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異世界っぽいVR世界に閉じ込められたけどなんとかなりそうです。  作者: ねぎとろ


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65話 『拒否』

 シロの怒涛の攻撃はクイーンの防御を段々と掻い潜り、地道にダメージを与えていった。致命傷には至っていないが、明らかにクイーンは押されているだろう。


「どうして、この私が下級冒険者に負ける筈が━━」


 私は慢心していた。目の前で私を怒涛の攻撃で襲ってきている小さい女の子に対してだ。所詮は下級冒険者であり、実力があろうとも精々中級冒険者程度だと考えていた。だからこその慢心だ。


 最初こそは手を抜いていた。余裕だろうと思い、簡単に終わらせようと思った。だが、女の子の実力は想定外だった。それこそ、女の子と剣で戦えば明らかに私の方が強い。だけれど、女の子の戦い方は剣を使う戦い方ではなかったのだ。

 ゴーレム召喚術。冒険者の中でも使える人は見た事はある。だがしかし、どの冒険者のゴーレムも脆く、女の子の召喚したような、私の剣にすら余裕で耐えうるゴーレムなど見たことがなかった。


 私には焦りが生まれてきていたのだろう。勝ち筋が段々と見えなくなっていたのだ。焦って、焦って、焦って、上級冒険者として焦りというのは最もしてはいけないのに、たかだか下級冒険者に負けそうになって焦ってしまった。きっと、女の子はそんな私を見抜いていたのだろう。いつしか私が必死に防御し、女の子が攻撃してきている状況へと変わっていった。このままいけば私はほぼ確実に負けてしまうだろう。


「絶対に、負けない」


「シロも絶対に勝つから!」


 女の子の攻撃は次第に激しくなってきている。今ここで手を打たないと数分後に倒れているのは私の筈だ。だからこそ、私は全力で女の子から距離を取った。


「逃げたって無駄なんだから!」


「風の精霊たるシルフよ、私に助力を与えたまえ『ウィンド・リベレーション!』」


 私は自分を強化する魔法を使った。女の子は魔法に少し驚いているのか、攻めるのをやめて私の出方を伺っている。チャンスは今しかなかった。


「この一撃で終わらせる!」


「えっ、はやっ!!」


 女の子にとっては想定外の速さだったのだろう。私のことを目で追うことすら叶っていなかった。ゴーレムを無視して、召喚士である女の子を狙う。もはや私は勝ちを確信していた。


 ━━━━しかし、私の剣が女の子に届くことはなかった。人間ではない、硬い何かを貫いた感覚。いや、分かっていた。わたしの攻撃が女の子に届かない事くらい。

 女の子の近くには槍を持ったゴーレムが居た。私の魔法に警戒してすぐにでも守れるようにしていたのだろう。ゴーレムの動きより早く女の子を仕留めれば勝てると思ったが、どうやら私の計算は間違えていたようだった。


「これで私の勝ちだね」


「まだ、まだ終わらない」


 ゴーレムから剣を引き抜き、女の子へと剣を投げる。これこそ正真正銘の最後の私の攻撃だ。


 女の子はそんな最後の攻撃を自身のレイピアでギリギリ防いだ。レイピアもはね飛ばされ、お互いに剣を持っていないという状況になった筈だった。


「私の勝ちだよ」

「そんな、そのレイピア、どうして……」


 女の子の手にはレイピアが握られており、私の首筋に切っ先を当てていた。どうやって、はね飛ばしたレイピアをすぐに手に取ることが出来たのかは分からないが、どんなに言い繕っても、私は下級冒険者である女の子に負けてしまった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━


 シロとクイーンの戦闘が終わり、2人はこちらへと歩いてきていた。クイーンの風を纏った一突きは確実に殺す勢いで放たれていたらしく、キングやジャックが止めようとしていた。


 しかし、その攻撃も俺に似たゴーレムが防ぎ、シロの勝利はもはや確定となった。最後にシロがはね飛ばしたレイピアも、ピッタリクロに似たゴーレムの所へと飛んでいた。狙ったのか、偶然なのかはわからないが、クロに似たゴーレムはすぐさまシロへとレイピアを投げ、クイーンの背後へと移動していたシロの手に収まった。


 クイーンは呆然としていて分からなかったのだろう。


 結果として、シロは上級冒険者としてのクイーンに勝利した。これは嬉しい誤算だ。少し悔しい気もするが、シロの本気は相当強いということもハッキリ分かったので良しとする。


「マキトー! シロ勝ったよー!」

「おう! よく頑張ったな!!」

「えへへ〜〜」


 シロの頭を撫でながら俺はクイーンの様子を見ていた。クイーンの声を聞く限り、どうやらシロを上級冒険者とし、敗北した自分を中級へと格下げしろと言っているようだ。


「落ち着けよクイーン。お前は確かに負けた。だがな、あのちっこい女の子はきっと俺でも負けていたかもしれないと思える相手だったんだ」


「そうですね。少々悔しいですが、殺してもいいというのなら勝てると思いますが、殺さないとなると、キングの言う通り、私でも厳しかったでしょう」


「ですが、私は負けたのです! 次の私の枠にはあの女の子が入るべきと考えます!」


「クイーン。お前の気持ちはわかった。でもそれは女の子が決める事だ」


 話し合いが終わったのか、キングは俺たちの元へと歩いてきた。


 「なぁ、えっと、シロだったか? 嬢ちゃんは上級冒険者になる気はあるのか?」


 キングはシロへと訊ねた。


 「ううん。シロは確かに勝ったけど、実戦だったら多分負けてたと思うの。それに、マキト達が中級冒険者だし、シロも中級冒険者が良い!」


 「そうか。まぁ嬢ちゃんがそう決めたなら俺たちからは何も言えねえな。よし分かった。これで模擬戦闘試験は終わりだ。明日には中級冒険者に変更するからまたギルドの受付に寄っていってくれ」


 キングの言葉に従い、俺達はその場から去ることにした。どうやらクイーンはシロの言葉を聞いてから更に強くなることを決意したようだ。


 「今日は疲れたな。さっさと宿屋に行って休むか! あ、それとシロ。ほんとによく頑張ったな。カッコよかったぞ」


『そうですね。シロ殿は私から見てもとてもカッコよかったです』

 「えへへ。そうかなぁ〜?」


 こうして俺たちの模擬戦闘試験は終わり、俺達は宿屋へと向かった。

 シロが頑張ったご褒美として俺とクロ、2人と手を繋ぎたがったのは今は必要のない話だろう。

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