68話『騎士団長』
シロとクロとの話し合いが始まり、分かっていた事だが、当然シロとクロは俺の判断に従うと言ってきた。個人的な意見を聞きたいが、俺の事を信頼してくれているからこそ戦場へと向かってくれるのだろう。
「分かった。俺達は参加するってことで大丈夫だな?」
「うん! シロは困ってる人は助けないとって思ってるし!」
『私も問題ありません。ただ、少々問題があるとすれば……』
クロの考えている問題事は今回戦う相手だった。まず集団であり一人一人が強敵である事。その他にも、最悪の場合人間を殺さないといけないという事だ。クロはモンスターだからこそ支障はないが、俺は少し抵抗があり、シロに至っては分からない。ダンジョンコアだった事もあり大丈夫かもしれないが、まだ子供っぽいということもあってあまりさせたくない事ではある。
「シロ。お前は、人を殺せるか?」
酷な質問だが、ここで動揺したり青ざめたりすれば連れていくことは出来なくなる。
「うん。大丈夫だよ? シロは人間じゃないから、あんまりそういうのは気にしないかな。良い人とかだったら躊躇しちゃうかもしれないけど、今回は敵って分かってるし大丈夫!」
「そうか。それなら問題ないな」
戦場に辿り着いた時、シロのことは少し見といた方がいいだろう。もしも敵側に良い人を演じたりする奴が居た場合、騙し討ちをされるかもしれない危険がある。
『マスター。そろそろギルドマスターの元へと向かいましょう』
「あぁ。そうだな。出来るだけ早く行った方が良いよな」
「待って! シロを置いてかないで!!」
のんきに飲み物を飲んでいたシロを置いて、俺達はキングの待つギルドマスターの部屋へと向かった。もちろん、シロはすぐに俺達へと追いついたのでしっかりと隣に立っている。
ギルドマスターの部屋の前に立ち、ノックを3回してからギルドマスターからの返事を待つ。
「入れ」
「『失礼します』」
シロは入る時の言葉などがまだ分からなかったのか、何も言わずに俺たちと共に入った。中にはたくさんの人が居たが、シロが子供だからか、これといって変な目では見られなかった。だが教えておけば良かったと後悔したのは内緒だ。
「上級冒険者キング殿に呼ばれ参りましたマキトと申します。よろしくお願いします」
『同じく、クロと申します』
「お、同じく? シロと申します?」
正直作法とかよく分からないが、適当に言っておいたが反応を見る限り問題はなさそうだ。銀色の鎧で統一されている人が5人程度、俺たちと模擬戦闘した上級冒険者3人と、他にも恐らく上級冒険者であろう人達が数人がこの部屋に居る。
その中で俺達だけが中級冒険者だからなのか、やはり視線を向けられている気がする。
「良く来たな。昨日は中級冒険者昇格試験に合格おめでとう。それで、キングに聞いたと思うが今回君たちを呼んだのは────」
「ねぇねぇ! 君たち下級冒険者なのにキング達と殆ど互角で戦ったんでしょ!? それに、そこのちっちゃい子は勝ったんだっけ? 私は王都の騎士団長なんだけど、その腕を見込んでなんだけど騎士団に入らない?」
ギルドマスターの言葉すらも遮り、騎士団長と言う女の人は俺たちに近付いてきた。まるでアニメの中から出てきたくらいの綺麗な顔立ちと青い瞳、髪も綺麗な金髪で近付かれただけで少しドキドキしてしまう。
「騎士団は実力主義だから強ければすぐに昇格出来るよ? どうする? 私としては有望な人は逃したくないなぁ」
「い、いや、その、俺達は別に……」
「そうだよ! シロのマキトに近すぎ!離れて!」
なんでシロが怒っているのか分からないが、お陰で騎士団長は俺から離れてくれた。
騎士団長と共に一緒に来たこれまた綺麗な顔立ちの青年が何故か俺の事を睨んできているのもよくわからない。
「そこの男。勧誘されたからといって良い気になるなよ。お前がプレイヤーだから勧誘されただけだからな」
「は、はぁ。まぁ騎士団には特に興味ないので良いですけど……」
「いえ、それは違うわ。私はあなたがプレイヤーだから誘ったんじゃないわ。人目見て誘いたいから誘ったのよ。副騎士団長。プレイヤーというのは確かに特別だけれども、そんな目の敵にしてはいけないわ」
やはりこの世界においてプレイヤーというのはあまり良い存在ではないのだろう。
プレイヤーというのは特殊な能力をきっと持っている。それでいて、姿形はこの世界の人と変わらないのだ。力を使って今回のクエストのように悪事を働いた者が居たかもしれない。だとすれば、騎士団が目の敵にするのも頷ける。
「で、ですが! プレイヤーなど根本的にゴ──」
「────それ以上言ったら怒るわよ。そもそも貴方もプレイヤーなのよ? 実際に悪い奴が居ても、今この場には居ない。この場には居ない同じプレイヤーをあまり悪く言うのは良くないわ。それに、そろそろギルドマスターもキレそうよ」
「はい。申し訳ありません……」
騎士団長がなんか偉そうに言ってるが、初めに話を遮って俺に話しかけてきたのはこいつだった筈だ。
「ごほん。まぁ良い。それでだ、クエストについてそろそろ話させてもらうぞ」
ギルドマスターの口が開き、俺達はクエストの詳しい内容と場所、そして人数を聞いてから、準備をする為にギルドを出た。




