっ!! オラァ! 」


 ゴブリンアサシンの奇襲を警戒し、ゴブリンキャスターの目の前で『神速』スキルを解除する事にした。当然、突然のスキル解除により、思考は加速をやめ、頭に負担が掛かり頭痛は増す。だが、痛みによって止まっている暇はない。『神速』スキルの勢いを殺さずにゴブリンキャスターの顔面を殴りつけた。


「グギャッ!?」


 本当ならここでゴブリンキャスターを殺すのが正解だが、ゴブリンキャスターの真後ろにはゴブリンアサシンが存在した。気配を隠しているのか、スキルを発動していない今の俺では気付くことが出来ないが、奇襲の為にその場から動いていないだろう。だからこそ、俺はゴブリンキャスターを殴りつけたのだ。


 勢いが増している状態で殴られたゴブリンキャスターは頭部が破裂したゴブリンキャスターはゴブリンアサシンを巻き込んで燃え盛っている建物へと吹き飛んでいった。驚いているゴブリンアサシンの声と、後に聞こえた断末魔で察するに、上手い具合に倒せたようだ。

 しかし、『神速』スキルによる勢いはなくなったものの、殴った俺にも多少なりともダメージはある。頭痛と伴って、思わず座り込んでしまいたくなるくらいだ。


「ほんと、このスキルやべぇな。次からは易々と使えねえ……」


 いや、このスキルの危険性なんて最初の一回で分かっていたはずだ。自分の学習能力の低さと、先を急ぎたい気持ちからスキルを使ってしまったことに少しだけ後悔してしまう。


「グギギッ!」

「グギャギャー!!」


「まぁ、待ってくれるわけねえよな」


 しかし、そんな後悔している中でもゴブリン達が待ってくれるわけがなかった。ゴブリンキャスターとゴブリンアサシンが死んだことにより戦意喪失していたゴブリン達も、俺が弱っていると分かったからこそまた襲いかかってきているのだ。


 けれど、幾ら頭痛がしていても今更只のゴブリン達には負けることはなく、槍を使って襲いかかってきたゴブリン達を簡単に仕留める事が出来た。だがまぁ、当然の如くアーサーとシロ、メア達の方が早く倒したらしく、俺が戦闘を終わらせるのを待っていた。


「お前らなぁ、終わったなら手伝ってくれよ」


「いや、丁度先程終わったのだ。加勢しようと思った矢先に倒してしまったのでな」


 シロとメアもアーサーの言葉に頷いている。どうやら本当に殆ど同じ時間で倒せたようだ。


「ますたー。さっきのスキル、もう使っちゃだめ!」


「えっと、もしかして見てたのか?」


「うん! ますたーことはいつもみてるの!」


「そうかそうか。心配してくれてありがとな。安心してくれ。メアに言われた通り、もうあのスキルは滅多な事じゃ使わないからな」


 メアとこんな約束をしても、きっと俺はまたすぐに使うことになってしまうだろう。ゴブリンキングとの戦いには恐らくこのスキルが必要だ。

 けれど、今はメアに心配させたくない。だからこそ、俺はお茶を濁すようにメアの頭を撫でたあと、帝国の中心へと向かい再度走り始めた。

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