8話 『新スキル』
俺の目の前に浮かぶ三つのスキル。
・光魔法
・雷魔法
・???魔法
どれもこれも魔法という事は、やはり俺には剣などの武器を扱う才能がないのだろう。ショックのような、それはそれで魔法が使えるから嬉しいような複雑な気持ちだ。
『ソロソロムカッタホウガイイ。モンスター、クル』
突然のゴブリンの声にビクッとし、その衝撃で俺は無意識に一番上のスキルを押していた。
そうなると俺が覚えたスキルは『光魔法』のはず。確かに、どれでも良いかなと思っていたが、少し???魔法というのも気になっていた。
「お、おう。んじゃそろそろ進むか」
まぁどの魔法でもとりあえず覚えれたという事が大事だ。
ゴブリンは別段悪いことはしてないし、というより、モンスターが近づいてきたという事を知らせてくれたわけだ。
とりあえずスキルを歩きながらでも確認する事が今の俺に出来ることだ。少しでもゴブリンの戦闘を援護するために光魔法の詠唱を覚えなきゃいけない。
「どうだ? モンスターは近くに居そうか?」
魔法を覚えるとなると、そちらにも集中しないといけない。そんな時にモンスターが接近してきたら危険性は相当なものになるだろう。
ゴブリンに返事はないが、構わず歩くということは今は大丈夫という事でいい筈だ。
それならば、俺は今の間に詠唱を覚えないとならない。毎度毎度詠唱を見てから魔法を使うのは余りにも時間は掛かるし、なによりも、戦闘中に集中力は分散してしまうのは避けたい。
「モンスターをもう一体はテイム出来れば楽なんだがなぁ……」
独り言を呟くが、その言葉にゴブリンが少しだけ反応したのは見逃さない。
多分だが、今のゴブリンは役目が多すぎる。一体で出来る仕事を大幅に超えているのだ。
いわば今の俺はブラック企業の社長みたいな感じだろう。
ブラック企業ともなれば、さすがにそれは直したい。
モンスター召喚を視野に入れつつ、とりあえず俺は新しく追加された光魔法を見る。
『光魔法』
第一位階:光の矢 光
第二位階:???の矢
覚えた光魔法を見る限り、やはり位階ごとに分かれていた。それでいて、次の位階もある程度までは分かるようだ。
たかがこれだけと思うかもしれないが、これさえ分かれば最初にしては充分だろう。
あとは、光の矢と光という魔法の詠唱を見るだけ。
今は初めてだから遅いが、今度からはこの作業をスムーズにしといた方が安全だろう。
『光の矢』詠唱:天翔る矢よ、我が敵となる者へと放たれよ。
『光』詠唱:我が道を阻む闇を晴らし、照らし出せ。
魔法の詠唱を調べ、歩きながら必死に覚える。
これも全てゴブリンが俺のことを守ってくれてるから出来ることだ。
だが、そんなゴブリンが突然立ち止まった。
俺もそれに続いて立ち止まるが、ゴブリンが止まるということは、これより先の道になにかの危険があるということだ。
『モンスター、クル』
ゴブリンの言葉と共に俺たちの前から足音が聞こえきた。
迫り来るモンスターは鎧のような音を響かせている。
「まぁ魔法を試せる良いチャンスだよな」
モンスターの接近を前向きに捉え、あとは周囲を警戒する。
罠があれば危険だし、他にもモンスターが来たら絶体絶命だ。
だが、幸いにもモンスターの音は迫り来る一体からしか聞こえず、罠もないようだ。
それに、今思えば無防備に歩いても罠に当たらなかったし、モンスターも意外とというか、かなり少ない。
もしかしたら、このダンジョンは凄く簡単な初心者向けダンジョンの可能性がある。
「って、今はダンジョンの事よりもモンスターに集中しねえとな」
ここが初心者向けダンジョンだろうがなんだろうが今はどうでもいい。
そんなことよりも詠唱に集中して、モンスターを倒すことが優先だ。罠も無いなら2対1でこちらが優勢。勝てる可能性は充分あるはずだ。
そして、モンスターの足音が止み、俺たちの前へとその姿を晒した。
壊れかけの鎧を装備し、ゴブリンの持つ棍棒より一回りでかい棍棒を右手に装備している。
極めつけはその見た目にある。ゴブリンに似ている外見を持っているが、体格や身長が軽く見ても倍はある。
「ゴブリンの進化形態か……」
このゲームはモンスターの進化がある。どうやって進化するのかは分からないが、ゴブリンの進化形態はホブゴブリン。
ただの推測だが、俺たちの前にいるモンスターはホブゴブリンだろう。
『モンスター、コロス』
ゴブリンが無謀にもホブゴブリンへと突撃して行く。
俺もそれに続いて、ホブゴブリンを標的と定め、魔法の詠唱を開始した。