71話『騎士団長との会話』
副騎士団長と王の側近魔術師がヒュドラと激しい攻防を繰り広げている中、本当に騎士団長と俺達は雑談を交わしていた。
側近魔術師のグウィンが念の為にと俺たちに簡易的な結界を張ってくれたお陰で安全に戦いを見ると共に、これ以上の被害が出ないというのは助かっているが、2人に全てを任せていいのかと思えてしまう。
「あの2人ならあの程度のモンスターを倒せるわ。心配しなくても大丈夫よ」
「確かに、なんだかんだ言っても連携はとれてますね……」
「でしょ? だから私達は怪我人の救護と、言われた通り雑談していればいいのよ」
『マスター。幸いにも怪我人はあまり居ません。私とシロで救護致しますので、マスターはこの世界について騎士団長殿から聞いておいた方が良いと思います』
騎士団長と共に怪我人の救護へと向かおうとした時に、クロは俺に対して小声で言ってきた。
確かに、この世界については知りたいことも多いが、それによって救護等が遅れる可能性を考えたら、騎士団長に判断してもらった方が良いだろう。
「そうね。騎士団員からの報告を受ける限り、そこまでの被害はないみたいだし、貴方と話していても大丈夫そうよ。それで、私は貴方にこの世界の何を教えればいいの?」
クロに言われたことを大体そのまま伝えたところ、俺は騎士団長からこの世界について教えてもらうことが出来た。
ただ、『何を教えればいい?』と聞かれると、俺は何を聞けば良いのだろうと考えてしまう。
「そう、ですね。この世界の大まかな国や、後は魔王については聞いておきたいです」
「魔王についてね。分かったわ。って言っても私も魔王については殆ど知らないんだけどね。とりあえず、王都以外の大まかな国についてから説明しようか」
こうして、俺は騎士団長からこの世界の国や魔王の存在している魔界について教えてもらうことができた。
まず、王都から出て東に向かえば帝国という勇者が召喚された王都並に大きい国があり、西に向かえば海の都という国があるらしい。問題の魔王が存在するのは王都から北にずっと向かった先にある魔界らしく、今現在勇者が討伐に向かっているとか。
「アーサー騎士団長! ヒュドラの討伐が完了しました! 」
「非常に不服だが、こいつが居なければ少し危険だった事も認めよう」
「うんうん! お疲れ様! やっぱりあなた達はなんだかんだ息ぴったりよね!」
「「そんな事はない!」」
殆ど無傷で戻ってきた2人は相変わらず睨み合いながら、お互いを毛嫌いしていた。正直、俺から見ても2人は中々良いパートナーだと思うが、きっと2人も認めたくないだけなのだろう。
『マスター。こちらも救護など終わりました』
「シロも沢山の人を笑顔にしてきたよー!」
「おう! よく頑張ったな!」
シロの頭を撫でていると、騎士団長達が馬車へと戻っていくのを見え、俺達も急いで馬車へと戻る事にした。
「それでアーサー殿。今回の襲撃についてなのですが……」
「ええ。もちろん分かってるわ」
馬車の中で話しているのを聞く限り、どうやらヒュドラの襲撃はプレイヤー達によるものらしく、グウィンは魔力の流れから見て判断する事が出来たらしい。
だが、そもそもこんな場所にヒュドラが居ること自体がおかしいらしく、十中八九プレイヤー達の仕業という事は大体みんな分かっていた。
「……それと、そこのモンスターも危険と判断したらすぐに殺します」
隣に座っていたグウィンはクロがモンスターである事に気付いてるらしく、さりげなく俺に対して耳打ちをしてきた。クロがテイムモンスターという事を魔力の流れを見て理解したのだろう。勿論クロが敵対する事はないが、グウィンに対してはあまり近寄らせない方が良いだろう。
今回殆どが説明でした……すいません……




