66話 『休憩』
日常的なお話です〜
クロと共にシロと手を繋いで俺達はギルドから近い場所の宿屋を探した。そこまで値段は気にしないが、やはり少しは良いところに泊まりたかった為、外装が出来るだけ綺麗なところを俺達は見つけ出した。
『金色の風宿』外装もよく、お客さんの入りも良さそうな店へと俺達は入っていった。なんとか3人の部屋を探し、1泊分の金額を払った。街にいた頃の宿屋と比べたら倍以上の金額はするが、中級冒険者に上がった祝いとして考えれば充分だろう。
「ではこちらへどうぞ。お部屋へとご案内致します」
値段がそれなりに高いからなのか、どうやら日本の高級ホテルのようにお客さん1組1組を部屋へと案内してくれるようだ。荷物持ちも当然のように居てくれるが、さすがに武器を渡すのは何となく怖かったので断っておく事にした。
「早くお部屋行きたい!!」
「シロ。そんなに走ったらいつもみたいに転ぶぞ?」
『そうですね。急がなくてもお部屋には案内してくれますからご安心ください』
「ぶー。ちょっとワクワクしてただけだし!!」
「まぁそんな怒るなって」
案内係よりも早く部屋へと行こうとするシロを止め、俺達は大人しく付いていく。
どうやら部屋は3階らしく、もちろんエレベーターなどというものはない。階段をひたすら上がっていくしかなかった。
「なんていうか、エレベーター欲しいよな」
「えれべーたー? それなにー?」
「あー。そうだな。俺が元々居た世界にあった機械でな。箱ごと上下に移動してくれる感じの機械だよ」
どんな原理で動いてるかなど普通に使ったことしかない俺が詳しく知っているわけがない。説明としてはこんな簡単なもので充分だろう。
『ふむ。やはりマスターの居た世界に是非行ってみたいものですね』
「はははっ。もしこの世界から出れる事になって連れてけたら二人共連れてくよ。生きる事に関してはこの世界より簡単だけど、なんていうかルールとか働く事とかがこの世界に比べたら相当めんどくさいけどな」
日本はこのゲームの世界に比べれば遥かに生きる事だけはしやすいだろう。モンスターも居なく、死の危険は少ない。けれど、この世界で過ごしてみて分かるが、あらゆる事が日本と比べてゆるい。だからこそ、もしも帰れるとなった時に俺は本当に帰るかわからない。日本なんかよりこっちの世界のが良いんじゃないかって思ってしまうのだ。
「お部屋に着きました。それでは、なにかありましたらお呼びください。良い寛ぎを」
日本にいた頃の友人や家族のことを思い浮かべながらいざって時の事を考えていたらどうやら泊まる部屋に着いたようだった。
「凄いっ! ひろーい!!」
シロが部屋に入るなり走り回り、色々見て回っている。
「これはまた良い部屋だな」
『そうですね。広さといい眺めといい、今までと比べると遥かに良いと思います』
たまたま見つけた宿が良いものだと少しだけ心も嬉しくなる。とは言っても、戦闘をしたということもあり、体には疲れが溜まっていた。
「さて、さっさと風呂に入って飯食って寝るか!」
「お風呂!? シロも一緒に入る!!」
部屋のお風呂は少し見た感じ2人でも余裕なくらいの広さだ。シロと入ってもなんとかなるが、やはり少し抵抗がある。
「嫌そうな顔しないでよ! 今日はシロだけ勝ったんだし良いじゃん!」
『そうですよマスター。今日ばかりは聞いてあげましょう』
「クロもかよぉ。はぁ。仕方ねえな。さっさと行くぞ」
「うん!!」
『ゆっくりしてきてください。マスター』
お風呂では、疲れ切っていたのかわからないが、シロと共に寝てしまい、気付いたら1時間以上は経っていた。
急いで風呂を出てみると、例の如く、クロが料理を作っておいてくれた。きっと俺達が風呂に入ってる間に買い物に行き作ってくれたのだろう。
「いつもありがとな」
『いえ。私としても料理というのは楽しいですから、気にしないでください』
モンスターが料理にハマるなんて世紀の大発見レベルの事だと思うが、まぁあまり気にしないでおこう。それよりも今は、クロの作ってくれたオムライスに似た料理やらを食べる事のが優先だ。
ご飯を食べた後、少しゆっくりしてから俺達は寝る事にした。今回はベッドが3つあるというのに、何故かシロが俺と寝るのだけは意味が分からなかった。
次の日、俺達は中級冒険者としてのプレートを貰うのと、マジックバックのクエストの為にギルドへと立ち寄った。
受付へと寄り、受付嬢に話し掛けようとした瞬間、俺は肩を叩かれて振り向いた。
「よぉ。昨日ぶりだな。少し話があるんだが良いか?」
振り返った先には、昨日と同じ装備を纏ったキングが立っていた。




