78話 『共闘』
こっちは2週間に1度でごめんなさい……
「クロ!! いい加減にして!!!」
俺に大剣を突きつけ、殺そうとしたクロが、シロの叫びと共に俺の視界から消え、吹き飛んだ。
「一体何が……」
「マキト!! 大丈夫!?」
俺のピンチを救ってくれたシロに対して、視線向けた時、俺はシロの持っている武器、それとシロ自身に驚きを隠せなかった。
「シロ。お前、腕が……」
「あ、ははっ。ちょっと力使い過ぎたかなぁ……」
「大丈夫、なのか?」
シロの腕が膨れ上がり、小さい女の子の体格には全くもって見えないほどになっていた。
いや、というよりもアイアンゴーレムの腕に似ていると言った方が正しいのだろう。
それに、クロを吹き飛ばしたシロが手に持つ武器は、これまたアイアンゴーレムの持っていたゴーレムアクスだった。
「ダンジョンコアとしての私は大丈夫だよ」
「ダンジョン、コアとしての私……?」
「マキト。ごめんね。悠長に話してる余裕ないかも」
シロが視線を俺からクロへと向けて、ゴーレムアクスを構える。
未だ傷の痛みで動けそうになかったが、さすがにこれ以上シロに任せる訳にもいかないと思った俺は、体が痛むのを無視して立ち上がった。
「マキト!? 動いて大丈夫なの!?」
「あ、あぁ。ちょっとキツイかもな。けど、シロにクロを殺させる訳にはいかねえよ。俺が責任もってクロを殺す」
「そっか。それじゃ、私はアシストするね!」
シロの横に立ち、俺も槍を構える。ここまできたらやることは1つだ。クロを殺して、この暴徒達を鎮める。ただそれだけだ。
『マスター。ご決断……ありがとうございます……アァ……ガァァアアアアァァァ!!!』
クロの思考が完全に奪われたのか、まるで獣のようにクロが叫び声をあげた。周りに黒いモヤのようなオーラを纏い、筋肉は鎧の上からでも分かるくらい膨れ上がっている。
理性という鎖が外れたクロが最後に俺へと向けた言葉は、残されたクロ本来の理性を使ったのだろう。
「素晴らしい!! 素晴らしいぞ!! まさかここまで強大になってくれるとは! 下らないゴーレムという鉄くずに負けたキメラなんてまるで比じゃないくらいだ!!」
クロを俺から奪い取ったプレイヤーは狂ったように歓喜の言葉をあげている。
確かに、こいつの元々持っていたモンスターであるキメラはいつの間にかシロのゴーレムに負けて死んでいる。頭からの一刀両断だ。
今のシロがゴーレムアクスを使えているのは、キメラと対峙していたアイアンゴーレムを消したからだろう。
『ガァァァァ!!!』
「ま、待て!! 主人に逆らうのか!! ────うわぁぁぁぁ!!!」
今のクロは理性のないただの暴れ回るモンスターだ。幾ら俺から奪い取り、クロの主人になっていたとしても、不用心に近付けば肉塊になるのは分かりきっている事だろう。
「やっぱり俺達がケリをつけないとだよな」
「うん! シロも全力を尽くして頑張るね!!」
「それじゃ、行くぞ!!」
今のシロの攻撃は一撃一撃が強い代わりに、行動は遅い。だが、幸いな事にシロは防御についても性能が高い。だからこそ、主にシロを主軸として、俺はアシストをしつつクロを殺すのが効果的だろう。
「荒ぶる火の精霊よ、砲撃となり敵を焼却せよ。『火の玉!』シロ! 構えとけ!!」
「うん!!」
シロへと注意を向けさせない。クロの注意を俺に向けさせるには、如何に弱い攻撃でも最初に攻撃するのが最適だろう。
キングへと一度やった行動だが、今の理性のないクロになら効果的な筈だ。




