80話 『尋問』
クロに感謝を告げた後、俺達は騎士団長達の手助けをしようかと思い、ユウガ達の場所へも向かった。
向かっている途中で気付いたが、既に戦場は終わりへと向かっていた。主にプレイヤーが負け、俺達の軍勢が優勢だが、ボスであるユウガの強さは分からない。もしかしたら、騎士団長すら上回る力を持っているかもしれない。
「シロ。もしも敵と戦闘になっても、基本は俺に任せてくれ」
「うん! シロも今はちょっと戦うの難しいかな……任せちゃうね!」
シロと約束し、俺達は誰かと戦闘になることもなく、騎士団長とユウガの戦っている場所へと辿り着いた。
しかし、そこで見た光景に俺は目を疑った。グウィンが倒れているのだ。どれほど深い傷を負ったのかは分からないが、見た目的には特に傷があるようには見えない。死んではいなさそうだが、ユウガの力には精神的にダメージを与えるなにかがあったのかもしれない。
「さすが、騎士団長って訳か」
グウィンは倒れているにも関わらず、騎士団長は無傷。むしろ、眩い光を体から放ち、俺とシロですら近付くことを躊躇するレベルだ。ユウガ達もその騎士団長にやられたのか、ユウガ一人を除いて全員が殺されていた。唯一残されているユウガも既に死にかけと言えるだろう。
「……むっ。二人か。済まない。私は少し本気を出してしまったようだ」
騎士団長が俺達に気付き、オーラを消してくれた。そのおかげで、俺達は騎士団長の元へと駆け寄る事が出来るようになった。
「それで、グウィンはどうして倒れてるんだ?」
「あぁ、それは私の力が原因だ」
「それって、さっきのピカピカしてた光のこと〜?」
「うむ。その通りだ。あれは私の力の一つでな。グウィンはあの状態の私に触れてしまってな。それで気絶してしまったのだ。私にもこの力がどういう原理なのかは分からないがな……」
「そうなのか。まぁ分からないなら仕方ねえな」
正直近付かなければ問題はないが、騎士団長のその力はもはやチートだ。触れるだけで気絶とか化け物すぎる。心底味方で良かったとは思うが、不用意に本気を出すのはやめてもらいたい気もしてしまう。触れなければ問題ないと本人は言っているが、俺とシロはそもそも近付くことすら難しかったのだから。
その点、おおよそだがユウガという男は強い。戦闘現場をまともに見てはいないが、アーサー騎士団長と少しは戦ったのだろう。さすがは敵対していたプレイヤーの中でもボスとされていただけの事はある。
「それで、ユウガからなんか情報は引き出せたのか?」
「いや、私もなにか引き出そうと考えたのだがな、やはりこういうのは難しい。そもそも私はあまり尋問などは得意ではないのだよ」
「そうか。んじゃ、俺とシロでやってみるよ。っと、その前に」
「マキトー! この人縛っとくね!」
「おう! 頼んだ!」
ユウガと話をするのはいいが、幾ら瀕死といえど、攻撃されたらたまったもんじゃない。だからこそ、俺達は先にユウガを縄で動けないように縛ることにした。
最悪、逃げ出そうとするのならいつでも殺せるようにという目的もある。もはや、クロという大事な仲間を奪われたこいつらに俺は慈悲を与えるつもりはないのだ。
「それじゃ、そうだな。どこから聞こうか」
「けっ! てめえらみてえなプレイヤーにこのユウガ様から話すことなんてねえよ!」
「へぇ。んじゃ、まずは指から貰ってくからな」
最初は強気で俺たちに喧嘩を売っていたユウガだが、既に慈悲を与えるつもりはない俺の容赦ない尋問に、段々と精神はやられていった。指を切り落とせば絶叫し、指がなくなれば腕を切り落とした。元々はプレイヤーであり、人間。だからこそ、幾ら強気でも痛みには逆らえないようだった。
「マキト〜。私にもやらせてー!」
「お、おう。あんまりいじめすぎるなよ?」
「分かってる! マキトじゃないからそんなにやんないよ!」
シロもシロとてクロをこいつらのお陰で失ったことに対して怒っている。もちろん、こんな尋問なんて子供のようなシロにやらせるのは間違っているが、シロの怒りを治めるのに止めることは出来ない。
「わ、分かったから、話すからもうやめてくれ……」
シロは俺のように指を切り落としたりなんていうことはしないが、鉄と変わっていた腕でユウガの顔を殴っていた。傍から見てもただの八つ当たりにしか見えないが、泣きながら殴るシロを見て止めようと思う人は居ない。少し残酷だが仕方がない。
けれど、泣きながらシロは殴っていることもあって、ユウガに与えるダメージは微々たるものだ。それでも、ユウガにとっては泣きながら殴られることも壊れた心ではキツいようで、ようやく弱気になって話してくれた。
「へぇ。それじゃ、お前達の一番上の奴は誰なんだよ」
「し、知らねえよ! 俺が知ってるのは世界支配が各地で起こっているって事くらいだ! 全部終わったあとに俺達も集められるんだよ!」
ユウガの言葉が正しいのならば、俺達はすぐさま行動しなければならない。既にこの場所での暴動はおおよそ治まっている。だが、次にどこに向かえば良いかなんて分からない。
「なぁクロ……って、いないんだったな」
「アーサー騎士団長さま! 失礼致します! 」
「むっ、なんだ?」
俺がいつもの様にクロへと訊ねようとしたその時だった。騎士団の団員である一人が騎士団長へと各地の情報を伝え始めた。




