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異世界っぽいVR世界に閉じ込められたけどなんとかなりそうです。  作者: ねぎとろ


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61話 『手加減』

大変お待たせいたしました。今年もよろしくお願いします!

 爆発した煙の中で足払いを仕掛けるという目論見は俺の考えていた通りに上手くいった。さすがに煙の中までは見えないらしい。


「────っ!」


 少しだけ驚愕したのか、兜から声が漏れていた。恐らく初級冒険者なんてもっと簡単に倒せると思ったのだろう。


「ここだっ!!」


 正直、こんな自爆をするような真似は元々考えてはいたが実行するつもりはなかった。一歩間違えれば自分も危ないし、最悪死にはしないが動けなくなるかもしれない。ここまでの煙を出すにはある程度の威力も必要だった。だからこその、賭けだったのだ。


 ───だが、その危険な賭けに俺は成功した。今まさに体勢を崩している上級冒険者であるキングへと俺の渾身の槍が突き刺さろうとしているのだから。


「俺の勝ちだァァァァァァ!!」


 確実に俺の持っていた槍はキングの首元へと突き刺さる。俺はそう確信していた。だからこその勝利の雄叫びだったのだ。

 けれど、そう上手くはいかなかった。相手が何をしたのかは分からない。けれど、俺の槍はキングには当たらずに地面へと当たった。


『カキンッ!』


 予想すらしていなかった音だけが鳴り響く中、キングが居たのは俺から10m程度離れた前方だった。


「さすがに今のは危なかったぞ!」


 もはやどうやって回避したのかなんて考える暇はなかった。既に声と共にキングはこちらへと向かって来ている。しかし、それはむしろ好都合だ。真っ直ぐ走ってくれるのならまだ対策はある。


「これならどうだっ!」


 俺の持っている槍、ゲイボルグは投げたら特性上自分の意思によって手元へと戻せる。この特性さえ使えば今の状況も打開出来るだろう。


「ふっ。最後の攻撃は武器を捨てるだけか。そんなもの当たる訳がないだろう」


 キングは持っていた剣を使い、ゲイボルグの事を少しだけ弾いた。それによってゲイボルグの軌道は変わってしまい、キングへと当たる事はなかった。


「さて、これで終わりだな」


「それはどうかな?」


 キングが迫ってきたその瞬間に、俺はゲイボルグを手元へと戻し、キングの首元へと当てた。勿論、更に追撃する為にいつでも火魔法を発動する準備は出来ている。

 だが、実際の戦いならば負けていたのは俺の方だろう。現に、俺の槍がキングの首元へと当たる前に俺の胸に突き刺さろうとしていたのはキングの剣だ。


「ったく。やるじゃねえか。まさかここまで出来るとは思ってなかったぜ。仕方ねえ。お前は中級冒険者への昇格を認めてやるよ」


「いや、待ってください。さっきのは明らかに手加減でしたよね。確実に俺の行動は遅かったですし、あなたの攻撃で確実に俺は負けていた。なのにどうして昇格なんですか?」


 自分でもどうしてこんな事を言っているのかは分からない。ただ純粋に喜べばいいのに、明らかに見てわかる手加減されたのが許せなかったのだろう。


「うっせーな。お前なんかに本気出すわけねえだろ。俺が少しは認めてやるって言ってんだからうるせえ事言ってねえで喜んどけや」


 そう言うとキングは他の上級冒険者達の元へと戻ってしまった。


「……少しは認められたのか」


 手加減されたのは少し気に食わないが、俺の戦闘行動が上級冒険者によって少しだけだとしても認められたのだ。中級冒険者になれたことも嬉しいが、それよりも上手く戦えた事が俺は嬉しかった。


「おい! 次があるんだ。さっさと戻れ」


「はい! すいません!」


 小走りでシロやクロの居る場所へと戻った俺は、2人にしっかりと昇格した事を報告した。2人は俺が昇格したことにまるで自分の事のように喜んでくれて、俺はそれがまた嬉しかった。


「次はお前だ。来い」


『マスター。行って参ります』


「おう!頑張って来いよ!」


「クロ! 頑張ってね!!」


 一緒に喜んで居られるのはほんの少しの間だけだった。真っ白のフルプレート鎧を着た上級冒険者がクロを指定した。俺が中級冒険者へと昇格したことによってクロはプレッシャーを感じているかもしれない。


 だが、例えそうだとしても今の俺には何も出来ず、ただクロの『中級冒険者昇格模擬戦闘試験』を観ることしか出来なかった。

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