67話 『俺以外のプレイヤー』
キングに声を掛けられ、俺は受付から離れてギルドの端へと移動した。ギルド側もキングが話しかけることを知っていたのか、端の席の周りには冒険者を近寄らせないようだ。
「で、話があるんだろ? なんだ?」
「あぁ。昨日お前らと戦ってみて分かったことなんだが、マキト、お前、プレイヤーだろ」
俺はキングの言葉を聞き、いつでも戦える体勢へと移行した。プレイヤーというのを知っていると共に、この世界でのプレイヤーの扱いはまだ分からない。だからこそ、悪用されない為にも、キングとはいえ警戒はしてしまう。
「まぁまて落ち着け。そんな殺気は出すな。俺もプレイヤーだ」
「……は?」
「まぁそうなるよな。俺も最初は確信を得なかったさ。幾らプレイヤーと言ってもゲームのように表示される訳でもないし、見た目はただの一般人だ。だからこそ、短期間での成長を見極め、プレイヤーという言葉をお前に使ったんだ」
「そういう事か。これで俺が訳が分からないというような顔をすれば、話は終わっていたという訳だ。だが、キング。お前が本当にプレイヤーという証拠はあるのか?」
クロやシロは話についてこれていないみたいで、俺達を交互に見ながら何かを考えている。シロに至っては何度か口を挟もうとしてきているが、その度にクロに止められているのが見えていた。
今シロが口を挟めば話は更にややこしくなる。多少酷いかもしれないが、今回はシロとクロを無視してキングと話をした方が良さそうだ。
「そうだな。とりあえず信じてもらう為に俺が日本に居たという話をしよう。俺は日本に居た時は24歳の会社員だった。まぁお前もだと思うが、無類のゲーム好きだった訳だ。それで新作ゲームの招待メールを開いたらあっという間にこの王都に来てたわけだ」
キングはどうやら最初からこの王都でのスタートだったらしい。日本という単語や、ゲームの招待など、俺と類似する点は幾つかある。これならばプレイヤーというのはきっと正しいのだろう。
「王都ではすぐに冒険者になったのか?」
「いや、そんなすぐには順応出来なかったさ。ただ、言葉は通じるし、読み書きも出来る。だが金はない。まぁまずはやっぱり王都から出てモンスターを倒しに行った。ただの好奇心だったんだけどな。幸いにも王都周辺は比較的に弱かったからなんとかなった訳だ」
「そうか。それで、キング以外のプレイヤーは他にもこの王都に居るのか?」
キングという名前はこの世界に来てこいつ自身が付けた名前だろう。そんな事は分かってるが、今更本名を聞く気はない。分かっていて呼びやすい名前で俺は呼ぶだけだ。
「いや、あまり把握はしていないが、王城の中の魔術師や、冒険者の中に数人居るというのは知っている。それでだ、そのプレイヤーについての話を今回はお前にしようと思っていた」
「プレイヤーについて? その魔術師や冒険者についてか?」
「いや、それとは別件でな。どうやら王都から東にある隠れた村にプレイヤーの集団が集まっているらしくてな、上級冒険者以上の者と、騎士団が対応する事になっている。相手がプレイヤーということもあって危険度は段違いに高い」
「それで俺たちをその戦闘に参加させようという話か」
「あぁ。お前達は上級冒険者には届かないものの、それに近い実力はある。勿論、王都に攻め込むつもりのプレイヤー達は強い。お前達が拒否するなら特に止めたりはしない。どうする?」
キングの表情は見えないが、今の状況は本当にやばいのだろう。王都が高レベルのプレイヤーの集団に攻め込まれれば確かに危険すぎる。俺のステータスは最近確認していないが、キングの話から推測すると、今の俺と同程度以上の実力を持ったプレイヤーが多い。シロやクロも危険な目にあうだろう。
「ちょっと待ってくれ。シロとクロと話し合わないといけない」
「分かってるさ。ある程度の時間は掛かってもいい。急ぎではあるが、急かすつもりはないさ。ギルド長の部屋に居るから決まったら来てくれ」
「あぁ。わかった」
キングが席を離れ、ギルド長の部屋に向かっていく。それを見届けてから、俺はシロとクロにどうしたいか聞いてみる事にした。




